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追放された俺、なぜか勘違いされながら距離感のおかしい人たちに囲まれている ~無能扱いだった評価が外の世界で逆転しただけの話~  作者: 猫又ノ猫助


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第1話 役に立たない雑用係

「――今日の依頼は、森の奥に入りすぎるな。天気が崩れそうだし、帰り道がぬかるむ」

 

作戦前の簡易会議で、俺はそう口にした。

地図と空を見比べただけの、ありふれた判断だ。

 

だが、返ってきたのは短い失笑だった。

 

「また始まったか。お前の“予想”はもういい」

 

リーダーのカイルは、椅子に深く腰掛けたまま、こちらを見ようともしない。

前衛の剣士と槍使いが苦笑し、魔法使いは興味なさそうに指先で魔力を弄んでいる。

 

いつものことだ。

俺は戦えない。魔法も使えない。

できるのは、準備と片付け、記録、そして口出しだけ。

 

だから俺の意見は、最初から数に入っていない。

 

「……分かった。じゃあ、帰り道の水は多めに持って行った方がいい。昼を跨ぐ可能性が――」

 

「しつこいな」

 

カイルが苛立った声で遮った。

 

「お前は雑用だけやってろ。判断は俺がする」

 

それ以上、何も言えなかった。

俺はうなずき、黙って荷物の最終確認に戻る。

 

結果から言えば、その日の依頼は失敗だった。

 

森の奥で想定外の魔物と遭遇し、撤退が遅れた。

雨が降り、足場は最悪。

帰還時には前衛の一人が足をやられ、回復薬も底をついた。

 

「くそ……!」

 

拠点に戻ったとき、カイルは壁を殴った。

 

「最初から分かってたんだ……天候も、地形も……」

 

誰かがそう呟いたが、その言葉はすぐにかき消された。

 

「……ああ、分かってたよ」

 

カイルが、ゆっくりとこちらを振り返る。

 

「分かってたのに、役に立たない助言しかしない奴がいるせいで、判断が鈍った」

 

その視線が、まっすぐ俺に刺さった。

 

「お前だ」

 

空気が、凍る。

 

「戦えない。決定力もない。

それでいて口だけは出す。

正直、足手まといだ」

 

心臓が、嫌な音を立てた。

 

「……待ってくれ。俺はただ――」

 

「もういい」

 

カイルは手を振った。

 

「今日で終わりだ。

お前はこのパーティに必要ない」

 

追放。

その言葉が、頭の中で反響する。

 

誰も、何も言わなかった。

庇う声も、視線も、なかった。

 

――そうか。

 

俺は、そのときようやく理解した。

 

自分がしてきたことは、

誰の記憶にも残らないものだったのだと。

 

作戦前の助言も、準備も、気配りも。

全部「当たり前」として消費され、

失敗したときだけが、はっきりと残る。

 

「……分かりました」

 

そう答えた自分の声が、やけに落ち着いて聞こえた。

 

荷物をまとめ、拠点を出る。

背中に、誰の視線も感じなかった。

 

夜風が冷たい。

 

――俺は、役に立っていなかったのだろうか。

 

歩きながら、何度も考える。

過去の判断、過去の助言。

助かった場面も、確かにあったはずなのに。

 

「……たまたま、だよな」

 

自分に言い聞かせるように呟いた。

 

才能がない。

だから追い出された。

 

それだけの話だ。

 

そう結論づけないと、

前に進めない気がした。

 

俺はそのまま、街を離れた。

 

まだこのときは知らなかった。

自分が“役に立たない”と信じ込んでいたその能力が、

外の世界では、まったく違う意味を持つことになるなんて。

 

――それを知るのは、もう少し先の話だ。

読んでいただきありがとうございます。


本日は3話まで1時間おきに更新予定です。


本作は、

勘違い要素はありますが、

主人公は一貫して常識人寄りの物語です。

次話から、

少しずつ環境が変わっていきます。

よろしければお付き合いください。

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