イッシャの病気2
久々の長文でミスがありましたら申し訳ないです。
どうでもいいけどおにぐまじゃなくておにくまでした(´・ω・`)
(まずいな……)
北の森に到着し歩き始めて数時間。
背丈以上の木々が並び雨が続いていたので足場がぬかるみ探索は困難を示していた。
幸い妖怪には出くわさなかったが、同じところを何度も歩かせられている感じがし、
森から出られなくなっていた。
(そろそろ日が暮れるな)
焦りを感じ歩みを速めるが、一向に景色は変わらずずっと同じ森が続く。
「ほお、妖怪かと思ったが人間か」
その時不意に巨大な影が木影から現れる。
目の前には赤頭さんよりでかい、2m50以上はあるであろう赤い熊が、
二足で直立をし目を光らせこちらを見下ろしていた。
「っ! こいつが鬼熊……」
圧倒的な迫力と威圧感の前におもわず腰が引け後ろへと下がる。
「なぜ、ここに来たかはしらんが、まぁいい。久々のご馳走だ!」
「ひぃ!」
恐怖に腰が引けその場にしりもちを着く。
それが功を奏して鬼熊の一撃がはずれ、後ろの大木二本がへし折れ倒れる。
「くっ! こんなところで死んでたまるか~!!」
恐怖で動けなくなりそうになるも、体に全身全霊の力を込めて立ち上がり、鬼熊とは逆方向へと木々を掻き分け全力で走り出して逃走する。
「待て、人間!!」
その後を後ろから鬼熊が二足歩行で木々をなぎ倒し追いかけてくる。
「ひぃぃ~~~~!」
日が落ち始め辺りが暗くなる森の中をただ我武者羅に全力で走る。
「っ! うわああああ!!」
「ち! 喰い損ねたか」
鬼熊に気をとられ雨の影響でぬかるんでいた地面に足を滑らせ、がけ下へと落ち僕の意識はそこで途絶えた――――。
――――
「ん? ここは……?」
意識を取り戻し目を開けてみると、灰色の天井がありどうやら洞窟の中であるみたいだった。
「お目覚めでしょうか?」
「あなたは?……っ!」
頭に獣の耳がついており、金髪の長い髪の着物を着た美人なスタイルのいい女性が、膝枕をして顔を覗きこむ。
「動かないでください、まだ打ち身がひどいようですから。あなたは私の洞窟の前の林に倒れていたんですよ」
女性が僕のお腹に右手を当てて、手の先からは白い光が僕を包み込むように出ておりそこから発せられる光にはとても暖かいものが感じられた。
「私の名前は空狐です。尾はないですが妖狐であり狐の妖怪です」
「僕は高嶺陸です」
「あなたはどうしてこのようなところにおられるのですか? どうやら人間のようですが……」
「あなたが空狐さんですか?! 実はイッシャが!!――――」
慌ててて起き上がり空狐さんに事情を説明する。
――――
「なるほど、あなたがここに来た理由はわかりました」
「ですが協力する事は出来ません」
空狐さんはきっぱりとそう言い放ち、予想外の言葉に動揺する。
「どうしてですか?!」
「私の力が強大すぎるからです。人間にも妖怪にも干渉する事を許されてません」
「そんな……」
かたくなな意志を見せる空狐さんであったが、ここまで来て手ぶらで帰るわけにも行かなかった。
「おねがいします! イッシャを助けてください!」
両手両膝を着き空狐さんへと向けて必死に頭を下げお願いする。
「……あなたはどうしてそこまでなさるのですか? 出会って数ヶ月ですしあなたは人間でしょうに」
空狐さんがそう問いただす。
「決まっているじゃないですか……僕にとってイッシャは二人は人間も妖怪も関係ない大切な家族なんですよ!」
顔を上げて空狐さんへとはっきりそう言い放つ。
空狐さんはそんな自分をただ黙ってじっと見ていた。
「……わかりました、協力しましょう」
「本当ですか?!」
空狐さんのその言葉に気持ちが弾み思わず叫ぶ。
「はい、ただし条件があります」
「条件?」
「この森に咲いてる赤い花を取ってきて私のところに持ってきてください。そうすれば協力いたしましょう」
「あなたの話からするともう時間はあまりないようですし、鬼熊も待ち構えている事でしょう。それでも行きますか?」
「っ!……」
空狐さんの言うとおりすでに外は明るく一日が経過しており、あと何時間残されているかわからなかった。
それにまたあの鬼熊がいるであろう、今度こそ殺されるかもしれない。
だがここまで来た以上覚悟はすでに決まっていた。
「そえでも僕は行きます……行かなければならないんです」
「……わかりました、条件を出した私には止める資格はありません。お気をつけて」
「はい! かならずとってきます!」
空狐さんにお辞儀をして洞窟の外へと走り出した。
ぬかるむ崖をよじ登り二度目の北の森の探索を開始する。
(急がないとイッシャが……)
気持ちが焦りただ我武者羅に木々を掻き分け赤い花を探す。
昨日の転落でまだ体の節々が痛むが痛みにかまけている余裕など無かった。
そして探索から一時間が経過しても赤い花は見当たらず森には「カーン、カーン」と言う不気味な音が鳴り響いていた。
(まずいな……時間が無い)
取っても無事にすぐ森から出られるかもわからず、焦燥の気持ちが湧き上がり頬を汗が伝う。
(あれは……!!)
