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うごきはじめる

真白たちが穴に入る少し前――――


男は久しぶりに主から部屋に来るように呼び出された。会うのは久しぶりではないが、あの部屋に行ことがこの頃なかったのだ。


主が何を考え、行動しているかわからないが、自分は指示に従っていればいいだけのこと。


自分は主の「影」なのだから。


重厚な扉の前に立つと、ネクタイが少し歪んでいるのに気づき直し、扉をノックする。すると扉から入れとの許可が出たので、失礼しますと礼をして入った。


部屋は電気がついておらず、真っ暗だった。唯一の光源は大きな窓から入ってくる月明かりだけ。しかし男にとってはいつものことなので慣れていたので、すたすたと迷いなく歩いた。


暗闇で顔とかは見えないが窓のところに誰かが立って、窓の外を見ていた。その人物の前までくると男は方膝をついて、頭を垂れた。


「『同胞』が来るみたいだ」


膝をついている男を一切見ず、窓辺に立ったままつぶやいた。薄っすらとしか輪郭がしかわからないが声で若い男だというのはわかる。男は顔を上げた。


「『仲間』ではなく?」


「『仲間』ではないよ。『同胞』だ。」


その言葉で男は理解した。この主同様、向こうに飛ばされ、生き残った人間が帰ってきたのだ。


「お前にはこれから指示した所まで行って、保護してきてもらいたい」


「御意。『月の道影』に入ってもらうということでよろしいんですね?」


「ああ。もちろん。貴重な即戦力だからね。相手も承諾するでしょ。生きていくために必要なことだからね」


男は『月の道影』に所属している『仲間』の顔を思い浮かべた。皆自分より10歳は若い少年少女たち。1から教えなければならない仲間ではないから面倒がなくって助かるが、あのプライドが高い集団が黙っているはずがない。そっち方面の面倒ごとが起きるかもしれない。


そんな男の内側を読んだように


「あの無駄にプライドが高い『仲間』が黙ってないはず。何かしら問題が起きるだろうが、あまりかかわらなくっていいから。必要最低限でのフォローでいいよ」


「わかりました」


「久しぶりの『同胞』だよ。楽しくなりそうだ」


主は子供がまるで新しいおもちゃを見つけたみたいに、嬉しそうだった。男はそれを聞いて、背に寒気が走った。男は無理を承知で騒動が起きないことをせつに願った


男は向こう側について知っていることは、こことまったく建物など一緒で、自分たちが戦っている異形のもの『影』の本拠地。人はまったくおらず、無人の街。


たまにこっちからなんらかの事故で向こう側に落ちてしまう人間がいて、そのものたちも自分たち同様、『影』と戦えることが出来る『異能』の力を持つもの。


ただし向こうで『異能』を得た場合は『仲間』ではなく、『同胞』と呼ばれる。それすべての情報は主から聞いたこと。


なぜそんなことを知っているのか聞いたら、自分もそこから『生還』したのだと。この主に仕えて5年はたつが、他に『生還』したものに会ったことはない。


皆、こっちで『影』に遭遇して、『異能』の力を手に入れた『仲間』。男―神楽もその1人だ。


「能力確認しますか?」


「いいよ。しなくって。そのうち嫌でもわかるでしょ。」


「それでは困ります。誰と組ませればいいのかわかりません」


「ああ。そうだね。えーと組んでいない子がいたじゃん。その子でいいよ」


「彼は適さないですけど、まぁしょうがないです。暫定的にでも組んでもらいます」


「そうそう。わがままがいつまでも通るわけないことをあの子はいいかげんに学ばないとね。えーと、あっとここだ」


と主は自分のスマホを取り出し操作して、神楽を見ずに投げた。神楽が危なげなくキャッチすると、ある場所を示していた。


「そこにいるから、彼女は。あとはよろしく。僕もそろそろ戻らないといけないからね」


神楽がスマホから視線をあげるとにそこには誰もいなかった。神楽はそれに驚きもせず、内心またかと呆れていたが。突然消えるのはいつものことなので、立ち上がり思考を切り替え、『同胞』を迎えに部屋を出た


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