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 翌日 AM7:24

 東京都港区 品川

 ステーションホテル シナガワ 

 

 夜が明けた。

 大介はホテルのロビーであやめとエリスを迎える。

 昼の状態、烏天狗・あやめ、獣人クロルーク・エリスとなっていた。

 「おはよう、大介」

 「おはようございます」

 昨夜の性格が完全に逆転している。

 無論、彼は慣れているが。

 「おはよう。

  こうしていると思い出すな。

  ローマで初めて会ったときの事」

 「私の姿を初めて見たときは、凄く驚いていましたからね」

 「特に、あの耳な。

  見えないようにしているのか?」

 「ええ、髪を少し盛ってね。

  そこまで大きな耳じゃないからね」

 その時、大介は何か思い浮かんだようだ。

 「なあ、あやめは情報提供者とかいないのか?」

 「一応、いるけど・・・そうね!そこから、彼らの過去が分かるかもしれなわね」

 そう言うと、あやめはケータイを出した。

 「もしもし、朝からゴメンね。元気?・・・そう、お願い・・・」

 あやめは情報提供者に、小林リョウと、踊子高校の過去について調査するように頼んだ。

 「じゃ、ヨロシク・・・はーい」

 通話を終え、完了の旨を伝えると、3人はホテルをチェックアウトして、外へ出た。

 

 品川にあるJR東日本本社では、今まさにトクハンがイベント警護の最終確認をしている最中だった。

 神間が、デスクに広げた図面を使って説明する。

 「いいな。

  イベントに使われる特急は10両編成。

  声優の4人はココ、1号車1階のサロンにいる」

 「でも、ここからどうやってイベントを?」

 「ここから、カメラを使ってライブ中継をするんだ。

  あらかじめ各車両に2台ずつ、大型モニターが設置されている。

  そのモニターの最終設置は、北区にある尾久おく車両センターで行われる。

  今、そのために、列車が東北本線を南下中だ」

 スーパービュー踊り子が東北本線を走行。

 鉄道マニアには、たまらない光景だろう。

 するとエリス。

 「わざわざ、モニターを運び入れるとは。

  どうして、駅とかホールでしようとはしなかったんでしょう?」

 答えたのは高垣刑事。

 「このイベントの発起人は、湯煙国際観光よ。

  今まで類を見ないイベントを、とJRに企画したのが、コレ」

 「あの大学生社長か」

 「当初は、先頭車に声優たちが並んでトークする形態にする予定だったみたいだけど、列車が緊急停止した場合に、声優たちの安全が確保できないと、今の形になったらしいわ。

  最も、JRは、このイベント自体が無謀だと思っていたみたいだけどね」

 「やったのね。

  それも、友人まで呼んで」とあやめ。

 「倉田曰く、「社員も、旧友も縁のある人は皆、友達。末永く大切に」がモットー。

  それに従って、計画したまで」

 「友達ね・・・沿線の警備状況は?」

 続いて宮地警部。

 「広域妖気探知装置を搭載したヘリ“れいせん”を、列車より先行させて東海道線上を飛行させるわ。

  妖怪は、自分の姿を現そうとしたり、術を使おうとする際に妖気を放つわ。

  それを、半径5kmにわたってキャッチできる装置よ」

 「もし、妖気をキャッチしたら、減速させると」

 「その通りよ、大介君。

  他にも、沿線で警察官をパトロールさせるから、何かあっても、列車に被害が起きる前に急行できるわ」

 「でも、怪しまれません?」

 「鉄道写真を撮るアマチュアカメラマン、所謂“撮り鉄”の中には、最近マナーの悪い人が出てきているって、問題になってるでしょ?

  その牽制って名目にすれば」

 「なる。

  で、篠乃木里菜は?」

 「見張っている所轄署の情報だと、目立った事態はなく、今は東京駅で打ち合わせ中。

  ところで、犯人は魔術師で、ゴーレムを使うって情報は」

 あやめが昨日、鮎沢PAで採取した瓶入りの泥を、デスクに出す。

 「これが、ゴーレムの疑いのある泥よ。

  昨日に比べて、妖気が減っているけど。

  姉ケ崎神社謹製の封印ボトルが、少々強すぎたみたい」

 「もしかしたら、この泥人形で攻撃してくると?」と神間

 「可能性はあるわ。

  これと、同じ泥が、伊豆長岡の国木田選手殺害現場にあったわ。

  そっちは、県警に連絡して、駿河大学の地質学研究所に回してもらったわ」

 大介が心配そうに、あやめを見る。

 「もし、ゴーレムが攻撃してきた場合は、どうすればいいんだ?

