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 エリスがカフェから、長方形状のケースを取り出すと、大介と共に、先頭車ドアへ。

 非常用ドアコックを扱い、ドアを手動で開けた。

 まず、CZ75を構えた大介が降りて、周囲を確認する。

 「いいよ」

 次いで、エリスが、大介の手を借りて降車。

 列車の先頭へ歩く。

 土砂は、線路の半分を封鎖している。

 幸いにも、プラットホームは無人。

 土砂の中には、何かキラキラしたものが、一緒に埋まっていた。

 大介は、土手の上のダンプカーに呼びかけた。

 荷台を下ろしたまま、沈黙を守っている。

 「警察です!手を上に上げて、車から降りてきなさい!」

 応答なし。

 「もう、逃げたのか?」

 すると、エリスの目が鋭くなった。

 「ものすごい妖気!

  ・・・危ない!」

 叫んだ時だった。

 土砂が盛り上がり、人型に形成されながら、起き上がった。

 額には羊の皮。

 「ゴーレム!」

 「おいでなすった!」

 その泥人形の手には、キラキラしたもの。

 拳銃が、握られていた。

 「マジかよ」

 「ざっと数えて、8体・・・いえ、10体。

  ・・・大介、援護を」

 「OK!」

 エリスは、無線で、あやめに伝えた。

 「あやめ、武装したゴーレムよ。

  先頭車の人間を、後方へ」

 ―――分かった。

 交信を終えると、ケースから手を離した。

 枕木に落下したショックで、ケースが開き、中から、何かが飛び出す。

 ショットガン―レミントン M31

 その手に再び収まるや、フォアエンドを引き、ゴーレムに向け、構える。

 「さあ、いらっしゃい!」

 ゴーレムが一斉に、拳銃を構えたが、それより早く、エリスは引き金を引いた。

 泥人形の頭が崩れ、再び、土砂へ戻る。

 間髪入れず、フォアエンドを引き、引き金に指をかける。

 2体、3体、4体。

 ものすごい速さで、ゴーレムが崩れ去る。

 彼女に―列車に、傷1つ付ける隙も与えない。

 だが。

 「エリス!」

 倒れたゴーレムが、再生する。

 「再生能力!?

  そんな、バカな!」

 「あの羊の皮を、破壊しないといけないって事か!」

 「ダイスケ、行ける?」

 「何とか、やってはみるさ」

 大介は、CZ75を構えた。

 エリスのレミントンが、火を噴き、頭部が吹き飛ぶ。

 空に舞い上がった羊の皮。

 彼の銃は、正確にそれを捉え、弾丸が貫く。

 不気味な青い炎に包まれ、消滅する呪文の皮。

 崩れ去った土砂は、再び起き上がることはなかった。

 「よし、そのまま」

 「エリス!

  奴らを、線路から離せないか。

  土砂が堆積したら、列車をすぐには、脱出させられない」

 エリスのショットガンが、ダイスケの銃が、共同作業で、泥人形を倒していく。

 刹那、背後に感じた妖気。

 「ダイスケっ!」

 右脚を軸に、華麗にターン。

 列車屋根に照準を向けた。

 そこにいたゴーレムが、崩れ去る。

 この個体は、額に文字が刻まれた、ノーマルタイプ。

 「アブねえ」

 「これじゃあ、キリがないわ!」

 嘆いていた時だった。

 「大介!エリス!」

 叫び声と、銃声。

 トラックが放置された道路にZ33の姿。

 寺崎と深津が、そこにいた。

 彼らの手にも、ショットガンが。

 「大丈夫か」

 「ええ」

 「ここは俺たちで食い止める。

  早く、列車を、ここから遠ざけろ」

 「了解」

 遠くからは、サイレンが聞こえてくる。

 銃撃しながら、2人は後退し、列車の運転席へ。

 「指令室から、指示が出ました」

 運転手が話す。

 「このまま、伊豆熱川駅まで運行して、そこで、運転を取りやめます。

  駅周辺は封鎖済みで、駅入口に、臨時バスを用意しているとのことです」

 「山辺の駅か・・・なんとか、下田までとは、いきませんか?」

 大介の質問に、運転手は、首を振った。

 「式典の中止が、同時に決まったので、駅周辺は、大変混乱しています。

  それに、片瀬自由駅の線路を、赤い車が塞いでいるとの情報も」

 「“レッドスパルタ”か」

 そこへ、あやめが入ってきた。

 「次の伊豆高原駅では、何者かが、車両基地までのポイントを破壊したそうよ」

 「じゃあ、熱川駅に停車って」 

 「止むを得ない判断なの。

  事態を、CAUTION3から、CAUTION4に移行。

  臨戦態勢を」

 「了解」

 列車が、息を吹き返した。

 ミュージックホーンを鳴らし、モーターを響かせ、動き出した。

 ゴーレムを弾き飛ばして、加速した列車は、次々と駅を飛ばす。

 停車予定の伊豆高原駅を通過した時、かすかに、赤いクライスラー 300を、エリスは目視していた。

 (厄介なのが、増えたわね)

 レミントンを握る、彼女の手に力が入る。

 トンネルに入り、出口前で、急激な減速を始めた。

 「よし、着いたぞ!」

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