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講義終了のチャイムが、学生を空腹から来る気だるさから解放する。
「・・・ということだ。
来週は、次の”囚人のジレンマ”から説明するから、休まないように」
ここは、奈良市北部の都古大学。
亜門大介は社会心理学概要の講義を終え、教室を出た。
教室棟から広場を横切り、学生食堂へ。
お世辞に美味いとは言えないが、不味くもない。
親子丼を注文し、混雑する席取り戦に辛くも勝利。
箸を取り、昼下に手を付けようとした。
「大介」
聞き慣れた声。
姉ヶ崎あやめが、彼の向かい側に座った。
手には、きつねうどんののったトレイ。
「良かった、空いてて」
「あれ?
お前、いつもの友達と食べないのか?」
「まあ、今日はね
大介と食べたい気分なの」
あやめが、油揚げにかぶり付いた時、大介は聞いた。
「事件か?」
そう言って、鶏肉を口に運ぶ。
「察し良いわね」
「お前が、友達を置いて、俺の前にくる理由なんて、そんくらいだろ?」
「まあ!
こんな大和撫子を前にして」
「自分で言うなよ。
否定もしないが。
で、どうする?」
「午後の予定は、全てキャンセル。
私とトクハン本部に来て」
そう聞くと、高揚し
「遂にお呼びがかかったか!
で、どこなんだ?」
「その目で確かめなさい。
兎に角、お昼御飯が終わったら、私の車で本部まで案内するわ」
「ねぇ、少しくらいヒント」
「ダーメ!」
そう言われると気になるのが、人間の性。
大介は一気に親子丼をかきこんだ。
「さあ行こう!
事件が待ってるよ」
「変な所でヤル気出すわね」
と呆れる彼女だった。