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12話 筋トレ2

 地獄のような筋トレ初日を終えた2人は、その後の自由時間にまともに動くだけの体力は残されていなかった。


「いやあ……これは……流石に私もキツいなあ」

「まぁルビーみたいな魔法タイプはあまりこういうトレーニングはしないですから」


 ルビーは流石に息が上がっていたが、ポニーは少し汗をかいている程度だ。

 いくら魔法使いだからと言っても、戦士かとツッコミを入れたくなるくらいには体力がある。と大宮は思ったが、そんなツッコミを入れる気力すら湧かなかった。


「大宮君……ご飯は……また今度でいい……かな」

「あぁ……それでいいよ……」

「2人とも情けないですよ。これじゃあすぐやられるですよ?」


 草原に大の字になって寝転ぶ2人をポニーが覗き込む。

 これがドワーフの種族によるタフさなのか、それとも彼女の努力の結晶なのかは分からないが、今の大宮には羨ましい限りのものだ。


「こういうの……治癒魔法とかで……何とかなんないのか?」

「それだと効果がかなり薄くなってしまうですよ。アイのご飯はもっと余裕が出てからです」


 それからというもの、ポニーによる徹底的な肉体強化期間が幕を開けた。


「いやあ……なんていうか軍隊みたいやな」

「実際それに近い扱いを受ける事になるんだけどね、君たちも僕たちも」


 大宮達のトレーニングを笹島とルイスが遠巻きに見守る。


「さて、ウチらも続きやらんとな」

「よし、始めようか」


 平原で向き合う笹島とルイスは、それぞれの得物を構える。

 笹島の目が据わり、ルイスも引き締まった表情で杖を構える。


「穿て!」


 ルイスは笹島へと魔法を放つ。

 手加減をされていないその一撃は、まともに当たれば簡単に人の命を奪う威力を持っている。


「だぁっ!」


 笹島はその一撃へと向かって右腕を大きく腕を振るい、その拳を魔法へと打ち付けた。

 籠手と魔法の大きな衝突音が響き、笹島によって殴られた魔法は軌道を変えて空へと打ち上げられた。


「もろたで!」

「そうはいかないさ!」


 一気に間合いを詰めようとする笹島の足元へと向かってルイスは魔法を放つ。

 先ほどの一撃に比べれば威力は劣るが、それでも脅威となる一撃だ。

 笹島は咄嗟にその場から飛び退き、その直後に魔法が地面を抉り取る。


 笹島は徐々に間合いを詰めようとするが、ルイスは魔法を撃ち続けながら詰められた分だけ間合いを取っている。

 このまま消耗戦に――。


「こいつでどうや!」

「なっ!」


 笹島は地面から石を拾い上げ、それをルイスへと向かって投げた。

 ただの投石だが、笹島の身体能力は常人のそれを遥かに超えている。弾丸のように放たれた石のつぶては一直線にルイスをめがけて飛翔する。


「くっ――!」


 ルイスはどうにか防御魔法をかけるが、それでも完全に威力を殺す事は出来ず、右前腕に命中した事もあってか杖を落としてしまう。


「もろたで!」


 その隙を笹島は見逃さず、ついに間合いを詰め切った彼女は渾身の一撃を加えるべく大きく腰を落とした。


「刃よ!」

「んなっ!?」


 ルイスの左腕が光ったかと思えば、そこには魔力で出来た剣が現れていた。

 笹島の拳がルイスを捉えるよりも速く、彼女の喉元にそれは突き付けられた。


「いやぁ、参ったで」

「まだ少し油断があるね。そこさえどうにかすればレイナはすごくいい召喚者になるさ」


 いつもは右手で髪をたくし上げているルイスだが、今日は左手でたくし上げている。

 笹島がよく見てみると、右腕が少し震えているようだった。


「その変にカッコつけんのさえどうにかなればええんやけどなあ」

「それは難しい注文だね、それはそうと忘れないうちに――」


 ルイスは笹島へと彼が気になった点を伝える。

 重心の移動や足さばき、咄嗟に石を投げる機転、チャンスに油断しきってしまう点、思っていた以上に細かく彼は笹島の動きについて分析している。


「大きな動きが悪いわけではないけれどもね、実際あそこで振り切られていれば相打ちになっただろうからね。まぁ僕個人としてはそういうのはあまり好きではないけれど」

「ま、動きが小さい方がええってのは喧嘩も一緒やしな、気ぃつけるわ。あと足の方もこんな感じのが欲しいとこやな」


 笹島は籠手を軽く叩く。


「僕の方から伝えておくよ、それじゃあ後は自由時間だ」

「言うてなんもする事あらへんねんけどな」


 そう言いながら、笹島は街の方へと歩き出した。

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