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 その頃

 PM4:28

 奈良県奈良市 都古みやこ大学


 奈良市北部、ニュータウン広がる高の原地区の丘陵地斜面にある大学。

 大介とあやめが通う、この大学の部活棟。文化研究サークル。

 部室に、彼らの友人が、うだうだと集まる。

 「おう、釘宮!

  大介は、帰ってきたか?」

 サークルの吉村雅希よしむらまさき先輩が、大介の友人である釘宮満くぎみやみつるに聞く。

 因みに、釘宮はテニスサークルの所属だが、自然と、ここにも顔を出す。

 「まだ、帰って来てないみたいですわ。あやめも」

 「そっか。

  まあ、イベント列車の襲撃が、相当な被害だったみたいだしな。

  それにしては、全く、報道されなかったよな?」

 釘宮は、鞄を、手元の机に置いて、話す。

 「多分、警察が、報道規制を敷いたんじゃないんすか?

  篠乃木里菜の負傷と、アニメの放送見合わせからして、犯人は、熱狂的なファンの仕業に、見えますから」

 「だとしてもよ、情報量が、圧倒的に少ないぜ。

  走行中の列車が襲われるなんて、前代未聞だ!」

 すると。

 「福井の通り魔事件のせいかもよ」

 と、弓道部の要夕陽かなめゆうひ先輩が、弓を抱えて、ひょっこりと現れた。

 「あっ。要先輩」

 「確かに、あの事件の犯人も、まだ捕まっていないな」

 「ええ。

  それと、さっきケータイのニュースに入った情報だけど、下田警察署に自動車が突っ込んだそうよ。

  運転手が、重傷だって」

 「特急襲撃の、続きですか!?」と釘宮

 「そこまでは、分からないわ」

 「マジ?

  いやー。日本も、怖い国になったもんだ」

 腕を組み、頷く吉村。

 「ところで、吉村君。

  学園祭の準備は、しているの?」

 「ああ、その話を、今日するつもりだ」

 さらに現れる人影。

 彼は、白衣を着て、モノクルを着用している。

 「残り1月と、14日ですよ」

 「こまけえよ。ピエール」と釘宮

 「失礼。

  大介君と、姉ケ崎さんの話を、しているみたいだったので」

 化学科の半井快斗なからいかいと。あだ名はピエール。

 モノクルが、ヨーロッパの貴族を連想させるとの事。

 この4人こそ、大学での、大介とあやめの、よき理解者である。

 奈良で起きた、ある事件をきっかけに、あやめの正体を知った。

 彼女は、他言無用を条件に、捜査に協力することで、彼らと合意したのだ。

 「考えたいが・・・大介と、あやめが、いないし」

 「あやめちゃんの声が、部室にないと、少し寂しいわね」

 その時、釘宮のスマホが鳴った。

 「おお!噂をすれば」

 大介からの電話。

 「やっと来たか!」

 「心配をかける奴だ」

 吉村、半井の言葉。

 釘宮は、通話ボタンを、タップする。

 「大介か。

  億千年会っていない気がするぜ。

  今どこだよ」

 ―――静岡県の伊豆。

  例の、列車襲撃事件の捜査さ。

 「あれか・・・一体どうなっているんだ?

  一般市民に入る情報は、ほぼ皆無に等しいぞ。

  ネットじゃあ、武装した赤い車が跳梁跋扈したり、警察署に発破かけられたりって。

  変なのじゃ、カルト教団が、死体を蘇らせて、犯罪をしているとか」

 ―――ネットの力は偉大なり、か。

  今は、俺の口からは、言えない。

  一応、警察が、箝口令を敷いているからな。

 「おいおい」

 ―――まあ、言えるとしたら、死体再生したカルト教団の話は、でたらめだ。

 「当たり前だろ!ガキでも分かるわ」

 ―――まっ、こうやって、情報を開示したわけだ。

  そこで、と言ったら変だが、お願いがあるんだ。

 釘宮は、ニッと笑い、言う。

 「やっと、御呼ばれが、かかりましたか。

  で、何をすればいいんだい?」

 ―――お前のスマホに、今から、とある写真を送る。

  新幹線の車窓の写真なんだが、これが一体、どこの写真なのかを調べてほしい。

  確か、大学には写真部と、トレインサークルがあったよな?

