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2話 召喚

 眩い光の中、まるで高い所から落下するような感覚を大宮は覚えた。

 光が収まり、大宮の目がようやく周りを見る事が出来るようになると、そこは教室とはかけ離れた場所だった。


 ざっと見た印象はリビングだ。少し離れた場所にテーブルと椅子があり、すぐ後ろには暖炉がある。

 そして何より目につくのは、真っ赤な紅葉のような髪色をした少女の姿だ。


「わ……成功しちゃった……!?」

「日本語……? ここはどこで、君は誰なんだ?」

「え、えっと! 私はルビー! ルビー・オリヴィエ!」


 わたわたする彼女からは敵意は感じない。勇者召喚の類に巻き込まれたのかとも思ったが、それならばもう少し厳格な空気があるだろう。


「俺は大宮。大宮仁。好きなように呼んでいいよ」

「えっと、じゃあジンで!」


 髪もそうだが彼女の瞳も綺麗な赤色だ。安直すぎるとも思うが、これは確かにルビーと名付けたくなる気持ちも分かる。


「ここはミテュール! 私が貴方の召喚士なの!」

「召喚なあ……実質拉致だったけど」

「拉致? その……良ければだけど、話聞かせてもらえないかな?」


 ルビーは明るい雰囲気だったが、大宮の言った拉致という単語を聞いた途端、少し青ざめた。


「そんな……」


 大宮が教室で起きた出来事を話すと、ルビーは完全に意気消沈していた。


「察するにルビーさんは知らなかったみたいだし、そんなに気を落とさなくていいよ。とりあえず元の世界に帰してもらえるかな?」

「それなんですけれども……ごめん。私には出来ないの」


 大宮は口元に強く手を当て、叫びたくなる衝動を抑え込む。


「ええと……それはどうして?」

「その……私が教えられたのは召喚の方法だけ。それもそんな強制的なものだとは……」

「知ってる限りの事、教えてもらってもいいかな?」

「じゃあ……まず一番大事なコレの事から」


 彼女がそう言いながら、握っていた手を開く。

 そこにあったのは綺麗な真っ赤なルビーだった。大きさは7センチほどの楕円形で、厚みは3センチほどだ。


「これが私とジンの契約の形。召喚石だとか召喚者の核って呼ばれてるみたい」

「召喚者の核って……心臓みたいだな」

「実際そう……いや、それよりも重要なものだよ」

「嫌な予感しかしないけど……どういう事?」

「これは私の命の形と、ジンの存在の形なの」

「ん……?」


 ふと頭の中にこれを砕けば彼女の死と引き換えに元いた世界へと帰れるのではないか、そんな考えがよぎる。


「これを砕けば……って思ったでしょ?」

「い、いやぁ?」

「いいんだよ、実際私がジンならそう思っただろうしさ。でも、それは多分しない方がいいよ」

「存在が砕け散って死体すら残らない……とか?」

「察しが良いんだね。私が聞いてる話だとそうなるってさ」


 帰る方法が無い事も考えないといけないかもしれない。

 どうにか冷静さを保とうとするが、思わず大宮の握る拳に力が入る。


「ところでさ、ジンの友達だけど、多分この世界にいると思う」

「それなら探しに行かないと……そうだ、変な事を聞くけど俺は何が出来るんだ?」


 我ながら変な質問だ、ルビーも少し首を傾げている。


「俺って別にこう……魔法が使えるとか、腕っぷしが強いわけじゃないんだ。もし召喚で何かしらの能力みたいなものが与えられてるならまだしも、そうじゃないなら雑魚同然だからさ」

「なるほど、ちょっと待ってね」


 そう言うと彼女はルビーを握り、その手を胸元へと当てて目を閉じた。

 彼女はすぐに目を開き、申し訳なさそうにもじもじしながら話し始める。


「あはは……私が未熟なせいか、ジンは武器を作る事しか出来ないみたい」

「作り方ってどうやるんだ?」

「出したい武器をイメージしてみて、後は感覚で分かると思う」


 力の差を埋める事が出来るような武器。大宮の中でそのイメージに当てはまるのは銃だ。

 気が付けば大宮の右手には黒い物体が現れていた。


「すげぇ……」


 それはずしりと重く、元の世界ではオートマチックピストルと呼ばれる武器だ。

 弾倉を確認してみると、金色に輝く薬莢に銅色の弾頭が見て取れた。

 大宮はエアガンでしか触った事が無かったが、幸い操作はエアガンのそれと同じようだ。


「何それ?」

「銃だよ。やっぱこっちだと武器って言うと……」


 ファンタジーでお馴染みのロングソードをイメージしてみると、左手にロングソードが何もない空間から左手に自然に握られるようにして現れた。


「あ、こっちは見た事ある」

「俺達の世界も元はこういうのが主流だったけど、時代が変わってな」


 銃から意識が外れたその時、右手にあった銃の重みが不意に感じられなくなった。

 どうやら武器を出し続けるにはある程度イメージし続ける必要があるようだ。


「どこか多少うるさくしても大丈夫な場所ってある?」

「それなら村の外に行こっか、訓練用のカカシとかもあるからさ!」


 大宮とルビーは庭へと移動しつつ、お互いの世界について情報交換をする事にした。

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