17:みバレ
*フィクションです
壁時計を見ると、午前八時を差していた。
名取友太はパソコンに向き合ったまま、腕を伸ばしてストレッチをした。
最近は昼夜逆転生活をしているせいで、いつもどこか気怠い。
机の上に並んでいるミネラルウォーターのペットボトルを飲むと、またマウスに手を伸ばした。
パソコン画面には、黒い背景の上に、仮面が映っている。
字幕をつけて、仮面の口部分を動かして……。
最近やっと慣れてきたが、最初の頃はこの作業が大変だった。
昨日来たコメントがぼんやり思い出された。
青年(かな?)が、動画の編集が下手だと突っかかってきたのだ。
が、話を聞いてみれば、彼も動画を投稿していて、チャンネルが伸び悩んでいるのだという。
そこで名取が応援してやったら____青年は素直に、『ありがとうございます!』と返信してくれた。
(……たまにあぁいうことがあるから、ネットも捨てたもんじゃないんだよなぁ)
無機質な生活を過ごしていて、人の感情に過敏になっているのか。
名取はどこか、心の片隅でぽかぽかとあたたかい気持ちが浮かんでくるのを感じていた。
ふいに、もう一つの方が気になった。
これのために大学をやめた、本命。
二つあるうちの、もう片方のアイコンをクリックする。
"ナットランド"のチャンネル登録者は____昨日より一人、増えていた。
鼻息を少し荒くして、名取は急いでその人がつけたコメントを開いた。
最新の、古いノベルゲームをプレイした動画。
そこに。
『"仮面の化身"さんですよね?』
一瞬、心臓が止まった。
肺の空気が気管に詰まる。
「あっ、やっべっ」
しかしそれから数秒、名取はまずい事に気がついた。
このコメントの内容が誰かの目についたら、一気に拡散されるだろう。ネットや新聞で。
そうなったら、ニュースにも取り上げられ、このチャンネルは炎上するはずだ。
名取はそう思ったのだが、その動画のコメント、低評価数には、以前と何の変化もなかった。
「……」
名取はおそるおそる、文の続きを読んだ。




