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露の季節2

「紫音ちゃん大丈夫かな……?」


「心配だね、無事だといいんだけど……」


 早朝、うっすらとした曇り空の中、僕たち三人は紫音さんの家へと向かっていた。

 雨が続き東の森の川が増水して洪水を起こし、村の中には木々が転がっておりあちこちに水溜りが出来ていた。

 僕たちの家は西の森に近く大丈夫であったが、紫音さんの家は東の森のすぐ隣にあり不安であった。


「あ、紫音ちゃん!」


 倒壊した家の前にたたずんでいる紫音さんを見つける。

 紫音さんの無事な姿を見て慌てて僕は駆け寄る。


「紫音さん~! 大丈夫ですか~?! うわっ!――」


「あ、陸様……きゃっ!――」


 水溜りに足をすべらせ紫音さんの着物の両肩をひっぱり盛大にこける。

 両肩を引っ張られた事で着物がはだけ豊満な胸があらわになる。


「まぁ陸様、やっとその気になってくださったんですか?…… しかもこのような場所で……」


「ち、違います、ご、ごめんなさい!」


 紫音さんが頬を赤らめてそう言う。

 僕は両手両膝を地面へとつけ水溜りに向けて頭を下げ何度も土下座する。


「私は大丈夫ですが後ろの方が……」


「へっ?」


 頭を上げ後ろを振り返り見上げる。

 そこには木材を担いで睨んで見下ろす赤頭(あかあたま)さんと怒りに震える琳子の姿があった。


「てめ~! 紫音さんに何してやがるんだ~!!」


「陸君のばか~!!」


 バキッ! ベキッ! ボキッ!


「ぐは! がは!」



 ――――



「それでは紫音さん、明日には新しい家が完成すると思いますんで」


「はい、ありがとうございます赤頭さん」


「いえいえ、小僧、紫音さんに手出したらただじゃすまねえからな!」


「は、はい……」


 手を出されるのは僕のほうだと思うが、そんな事口が裂けても言えず、ぼろぼろの僕はただだまって返事をする。


「それじゃ行こうか! 紫音ちゃん♪」


「はい、お世話になりますみなさん」


 紫音さんは今晩僕たちの家へと泊まることになり家へと向かい歩き出す。



 ――――



「すみません、紫音さん手伝ってもらって」


「いえいえ、困ったときはお互い様ですわ陸様」


 僕たちは家へとつき洪水で荒れ果てた、家と同じぐらいの大きさの畑の土を鍬を持ち、耕し直しはじめる。


「オーイ、リンコ~」


「あ、溝出(みぞいだし)さん!」


 遠くから白いガイコツやら、手のついた提灯(ちょうちん)やらがこちらに手を振りこちらへと走って向かってくる。

 もはや慣れてしまっているため気絶はしないが、そのシュールすぎる光景に思わず僕は苦笑の笑みを浮かべてしまう。


「どうしたんですか?」


「アア、オレタチハ食事を取る必要ナイカラナ、ミンナノテツダイヲシテルンダ」


「ドウヤラ、ココハ人数的にダイジョウブソウダナ、ソレトコレハオスソワケダ」


 そう言って白いガイコツもとい溝出さんは野菜などの入ったカゴを琳子へと手渡す。


「ありがとうございます、溝出さん!」


「キニスルナリンコ、ソレジャナ。コゾウモガンバレヨ」


「はい、ありがとうございます!」


 そう言って溝出さん達は次の民家へと向かうべく走り去っていった。


「ほんと見た目は変わってるけどいい人ばっかりだね」


「うん、私はこの村が大好き!」


「私もですわ」


「イッシャも!」


 (みんな同じ気持ちなんだな)手を取り合い助け合うこの村に、馴染み始め気に入り始めている自分を感じとる。


「それじゃがんばろうか!」


「「「はーい!」」」






 ――畑を直し終え、それから夕食の下準備をすると言い、残った紫音さんを置いて三人で東の森へと水汲みに来ていた。


「ひどい状態だね……」


「うん、だいぶ荒れてるね」


 大木と言えるほどの大きな木々が倒れ、木々から落ちた葉っぱで敷き詰められた辺りの地面は水びたしであった。


「イツキちゃん、大丈夫かなぁ~」


「あ、イツキちゃん!」


 倒れた木々の間を足を滑らせないようにしばらく歩いていると、川のほとりにたたずむイツキを見つけ、イッシャが駆け寄って行き、こちらへと気づく。


「イツキ! 大丈夫か?!」


「けっ! お前に心配されるおぼえなんざ――」


 ぐぅ~~~ その瞬間、イツキのと思われる腹の根が静かな森の中へと響き渡る。


「イツキちゃん、もしかしてお腹すいてるの?」


「し、仕方ないだろ! 昨日の洪水で食料がほとんど流されちゃったんだから!」


 イツキが頬を染めて恥ずかしそうにそう言い放つ。


「イツキちゃんうちにくる?」


「だ、誰がお前たちの手なんか借りるか!」


「イツキちゃんはイッシャ達のことが嫌いなの?」


「うっ……」


 イッシャが上目遣いでイツキのことをみつめる。

 戸惑いを見せるイツキ。どうやらイッシャには弱いようだ。


「し、仕方ないな! 今回だけだからな!」


「ふふ、紫音ちゃんに料理多めに作るよう頼まないとね♪」






 ――夕暮れ時、イツキを連れた僕たち四人は家へとつき、夕食の準備をして五人で居間のテーブルへとそれぞれ座る。


『いただきます』


 両手を合わせ箸をとりそれぞれ紫音さんが作った色とりどりの料理へと箸をすすめる。


「紫音さんおいしいですけど今度は何も入れてませんよね?……」


「ええ今回は大丈夫ですよ」


 紫音さんが笑顔でニッコリと笑いそう言う。

 (本当に大丈夫なのだろうか……)

 食べないわけにも行かないので半ば半信半疑で料理を口へと運ぶ。


「イツキちゃんはどうですか?」


「まずくはねえんじゃねぇの~」


「ふふ、それはよかったです」


 イツキがそう言いながらお腹がすいていたのか、箸をすばやく動かし次々と食べすすめる。

 (この子は本当に素直じゃないな)



『ごちそうさま』


「陸君~一緒にお風呂に入ろう♪」


「ごめん、琳子。僕は後で入るから先に入ってて、さすがに五人で入るには狭いと思うしね」


(女の子四人に囲まれて入るとなると間違いなく気絶する……)


「う~わかった先に入ってるね」


 琳子がそう言い手を振り浴場の方へと走り去っていく。

 




  ――――四人がお風呂に入った後に僕は一人で浴場へと向かいお湯へと浸かった。

 そして()三つ時(午後十時~十時半)、皆それぞれの布団へと入り僕は琳子と居間で、隣の寝室ではイッシャ達三人に分けて寝る事にした。


(ふぅ~今日は色んなことがあったなぁ~)


(琳子もう寝てるのか早いな)


 隣では琳子が気持ちよさそうに寝息をたてて眠っていた。


(明日も忙しいだろうし僕もそろそろ寝るか、おやすみ琳子……)


「ん……陸君」


 琳子の頭を撫でて僕も眠りへとつき慌しい一日が終わりを告げる――――。


ガイコツらしく全部のセリフをカタカナにしようと思いましたがさすがに読みづらく取りやめました。。

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