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翌日
ホテルをチェックアウトした3人は、車に乗ると、伊豆長岡を西進、駿河湾側に出た。
内浦湾に面した場所にある水族館。
伊豆三津シーパラダイス。
1930年に開館。バンドウイルカの飼育やラッコの繁殖を、日本で初めて行うなど、歴史の深い水族館である。
また、数多くの種類のイルカが登場するイルカショーも有名で、それ以外にも、イルカ型遊覧船を用いた湾内遊覧クルーズも行っている。
館内に入ると、順路を素早く通り抜け、外へ。
本館から少し離れた場所にある、ペンギン・オットセイ館へ入る。
少し薄暗い館内は肌寒いが、目の前の大水槽では、ペンギンが悠々と泳いでいる。
そこに若い女性が1人、3人に向け、頭を下げた。
あやめと、ほぼ同い年くらいか。
葛城山山頂にある公園、通称スカイパークにあるミュージアムショップの店員、富樫レイは、話を始めた。
「あの日は言えなかったんですが、私、踊子高校の卒業生で、岡田さんと同じクラスだったんです」
「どうして、もっと早くに言ってくれなかったんです?」
そう、大介が詰め寄ると。
「言える訳、ないじゃないですか!
私は・・・彼らに・・・未来を奪われたんです!」
「それは、どういう・・・!!」
大介は、震える彼女に気付いた。
「・・・場所を変えましょうか?」
あやめの気遣いに、レイは、首を横に振った。
「ありがとうございます。
でも、今は、彼らの話した内容を、明らかにすることが先決ですよね」
「お願いします。
あなたの証言次第で、犯人の目的が、分かるかもしれないんです。
あの日、彼らは、葛城山山頂に集結したんですね?」
「そうです。
実は、これまでにも何回か、倉田は、あの山頂を利用して、重要な話し合いや、交渉を行っていたんです。
中には、怪しい外国人や、堅気には見えない人も」
「でも、山頂の空中公園なら、大多数の人が、観光するでしょう。
どうやって、そんな場所を?」
エリスが聞くと、レイはケータイを出して、画像を見せた。
「公園の一角に、さえずりの丘展望という場所があるんです。
このように、一角には“幸せの鐘”と呼ばれる鐘があるんですが」
「確か、恋人の聖地としても認定された」とあやめ
「そうです。
倉田に目を付けられた私は、2年前から、彼の言うとおりに動いてきました。
この展望台周辺を立ち入り禁止にし、彼は、そこで重要な商談をしていました」
「商談?
どんな話をしていたか、覚えていますか?」
エリスが言うと
「数か月前に、多分南米系の人だったと思います。
スーツを着た、色黒の男が、倉田と話していました。
全部英語で、部分的しか聞こえなかったんですけど。
EM-2とか・・・」
やはり、と3人は思った。
EM-2は、レッド・スパルタが所持していた自動小銃。
倉田は、非合法のルートから、武器を手に入れていたのだ
「それから、M4A3・・・と」
「M4A3が何なのか、言っていませんでした?」
「いえ・・・何も」
さらに銃を?
でも、エリスには聞いたことのない種類の名前だった。
焦る気持ちを置き、話を戻す。
国木田が殺された日の話へ。
「あの日は、突然G7の皆さんがやってきて、“いつものように”と言ってきました。
流石に、そんな短時間じゃ無理とは言いましたが、彼は“昔のことを、ここで話してもいいんだぞ”と脅してきました」
「昔のこと」
「踊子高校時代です。
あの頃は、傍若無人のG7のおかげで、学校は無法地帯そのものでした。
暴力、脅迫、飲酒、喫煙・・・強姦される女生徒もいました。
私も・・・」
レイの声が震え、一筋の涙が。
あやめが肩を抱く。
「その過去をバラすと、倉田に脅されたのね」
「はい・・・」
彼女は、涙をぬぐい、続ける。
「平日でしたし、人があまりいなかったのも幸いでした。
私は、強引に展望台を封鎖して、彼らを通しました。
ですが、今更、彼らが何を話し合うのか気になったんです。
成人式も過ぎたし、皆さん、とても忙しい立場の人間ですから」
「それで?」
「陰で、その話を盗み聞きしました。
そしたら・・・」




