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SCRAPFILe:警視庁捜査専門支援係  作者: 戸川くじ
S区アイドル心中事件
7/19

7:濡れたハンカチ

*フィクションです


藍木が泣いていたのは、ファンをしていた人が過去に人を貶めていたから。


(そして次は、人を巻き込んで心中を……ん?)


「えっと?あ、あの、いいですか」


火流が手を挙げると、視線がそこに集まった。


「俺はあの、アレなので、間違ってるかもしれませんが。ライミさんが心中を企てたんですよね?遺書の内容的に」


「はい」藍木が答える。


「なんでポップさんは、それに乗ったんでしょう?罪を"償われる側"なのに」


「……それは……」


藍木は言葉に詰まった。


ポップはライミと違い、何か後ろめたい過去があるわけではなかった。

表舞台ではクールキャラを演じているが、裏では人並みに明るい、普通のアイドル。


「えーっと、あの、忘れてください……」


「いえ、すいません。私にはわからないけど、確かにそうですよね……」


「うーん。それは捜査一課の仕事ですね。それで、大丈夫そうですか?他に悩み事は」


林枯が微笑みながら訊くと、藍木はかぶりを振った。


「はい。多分、もう涙は出ないと思います。あなた達と話せて、頭がスッキリしました。あの、ありがとうございました」


藍木は丁寧に頭を下げた。

比べれば、号泣していた姿とはまるで違う。


三人は藍木をスタジオへと送った。


「そういえば、どうして私が泣いている理由が分かったんですか」


「あは……少し痛いとこ突かれたな。半分賭けだったんですよね。まず、あなたはポップちゃんを音田さんと呼んだでしょう。ファンをしているアイドルの相方に対し、よそよそしいなと思ったんです」


「あぁ、確かに」


「ポップちゃんが苦手なのかと思ったけど、そういうトーンじゃなかった。それで、モデルの賞の話になって、露骨に反応し始めたから____何かあると思って。遺書だな、と。ズバリ」


「へぇー刑事さんって、やっぱり頭がいいんですね」


褒められると、林枯はえへへと照れた。

ふっくらした頬に赤みが差す。


「……ライミちゃん、ほんとに明るい子だったんですけどね。最近はちょっと、炎上でピリピリしてたけど。私、激レアグッズのカバンとか、ハンカチも十個くらい持ってて____」


エレベーターに乗り込む前、ふと藍木が言った。

未練があるような言い方でも、その表情はどこか清々しかった。


その時。


「……ハンカチ?」


急に林枯が、低い声で呟いた。

火流と瀬古が、目線を向ける。


「えっ、は、はい」


「ライミちゃんのグッズってやっぱりオレンジ色が強いんですよね。なら、そのハンカチもですか」


林枯の勢いに、藍木は「は、はい」と答えた。

瀬古は眉をひそめて「おい」と声を掛けた。


「でも、あなたが今持ってるのは、それとは別じゃないですか?」


それは、藍木が持っている、黒い高級そうなハンカチの事だった。


「えっと、私、今朝からずっと泣いてるから、持ってたグッズハンカチ、三枚とも全部ぐちょぐちょになっちゃって。その時、ハンカチ貸してあげるよって、プロデューサーの山滝(やまたき)さんが____」


その瞬間、林枯は元々大きい瞳を更に大きくした。


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