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2人は仕事体験コーナーをくりぬいて作られた本部中枢へ到着。
至る所に近未来的なモニターが設置されている一方、天井には実物大の宇宙ステーションがぶら下がる、異様な本部だ。
各専門職体験のブースも、本部用に改造されている。
「ダイスケ!」
そこにはエリスとトクハンの捜査員たち。
「あれ?
エリス、ヤンは?
それにリオさんも」
「ああ、さっき帰ったよ。
リオさんとハリーさんは、FBIの仕事があるし、難波事件の調査も終わったから。
ヤンも、バチカンに報告しなきゃいけないからって」
「そうか」
「私だけじゃ不安?」
「そんなわけないだろ」
「それならよかった」
そこへあやめが割り入る。
「世間話は後。
捜査会議を始めるわ。
その前に、トクハンの捜査員――大介の先輩たちを紹介するわ。
全員、各都道府県警からヘッドハンティングされた、対妖怪犯罪の精鋭よ。
射撃、逮捕術、語学、様々な技能に対してだけじゃなく、霊力の高い警察官から選ばれたプロ」
彼らは前作で登場しているが、改めて紹介する。
宮地メイコ警部補、警視庁出身。
元ヤマネコで、公務員試験を突破した初めての妖怪。
あやめ不在のトクハンで陣頭指揮をとる。
深津刑事、静岡県警出身。
トクハンの中で一番若い刑事。柔道3段の腕前。
神間刑事、福岡県警出身。
実家が寺で、メンバー(人間)の中で霊感が一番強い。
寺崎刑事、秋田県警出身。
射撃の腕は、全国トップクラス。
高垣刑事、香川県警出身。
女性捜査官。絶対音感の持ち主。
横山刑事、愛知県警出身。
医師免許を持つ、警察でも異端な存在。3兄弟の末っ子。
峰野刑事、新潟県警出身。
7か国語に精通。エスぺランド語も読み書きできるほど。
前作では、本部にいたため出番なし。
岩崎刑事、兵庫県警出身。
トクハン一の最古参。長年の経験を武器に捜査を行う。
寺崎と名前を混合させられるのが、最近の悩み。
以上がトクハンの主力メンバーだ。
軽くあいさつを交わし、会議室へ。
そこにはプロジェクターとスクリーン、そして隼の姿が。
「親父!」
「ようこそ、大介。
早速、捜査会議を始めよう」
全員が着席し、照明が落とされた。
「昨日、大阪梅田で起きた殺人事案は知っているな?」
「国際ホテルで起きた、ビジネスマン殺しだよな」
と大介。
「そう」
すると峰野。
「仏具とミニカーが現場に置かれていたという報告は聞きましたが、それが今回私たちが動く理由なんですか?」
「それだけじゃない。
現場周辺のフロアと従業員出入り口から、強い妖気が検出されたんだ」
『!?』
「とすると、妖怪犯罪?」
「まあ、結論を早めるな深津。
・・・これは、犯行推定時刻前後の、現場のフロアに設置された防犯カメラの映像だ」
スクリーンに映された映像には、ホテル従業員の制服を着た大柄な人影が部屋へ近づいていた。
ドアが開き、中へ。
「怪しいとは思わなかったのか?」
「それは調べがついている。
どうやらガイシャは、ルームサービスを頼んでいたそうだ。
第一発見者も、食事を運んできたボーイ」
大介の質問に寺崎が答える。
2分後、人影が出てきた。
ゆっくりと非常口の方へ向かう。
「・・・成程」
「この映像を解析した結果、顔が識別できなかったそうだ。
平たく言えば、のっぺらぼうさ」
「確かに平たいわね」と高垣。
「そこで大阪府警は、この事件を我々トクハンに依頼してきたって訳だ。
置かれていた仏具も、見方によっちゃあオカルトだしな」
するとあやめが言う。
「パパ、それだけじゃないでしょ?
顔に書いてあるわよ」
「それは、そうなんだが・・・。
これについては後で話すことにする。
現在までに分かっている事を報告してくれ」
そう隼が言うと、まず神間が立ち上がった。
「被害者ですが、東京に本社を置く彩京物産の社員で、大阪には出張のために来たそうです」
「彩京物産と言えば、一流企業じゃないですか!」と大介。
「そうなんだが、ちょっと変なんです」
「確かに、一介のサラリーマンが出張で一流ホテルに宿泊するなんて。
大抵はビジネスホテルよね?」
「そう!そこなんだよ宮地。
おかしいと思って東京本社に確認したら、その部屋を予約してはいないと。
出張したのは本社じゃなく、支社の人間だったそうで」
「どこの支社だ?」
「沼津支社です。
静岡県内には浜松、焼津、静岡、沼津に支社があるそうですが。
ここの支社長子息が大阪観光のためにプライベートに予約していたのですが、体調を崩して行けなくなり、代わりに大阪に出張に来ていた被害者が宿泊したそうです」
「貧乏くじを引かされたというのか」
「会社権限での宿泊というと・・・会社の金で宿泊しようとしていたって事か?
青二才のボンボンめ!」
岩崎が続けて言う。
「で、そのボンボンは?」
「先程、静岡県警から連絡が入りました。
事件が起きた時間ですが、子息は友人とJR沼津駅近くのカラオケにいたことが証明されています。
ガイシャの周辺からも、会社からも怨恨などの線は出てきていませんね」
「そうか・・・ところで、出張の目的は何なんだ?」
「商談です。
伊豆に建設予定の新しいレジャー施設の関係とのことで」
「ああ、伊豆観光の新たな起爆剤とまで言われているアレね。
彩京物産も関わっていたのか」