そんな矢先、目の前の木陰に念願の赤い花があり視界に入る。
慌てて駆け寄ろうとするが目の前に巨大な影が現れ、思わず歩みを急に止める。
「鬼……熊……っ!」
「まさかまだこの森にいるとはな。しかも俺の縄張りに入ってくるとは、そんなに死にたいのか?」
鬼熊がにやりと笑い二足歩行でゆっくりと自分へとにじみ寄りる。
「おっと今度は逃がさんぞ」
後ろに下がる自分を見て鬼熊がそう言い、自分の後ろを土色の異形の形をした妖怪たちが取り囲む。
「くっ! やっと見つけたのに……っ!」
「お前たちは手を出すなよ、こいつは俺の餌だからな」
「さて、久々の食事といこうか!」
鬼熊がそう言い自分へと向けて右手を振り下ろす。
「くっ! ここまで来て死んでたまるかぁ!」
一か八か鬼熊のいる方へと頭から飛び込み倒れながらも花をつかむことに成功する。
「よし! これで後は逃げられれば!」
そう思い膝に手をつき立ち上がろうとするも、背後には鬼熊が右手を構えて立ち尽くしていた。
「何が目的かはしらんが、これで終わりだ!」
そう言い体勢が万全ではない自分に鬼熊が右手を振り下ろす。
「くっ! ごめん琳子、イッシャ……」
諦めて目を閉じ握っていた赤い花を力強く握り締める。
――だが目を瞑っていても一向に拳は来ず静かだった。
「なぜ邪魔をする空狐?」
「空狐さん?!」
目を開けると自分の前に空狐さんがたたずんでおり、拳はその目の前で止まっていた。
「お前は人間にも妖怪にも干渉しないんじゃなかったのか?」
「ええ、確かにその通りです。そしてそれを破った私は罰を受けるでしょう」
「ですがこちらにも事情が出来まして。それにこの場所ならあの方も容易には来れないでしょう」
「まだやりますか? 鬼熊」
「くっ!……」
空狐さんが威圧的な目で鬼熊を睨み、その気迫に思わず鬼熊が後ろへと退く。
「お前ら引くぞ!」
鬼熊がそう言い妖怪たちを引き連れ立ち去って行き、その場には自分と空狐さんだけが取り残される。
「よくがんばりましたね陸様、あなたの思い見させていただきました」
「空狐さん……」
先ほどとは対照的に笑みを浮かべて自分の方へと振り返り手を差し出す。
「急ぎましょう陸様、もうあまり時間がありません。こちら側から行けば入り口にもどされ素早く森から出られるはずです!」
「はい!」
こうして空狐さんを連れ村へと向けて急いで走り出した。
――――空狐さんを連れ村へたどり着いた頃にはすでに日が落ちかけていた。
「陸君!」
「琳子?!」
家の入り口には琳子が目に涙を浮かべて立っていた。
「よかった陸君無事だったんだ、本当に心配だったんだよ……ひっく」
「ごめん琳子、心配かけて……」
泣きじゃくる琳子をそっと優しく抱きしめる。
「それでイッシャは?!」
「うん……おしら様ががんばっているからまだ大丈夫だよ!」
「よかった……」
ホッと胸を撫で下ろし安心する。
「急ぎましょう陸様!」
「はい!」
琳子と空狐さんを連れて家の中へと急いで入る。
――――イツキや紫音さんなどみんなが見守る中、空狐さんが手を当て白い光が布団に横たわるイッシャの体を包み込みんでいた。
「どうですか? 空狐殿」
「はい、このまま安静にしていれば大丈夫ですよ」
空狐さんが手を放してそう言い、全員が胸を撫で下ろし安堵の息を漏らす。
(本当にイッシャが助かってよかった。でもこのまま僕がここにいればまた……)
助かった嬉しさの反面、心に暗い感情が湧き上がる。
「ありがとうございました空狐さん!」
琳子が目に涙を浮かべ、深く頭を下げて空狐さんにお礼をする。
「いえいえ、陸様の覚悟があったからですよ」
「それとおしら様、私もこの村に住んでもよろしいでしょうか? あの場所にいる意味がもうなくなりましたから……」
空狐さんが遠くを見てどこか悲しげにそうポツリと言った。
「ああ、ぜひ歓迎じゃ。今日はわしの家に泊まっておくれ」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃみんなご飯にしようか! 陸君も無事に帰ってきた事だし!」
「私も作りますわ」
「空狐さんも食べていってね!」
「はい、お世話になります」
そう言い琳子と紫音さんが炊事場へと向かっていく。
それから大人数での和気藹々とした明るい雰囲気の食事が始まるが、自分の心の中の暗いわだかまりは晴れる事がなかった。
そんな気持ちを抱えたまま大変な目にあった慌しい一日は過ぎていった――――。
微妙にミスをおかしました、専門的なことなのでわかる人はいないとおもわれますが……。
空狐に尻尾がないのは資料に0本と記されていたのでそうしました。
展開がだれてきたので後三話でおわろうかしら(;´Д`)
とりあえずこんな話でも読んでくださった方々に感謝です!。