万能猫短々2
■見えない手作業
三人が暮らす家の隣人は、最近、深刻な悩みを抱えていた。
隣の家に、人知を超えた「何か」が棲みついているのではないか、という疑念だ。
毎週月・水・金曜日の夕方。隣家の庭に干された洗濯物が、まるで巨大な掃除機に吸い込まれるか、あるいは透明な鞭に巻き取られるかのような猛スピードで、一気に室内へと取り込まれるのだ。
風が吹いている様子はない。ただ、一瞬の「しなり」とともに、シャツもシーツもすべてが消える。
逆に、火・木・土曜日の夕方は、極めて人間臭い光景が繰り広げられる。
住人の青年・ナムオが、ぶつぶつと
「めんどくさ……」
と零しながら、風に煽られる洗濯物に悪戦苦闘し、時には靴下を地面に落として慌てて拾い上げている。
極めつけは、火・木・土曜日の朝だった。
玄関先に置かれたゴミ袋が、まるで生き物のようにコロコロと転がり、誰の手も借りずにゴミ捨て場の中へすっぽりと収まるのを、隣人は見てしまった。
あまりに不可解な現象の連続に、隣人はひとつの決断を下した。
「見なかったことにしよう。関わってはいけない」
それが、この街で平穏に生きるための知恵だった。
今日は水曜日。
家の中では、洗濯物当番の猫・タクニャが、窓際で満足げに喉を鳴らしていた。
彼は『能力ルーレット』で授かった
「一日一回、一分間だけ顕現する見えない手」
を、今日も迷わず発動させた。
(よし、十秒で取り込み完了だ。残りの五十秒で、すべての部屋のホコリを掴みとれば、掃除当番も完了だ!)
世界を救った最強の不可視の手は、今や「一分間限定の完璧な家事代行」として、タクニャの昼寝時間を守るためだけに、その強大な力を振るっていた。




