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雲外鏡

微エロありです。

「ふぅ、これで今日の作業は全部終わりだね」


「イッシャも二人のお手伝いがんばったよ~!」


「うん、二人ともお疲れ様、イッシャもよくがんばったね」


「えへへ~」


 正午過ぎ、今日の作業を終え、僕たちは障子を背中越しに、縁側に座り休憩をとりはじめる。

 イッシャの頭を撫でて褒めてあげると嬉しそうに尻尾を振り喜ぶ。


「そういえば今日は紫音(しおん)ちゃんから招待されてたね、何でも陸君を歓迎したいって」


「へぇ~、元気にしているかなぁ」


 紫音とは琳子がこの村に来たときからすでに住んでいたらしく、雲外鏡(うんがいきょう)と言う鏡の付喪神(つくもがみ)らしい。

 この村に来たときに挨拶に行ったのだが活発的な琳子とは、違い紫色の着物に紫色の長い髪をしたお淑やかな年上の感じの女性であった。

 性格は違えど二人は仲が良いらしい。


「それじゃ準備しようか!」


「うん!」


 ――――


 ――すべて家事を終え、夕暮れ時、僕たち三人は紫音さんの家の前に来ていた。

 琳子の家とさほど変わらない木造建ての家であり、僕たち三人は引き戸の玄関の前に立ち尽くす。


「紫音ちゃん~! 遊びにきたよ~」


「遊びに来たよ~!」


「よくいらしてくれました琳子ちゃん、イッシャちゃん、それと陸様」


「お世話になります、紫音さん」


「はい、それじゃ中へどうぞ」


 琳子の呼び声に対し家の中から引き戸を引き、僕たちの前へと立ち尽くす。

 凛とした長い髪に紫の着物に身を包み、包容力がありそうな笑みを見せる。

 その笑みや美しさに思わず魅入りそうになってしまう。

 紫音さんに招かれ、僕たちは土間で靴を脱ぎ、中に入り居間の(ふすま)を開けると、たたみの上に置かれた木のテーブルの上には、数々の豪華な料理が置かれていた。


「へぇ~すごいな~」


「それじゃ、冷めないうちにいただきましょうか」


「はい」


 僕たち四人はテーブルを囲むようにそれぞれ座り、箸を掴みいただきますの挨拶をしてから、料理を食べ進めていく。


「どの料理もとてもおいしいですよ、紫音さん」


「ありがとうございます陸様、腕によりをかけた甲斐がありましたわ」


「私はね、紫音ちゃんに料理を教えてもらったんだよ~!」


「へぇ~」


 琳子の料理もおいしかったが紫音さんのもまたおいしく箸がすすみ、楽しい食事の時間はあっという間に過ぎさっていく。


「「「「ごちそう様」」」」


「それでは陸様お湯が沸いておりますのでこちらへどうぞ」


「うん、ありがとう紫音さん」


 僕は紫音さんに連れられ、廊下を渡り、風呂場の方へと歩みを進めていく。

 脱衣所dえこの村に来る前から着ていたジーパンとTシャツを脱ぎ、琳子の家から持ってきた白い布を腰に巻いて浴槽の扉を引き中へと入る。



 ――――――



 「ふぅ生き返るなぁ~」


「紫音さん本当に綺麗だなぁ」


 木で出来た浴槽に腰掛け、湯船に浸かりながら天井を見上げ紫音さんの着物姿を脳裏に浮かべる。

 琳子の家のお風呂もそうだが紫音さんの家のお風呂も木で囲まれており、とても広くゆっくりとくつろぐ。

 その時不意に勢い良く、浴場の引き戸がガラッと開き琳子とイッシャが中へと入ってくる。

 その身には何もまとっておらずそれを見て思わず鼻血を噴出しそうになってしまう。


「陸君~! お風呂に入りに来たよ~」


「来たよ~!」


「だから、男と女の子は別々に入るんだってば~!」


「え~なんで?」


「なんで~?」


 タオルも巻かずに入ってくる二人の裸に腕で目を隠し慌てて顔を背ける。それに対し首をかしげる二人。

 前々から二人に言ってるが理解してもらえず入浴中に何度もこうして入ってきていたのだ。

 妖怪だからなのか? それとも僕が唯一のこの村での人間だからなんだろうか? 二人には羞恥心がみえなかった。

 腕で目を隠し、浴槽の中でうつむく僕をよそに、二人が湯船の中へと入りお湯に浸かる。


「ごめんなさいね陸様、一人でゆっくりとお湯に浸かりたいと思うのですが」


「紫、紫音さん?!」


 その時突然浴場の引き戸が開きさらに紫音さんが中へと入ってきた。

 (この人は知っているのに入って来たんじゃないか?) そんなことを思いつつ、背中に丸い鏡がついており豊満なスタイルの紫音さんの裸に僕は思わず気絶しそうになりよろめく。

 そんな自分をよそに隣で三人は浴槽に浸かり、和気藹々とした雰囲気となっていた。


「陸様お背中流しましょうか?」


「いえ、けっこうです!」


 僕は紫音さんの裸に目をそむけながら、湯船から上がり、手早く頭と体を洗いそそくさと足早に浴場から出て行く。


 ――


「はぁ、びっくりしたなぁ……」


 その日の深夜、今に敷かれた布団につき、僕は一人で仰向けに寝そべっていた、琳子たち三人は隣の部屋で寝ている。


「しかし、紫音さんって本当にいい人だよなぁ」

 

 礼儀が正しく、料理も上手で僕のことを歓迎してくれた事に感謝をする。


「よし、そろそろ寝るか」


 そう思い目を閉じ体を横にしようと思ったが体が動かない事に気づく。

 体が痺れて動かず声を発することも出来なかった。


(何だ?……)


 

「ふふふ、ようやく味噌汁の中に混ぜた薬が効いてきたようですね」


(紫音さん?!)


 不敵な笑みを浮かべ居間の襖が開き紫音さんが立っていた。

 夕べ見た包容力のある笑みとは違い不気味な笑みを浮かべて。


「この村にまさか人間の殿方が来るなんて、生きていた甲斐がありましたわ」


 前言撤回、やっぱりいい人じゃないかもしれない。

 紫音さんは着物の帯に手をかけシュルシュルと紐解いていく。

 障子越しに差し込む月夜に照らされたその裸はとても美しかった。


(って見惚れてる場合じゃない! 助けて琳子-!!)


「さぁ婚約の(ちぎり)を交えましょう……」


 紫音さんはそう言い僕の衣服に手をかけていく。


「こらー!!」


「琳子ちゃん?!」


 そのとき僕の祈りが通じたのか襖が勢いよく開き琳子が立っていた。

 

「紫音ちゃんだ~め~! 陸君は私の物なんだから!」


 (え? そうなの?!)


「そんな! 百年ぶりの人間の殿方ですのに」


「だめったら、だ~め!」


「む~! こればっかりは琳子ちゃんでも譲れませんわ!」


(頼むからせめて服を着させてくれ……)

 

 頭上で行われる、そんな二人の口論を裸にひん剥かれたまま、薬が切れる明け方まで僕は聞かされ夜が更けていった――――。

 


読んでくださった方に感謝です!。


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