待ち合わせ
口説き方その一
…女心を惹く決定打は出会いがしらの衝撃的な誘惑の言葉――
「……衝撃的な誘惑の言葉ねぇ……」
待ち合わせ場所に指定していた遊園地前の大きな桜の木に、早めに辿り着いた俺は攻略本を熟読していた。
「仁見く〜ん―――」
鈴の音のごとき軽やかな声に顔を上げると、舞うように軽やかな足取りで瞳が俺の下にたどり着いた。
「ごめんね、待った?」
「いや、俺も今来たところだよ」
本日の装いはロングカーディガンにボーダーのロングカットソー。
チェックミニの裾からはすらりとした素足が伸び、ライトブラウンのジョッキーブーツがよく似合う。
ようやく春めいてきたとはいえ、まだ少し風が冷たいこの数日……無難な選択と言えよう。
街角ファッションチェックのごとき感想を抱きつつも、さりげなく本をしまった俺は攻略法を実践すべく出会いがしらの衝撃的な言葉を発しようとした。
が――、
「……え~~っと、え~~~~」
「……?」
こういう状況に不慣れな俺に、都合よく出てくるわけがない。
言葉に詰まる俺をちょっぴり怪訝そうに覗きこんだ瞳は、
「遊園地なんて久しぶり。昨日から楽しみにしてたのよ」
にっこり微笑んで、男にとって心嬉しい一言を投げかけてくれた。
……とは言え、なんとなく先手を取られた気分でますます焦った俺は、目まぐるしく頭を回転させ脳裏で衝撃的な言葉を探す。
そしてようやく絞り出した一言が――――
「え〜〜〜、絶叫マシンにでも乗ろうか?」




