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おわりとはじまり

それは異様な光景だった。


16歳くらいの茶色の髪が肩より少し長めで、不細工でもなくだからといって美少女でもない、ごく平凡な顔立ちの少女が無表情で、誰もいない街の片隅に立っていた。


着ている服とだらりと下げた手にそれぞれ持っている長さがことなる日本刀らしきものを真っ赤にー血で染めて。


少女は周りの異形のものたちの屍を無視し、足元に倒れている男をじっと見つめていた。


男は全身血だらけで、左腕がなく虫の息。あと数分ももたないだろう。


少女が斬ったのだ。自分を・・・彼を助けるために。


少女はこの男と、いや仲間たちとここまで戦ってきた。戦うごとに仲間が1人減り、2人減り・・・何度も絶望を味わった。


それでも進むしかなく、気がついたら少女と男しか残っていなかった。


「わ・・わ、るいな。・・・おま・・えが、すべて・・・・背負うことに・・・・なっち・・まって」


男は自分が助からないことはわかっていた。ただ、残された少女に思いをつたえたく、最後の力を振り絞って、自分を見下ろす少女に謝った。


少女は首をゆっくりと横に振り、持っていた日本刀から手を離した。刀は地面に落ちることもなく、最初から存在しすかったように消えた。


少女はしゃがみ、男の最後の言葉を一言も聞き漏らさないように、男の口元に自分の耳を近づけた。


もうあまり目も見えなくなっているが、男には少女が無表情でいるのがわかった。それは本当に悲しいことがあると無表情になるくせだということも。


(こんな顔をさせたくなかっただけどな。あいつらと同じ年頃だから)


確かに死ぬ・・今この瞬間が怖い。だけど、残して逝くのもつらい。散っていた仲間たちもそんなことを思いながら逝ったのかもしれないと男はふと思った。


重荷を背負わせるようで悪いと思いつつ、男は力の入らなくなってきた、手を動かしてなんとかポケットからから色とりどりな石で出来ているブレスレットを、少女に差し出した。


少女は頷くとそっと受け取った。男はそれを見届けると最後の言葉を少女に贈った。散っていた仲間たちの遺言でもある


「あと・・のこ、ことは・たのんだ。いき・・てくれ・・・・真白」


男はつぶやくような小さな声で言って笑うと、まぶたを閉じ、動かなくなった。少女―真白≪ましろ≫は頬から流れ落ちる雫をぐいっと服の袖でふき取ると、ふらつきながらも立ちあがり、男から離れた。


男の体が淡く光だし、崩れていた。まるで砂で出来ていたかのように。あっという間に男の体は消え、あとは黒い石だけが残っていた。


真白は石を拾うと、持っていたブレスレトと一緒にポケットに入れた。そこにツインテールのなかなかかわいい顔立ちした10歳ぐらいの少女がとことこと小走りでやってきた


「終わった?」


真白はこくりと頷いた


「そっかぁ。あと少しで帰れたのに残念。これで残ったのは真白だけだね」


少女はしきりにそうつぶやくとうんうんと頷いた。真白は複雑な思いで聞いた。はたしてこの少女は本当にそう思っているのかと。


「もう一度確認するよ。帰るんでいいだよね?」


「うん。私一人になっちゃったけどね。帰るよ、絶対。自分のためであり、みんなのためでもあるから」


帰ったところで、仲間とは違い、待っている人も場所もないけれど、それでも帰りたいと真白は強く思う。


まぁ、あてはないけどなんとか生きていけると思う。この戦うために手に入れた力で。結局、帰っても自分は戦いから逃れられないんだなと苦笑した。


「なんにせよ。私がいるから大丈夫だよ」


真白にピースしながら得意げに言った。なにはともあれこの少女一真生まきは裏切ることはないから彼女を頼るしかない。不安はあるものの。


「さて、そろそろ始まるよ。ほい、手出して。はぐれたりすると厄介だから」


真生が手を差し出す手を真白は握った


「カウントいくよ。……5、4、3、2、1、ゼロ」


目の前の空間がぐにゃりと渦を描くように歪み、縦に亀裂が入りぽかりと穴が開いた。真生は真白と手を繋いだままジャンブして穴に飛び込んだ。


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