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 今までの話で語られた、連続ゴーレム襲撃事件の背景と思しき事件。

 3年前の7月25日に東伊豆海岸で起きた“路線バス海中転落事故”。

 そして、そのバスに乗車し、死亡した、踊子高校3年生の小林リョウ。


 これらを、あやめの代わりに、順を追って、説明していこう。



 小林リョウ―――静岡県磐田市出身。

 自営業を営む両親のもとに生まれる。

 幼い頃、両親と死別。県内に住む親戚中を転々とする少年時代であったそう。つまりは、たらい回し。

 浜松、藤枝、静岡、焼津と、小学校卒業までに、4市7学校で、転校を繰り返した。

 中学卒業後、同居していた下田市にいた父方の祖父母死去を機に、自立。

 祖父母宅に住所を置き、同市内にある、踊子高校に入学。

 学力、運動能力、共に人並み。

 非行歴、問題行為、病歴、特に無し。

 親しい友人は、いなかった様。

 倉田ら“G6”との関連は不明だが、倉田悠生、篠乃木里菜と同じクラスであることが確認されているが、それ以上の情報は不明で、列車襲撃事件後に聞き込みを行った、深津、宮地の報告によると、校長及び学校教諭、卒業生も、口を閉ざしている。

 親族とは、連絡が取れない。

 小林の家は、事件後も残っていたそうだが、1年前、原因不明の火災で焼失している。

 付近住民の話によると、小林リョウ死亡後も、何者かが出入りしている気配が、いくらかあったとのこと。

 

 そんな彼が高校3年の時に遭遇し、犠牲となったのが、“路線バス海中転落事故”である。

 大雨が降る7月21日、午後8時頃、伊東発熱海行の金色こんじき交通バスが、東伊豆海岸道路を走行中、左カーブを曲がり損ね、ガードレールを突き破り、2m下の海に転落。

 岩場に激突し、炎上。

 運転手、乗客合わせて8人全員が死亡。

 内訳、即死7名、重体1名。

 実は、事故直後、小林リョウは生きており、緊急搬送されていたのだ。

 翌日深夜、彼は死亡した。

 原因は、彼の人工呼吸器が、何らかの理由で外れたことによる、人為的ミスとのこと。

 事故調査は伊東署が担当したが、当事者の全員死亡と、当日の雨天が重なり、捜査は難航。

 無論、目撃者はゼロ。

 結局、運転手のハンドル操作ミスと判断され、バス運転手を被疑者死亡のまま書類送検、事故は処理された。

 “熱海大火災”から程無く、同じ伊豆で起きた死亡事故は、伊豆半島の観光業だけでなく、全国の観光業の安全性が根底から揺らぎ、ある種の小規模なパニックを引き起こした。

 当時の京都府知事が事故を受けて、京都市内の全宿泊施設と公共交通機関に、徹底した安全調査を指示した程である。

 しかし、神間の報告によると、調査に要した時間が、たった3日であったことなどから、適切に処理されていなかった疑いがある上、小林リョウの死亡にも、何らかの意図が働いたとも見える。

 何故、下田市に住んでいた小林が、このような時間に、熱海へ向かうバスに乗っていたのかすら、不明のまま。

 また、この事故は、地元の一部警察官から“ダイアナ”と呼ばれており、今日、証拠物件隠匿の疑いで、県警本部に送られた伊豆長岡署の捜査員2名も、そう供述しているという。

 何故“ダイアナ”なのかは、不明。

 現在、県警とは別ルートで、トクハン本部が、2つの事故の再調査に取り掛かった。

 

 しかし、このバス転落事故は、倉田悠生が現在社長をしている湯煙国際観光も、少し絡んでいた。

 事故を起こしたバス路線は、湯煙国際観光と金色交通との、共同運行の形を取っていたのである。

 また、遺族への賠償金の支払いを、元々、伊豆でも小勢力だった金色交通に変わって行い、会社を湯煙国際交通の子会社にして、事実上、会社を潰した。

 死亡した乗客には、かつて倉田悠生が婦女暴行を働いた被害者女性が乗っていたとの、不確定な情報もある。

 事件解決と、伊豆観光業へのダメージ軽減のために、徹底的な圧力をかけたとも言われているが、当時トップにいた事故関係者は、自殺あるいは蒸発して行方不明。

 全てがうやむやの中、幕を閉じたのだった。


 この事故の直後、倉田悠生の父が、過労と心労による持病の悪化で病床に倒れ、兄が会社経営を受け継いだ。

 事故から1年後には、帝都大学経済学部に主席で入学した彼が、会社経営に口を出し始め、兄を会社内に新設した海外経営戦略室へ異動させ、社長の座を得て、現在に至ると、こういう訳なのである。

 現に、倉田悠生の長男は、サイパンへ出張中である。


 以上が、現在判明している全てとなる。

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