  まさか、RPGみたいに、呪文を唱える・・・とかじゃないよね?」

 「え?知らないの?」とあやめ。

 大介は頷いた。

 「だったら、昨日の推理の“ゴーレムの術を解いて”の部分は、どこから来たのよ!」

 「当てずっぽう。

  ホンマに教えて」

 するとエリス

 「昨日説明したことは、覚えてる?」

 「ああ」

 「倒す方法は、いたって単純。

  額に書いてある“Emeth”の文字から“E”の文字を消すだけ。

  すると“meth”、つまり“彼は死せり”って言葉になるから、そのゴーレムは破壊されるわ」

 「なんだ、簡単じゃないか」

 「そうでもないわ。

  ゴーレムの武器は、その強靭な腕力と、人間には太刀打ち不可能な戦闘能力。

  なめてかかったら、被害者たちのようになるわよ」

 「じゃあ、俺は、どうすれば」

 「その銃で、“E”の文字をピンポイントに狙うか、接近戦で不意を衝いて、文字を消すか。

  とりあえず、本部に頼んで、聖弾をありったけ持ち込ませたから」

 「おおっ!太っ腹!」

 「兎に角、最終確認だ。

  あやめ、エリス、大介は1号車から4号車まで、俺と高垣、宮地は残り、6号車から10号車までを見張る。

  お互い、連絡は密に。

  最低でも、主要駅到着時には、連絡を」

 『了解』

 「よし、あやめ達3人は、東京駅へ移動して、篠乃木里菜らの警護を。

  宮地と高垣は、本庁と協力して、駅の警らにあたってくれ。

  俺は尾久車両センターに行って、列車の最終確認を行う」

 『了解』

 「よし、解散!」

 時間は既に8時を回っていた。

 3人は車を移動させたこともあり、宮地達より遅れて東京駅に到着した。

 東海道新幹線の始発駅であるなど、日本の鉄道の中心駅であり、首都の玄関口でもある東京駅。

 3人は駅の西口となる八重洲口に来ていた。

 新幹線駅の玄関口でもあるココは、ヒートアイランド現象緩和のための駅舎改良工事が行われていた。

 低い駅舎に変更することによって、風の通り道を確保し、海からの風を、皇居の緑地へ運ぼうという計画だそうで、その両脇には、新駅ビルとなるツインタワーが建っていた。

 この八重洲口には、東京駅地下駐車場の入口もあり、Z33はそこから、駅の地下へと入り、車を駐車した。

 首都高速を隔てて西側と東側に分けられ、地上からだけでなく、高速道路からも入ることができる。

 Z33が入ったのは西側。

 なかなか広い駐車場だ。

 Z33はあまり車の停まっていない場所を見つけ、そこに停めた。

 地上出入り口までは、少々遠いが。

 「8時27分・・・段々怖くなってきた」

 大介は時計を見ながら言う。

 「見えない敵からの攻撃。

  私たちも、正直怖いわ。

  犯行声明をちらつかせるテロリストより、何倍も」

 3人は地上へ向かうエレベーターに乗り込む。

 「そう言えば、昨日のラ・セード」とエリス。

 「ああ、まだ見つかってないそうよ。

  県警が、不審なトラックを何台かターゲットして追跡しているそうだけど」

 「交通量がハンパじゃないからね。すぐには無理だよ。

  無論、この近くにいてくれれば、探すのも早いんだけどね」

 「そんなバカな話がある訳ないでしょ」

 エリスに冷やかされる中、エレベーターが到着。

 「ひとまず、コンビニで何か買いましょ?

  朝から何も食べてないから、お腹すいちゃった」

 直後、エリスが大声を上げた。

 「あっ!いけない!

  財布を車の中に置いてきちゃった」

 「おいおい、何やってんだよ」

 「ゴメン、うっかり」

 そんなエリスへ、あやめが車のキーを渡す。

 「車の場所、覚えてるわね?」

 「大丈夫。

  先に行っててください」

 彼女は小走りに、エレベーターへと駆けていった。

 「うっかりさんだな、エリスも」

 「時々やるのよ。

  ドラキュリーナから戻った時の反動らしいけど」

 その時

 「あれ、昨日の刑事さん?」

 声をかけられ、振り返ると、渡部琉輔と岡田椋太郎の2人が。

 「お2人も、来られたんですか?」

 あやめが話しかけると、渡部が言う。

 「ちょっと、篠乃木さんと話したいことがあったからね。

  ・・・昨日の外国人の女の子の姿がありませんが」

 「彼女なら、駐車場です。

  財布を忘れたみたいで」と大介。

 「おっちょこちょいですね」

 岡田は笑いながら、そう言った。

 「そう言えば、倉田さんの姿が無いようですが」

 「彼は別行動です。

  ああ見えて社長でしょ?

  もう、先に来て、打ち合わせでもしてるんじゃないですかね?」と渡部。 

 時刻は8時半、確かに、そうかもしれない。

 渡部と岡田は、大介らと別れ、ツインタワーへと向かっていった。

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