弱り眼に祟り眼
音楽に合わせて踊る噴水がクラシックの曲に合わせて、優美で華麗な水の舞を演じている。
水煙に包まれた周辺は幻想的で何やら夢幻の世界に誘われたような雰囲気に包まれていた。
恋人同士の愛の語らいの場としては絶好のお膳立てであろう。
が――、
水煙でけむる噴水広場のロータリーは、微妙な雰囲気に被われていた。
「ご、ごめん。別にその…性的嫌がらせのつもりなんかじゃなくって……」
「もういいってば、怒ってないから――」
気にしてないと言いつつも、瞳のこめかみの辺りにはピキッと走る青筋が……
「それより大丈夫?つい思いっきり叩いちゃったから……」
だが、くっきり残った手のひらの跡も痛々しくあれこれと言い訳を続ける俺に、さすがにほだされたのか……
赤く腫れた俺の頬にそっと手を触れ、心配そうに覗き込む瞳――
何となく鼓動が高まったのはきっと気のせいに違いない。
何とか平静を取り戻そうと煩悶とするうちに、ふと攻略本の一節が脳裏をかすめた。
口説き方その三
…傍らに寄り添い、それとなく触れてみるべし――
「あ、ほら…動かないで――」
半ば無意識のうちに、柔らかな瞳の手を取り引き寄せようと左に一歩踏み出した俺は――
「うわっ!?」
「仁見君――!?」
噴水の縁に蹴っ躓いて、そのまま盛大に頭から水の中に突っ込んだのであった。