 「OK。

  すぐに、取り掛かろう。

  俺の知り合いに、丁度の人材がいる」

 ―――頼む。

 「お前も、無茶するなよ。

  それと、姉ケ崎さんにも、よろしく伝えてくれ」

 そう言って、通話を終えると、スマホが震えた。

 着信したメールには、ラセツからイズミへ送られた、あの写真が添付されていた。

 「この写真ね。

  でも、ピッタリの人材って?」

 「いるんですよ。要先輩。

  この2つを兼部する、適材が」



 「釘宮が、ヨロシクだってさ」

 メールを送信し、大介は、スマホを仕舞う。

 運転席のあやめは、ハンドルを握りながら

 「成程。彼らに、協力してもらうって訳。

  それにしても、カルトとは、良く言ったっものね」

 「俺たちも、最初は、そう考えていただろ?」

 「こりゃ失敬」

 「まあ今は、現実的に考える方が、先決だがね。

  ラセツのアリバイを崩すには、どうしても、あの写真の謎を、解明するしかない」

 「東海道新幹線から、富士山を撮影する方法。

  それも遠い、静岡県西部から」

 あやめは、首を横に振った。

 「ラセツの、拘留期限は?」

 「過去の、犯罪記録を使って、何とか伸ばしたわ。

  外部への、情報流出も、今のところ。

  明日、静岡県警本部に移送される手筈に、なっているわ。

  “れいせん”で、妖怪用の特別移送車を、本部から持ってきて」

 「ちょっと、オーバーじゃないか?」

 「情報流出は、あくまで、トクハンの観点から見られないだけ。

  もし、情報が流出していたら、攻撃の恐れがある。

  篠乃木里菜の二の舞は、何としても防がなきゃ」

 「そうだよな・・・」

 2人の視線は、前へ。

 RV車のケツが、微動だにせず、視界を塞ぐ。

 「いつになったら、動き出すんだ?」

 「ラジオによると、この3キロ先で故障車らしいけど・・・どうやら、道を塞いでいるパターンね。

  とにかく、気長に待ちましょう。

  釘宮君達の報告が先か、車が動くのが先か」

 そう、2人は、河津手前の峠道で、渋滞に、引っ掛かっていたのだった。

 そんな中、深津から、情報がもたらされた。

 下田署に、車で突っ込んだ、倉田の恩師は、病院に搬送されたが、頭部と肋骨、右脚を損傷する重傷。

 だが、驚くのは、ここからだ。

 自宅を捜査したところ、私物のパソコンから、何と、女子高生の盗撮写真が複数枚、見つかった。

 制服、体操服からして、踊子高校内部で撮影されたとみられる。

 つまり、先生が、教え子を盗撮していたのだ。

 さらに、メールフォルダからは、Kという名前で「一連の犯罪をバラされたくなかったら、指定する3人を下田署で殺せ」と、殺人を指示するメールが見つかった。

 指定する3人とは、文面からして、エリス、あやめ、大介。

 「Kは、多分倉田」

 「彼は、恐らく、先生の犯罪をネタに恐喝し、私たちを殺すように仕向けたのね。

  従わない場合、警察に通報する。そう、言って」

 「そして、車ごと、警察署に突っ込んできた。か」

 「先生のしたことは、絶対許されることではないわ。

  でも、自分の手を汚すことなく、私たちを殺そうとした倉田は、もっと許せない」

 「早急に、メールの発信元を、特定してもらおう。

  殺人教唆で、立件できるかもしれないぜ」

 「そうね」

 あやめは、動くことのない車の中から、目まぐるしく動く事件への指示を、無線を使って伝えるのだった。

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