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 AM8:31

 東京駅地下駐車場 西側


 地上で大介とあやめが会話していた頃、エリスは駐車場をさ迷っていた。

 というのも、同じ白のZ33が4台も駐車されていたためだ。

 エレベーターから離れた駐車スペースに、あやめの車を見つけた。

 「京都・・・これね」

 ドアロックを解除し、助手席から財布を取り上げる。

 「流石、治安が良いわね」

 再びドアをロックし、振り返った時だった。

 「え?」

 視線の先に、見たことがあるような車がいた。

 近づくと、それは核心に変わった。

 ワインレッドの光岡 ラ・セード。

 バンパーには傷が。

 「間違いない・・・昨日、私たちを襲った車・・・」

 ナンバーは。

 「フジ・・・サン?」

 静岡県で導入されたご当地ナンバープレート、富士山ナンバー。

 ということは、車の所有者は、静岡県出身。

 (待って・・・まさか、あの踊子高校のメンバーに、犯人が?)

 一瞬狼狽するも、冷静になる。

 (いえ、静岡県というだけで、高校出身者を疑うのは・・・)

 だが、不変の疑い。

 犯人が、この東京駅に来ている。

 そして、襲撃を受けたのは、伊豆長岡の事件の直後。

 (こうしちゃいられない!

  すぐに、アヤメに知らせなきゃ!)

 エリスが地上に戻らんと、体を、そちらに向けた時だった。

 そこには、1人の青年がいた。

 (っ!・・・倉田悠生!?)

 ハンサムな彼は、微笑を浮かべながら、話しかけてきた。

 「おはよう。君は確か、エリス・・・だったね。

  どうしたんだい?こんなところで」

 「いえ・・・別に・・・。

  あなたこそ、どうして、ここに?」

 「そりゃあ、今日のイベントの発起人は、僕だからね。

  この駅に来るのは当然だよ」

 「・・・これ、あなたの車?」

 「さあね」

 彼は、とぼけているのか?

 エリスは、さらに突っ込んだ事を聞いた。

 「ねえ、昨日の夕方、どこにいたの?」

 「ん?気になるのかい?」

 「ええ。とっても・・・」

 微笑したまま、彼は答えなかった。

 (彼、一体・・・)

 そこから生まれてくるのは、ある種の恐怖感。

 分からない。

 何を、考えているの?

 「君の想像に任せるよ。

  そういう君は、何をしてたんだい?」

 「さあね」

 とぼけるエリスだったが。

 「当てて見せよう。

  東名沼津インターの近くで、車を暴走させていた。

  あの、白のZ33で」

 緊張が走る。

 何故、知っているの?

 やっぱり、あのラ・セードの持ち主って。

 「あの車って証拠は?」

 「やっぱり、地元ナンバーじゃない車って、目立つんだよね。

  京都ナンバー。

  交差点をドリフトしながら曲がったら、特に」

 当たってる。

 エリスは、逃げるチャンスを伺っていた。

 しかし、気付いた時には、彼女の背中には柱があった。

 その上、周囲から死角となる場所。

 動き回りながら話していた際、知らず知らずの内に、倉田に誘導されていたのだ。

 エリスは一か八かの賭けに出だ。

 「そうよ。

  昨日、沼津インターの近くで走ったわ。

  でも、それは、ある車から逃れるためだったの」

 「車?そんなの、見なかったなぁ」

 「えっ!?そんな・・・」

 「警察官が、嘘をついちゃいけないな」

 どんどん、倉田がエリスに近づく。

 体と無言の圧力。

 エリスは、恐怖が沸き起こり始めるなか、キッとした態度で、彼に言う。

 「あなたの目的は何ですか!」

 ドンッ!

 彼女の肩の上の方に、右手をついて、口を耳に近づけて、ささやく。

 「まだ、抱いた事がないんだよ。

  ヨーロピアンは」

 頬に差し出される左手。

 皮膚から拒絶の反応が脳を中継して、脊椎へ伝う。

 「いやっ!」

 エリスは咄嗟に手を振り払うも、それより早く、倉田の左手がエリスの乳房をとらえ、強引に彼女の体を柱に打ちつけた。

 「――――っ!」

 痛がるエリス。

 その時だった。

 「ん?何だ、これは?」 

 倉田の視点は、エリスの頭頂にあった。

 無意識だったが、気付いた時には、遅かった。

 ヒクヒクと動く、獣の耳。

 (しまった!)

 正体が、外部の人間にバレた!

 

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