第1話 転生後の世界
三歳児だろうか。
公爵邸が所有する書庫にて、ある本を手に取り読書をしていた。
【1500年前。この星にある災厄が訪れた。
それは"天の決壊"と呼ばれている。
様々な説があるが、一番有力な説は、空から謎の物体が墜落したという説だ。
それにより世界各地に異形の怪物であるモンスターやゲート、ダンジョンが出現
し、世界は窮地に陥った。
その時に多くの種族が滅ぼされ、神話に名を轟かせた魔族もいたという。
人間の人口は急激に減少し、人類が保有する土地も五百分の一にまで縮小された。
現在の暦は『人魔暦』というものを使用している。
これというのは人類と魔物の本格的な抗争を起点としている。
その起点とは―――初代勇者の登場。
勇者の活躍により、人類は徐々に生存圏を広げていき、勇者登場より8世紀経った
今は大陸の約半分にまで拡大することに成功した。
だが私は思う。
人類の現勢力では魔物を全て掃討することは不可能である。
なぜなら、神より加護や祝福を与えられ、人知を凌駕した勇者が幾度も登場した。
だが、誰も最奥へとたどり着いたものはいない。
はたして我々、主要四種族には未来があるのか?
未来の若者、魔法師に期待するとしよう。
マルクス・ヘルハイム著『世界の歴史』より】
「ふぅ~」
俺は壮大な歴史に壮大な溜息を送った。
どうやら世界は随分と変貌したようだ。
ゲートやらダンジョンやら異形の怪物やら知らないものが出てくるし、
俺がいた時代は神話と呼ばれ、あれだけ強かった魔族は行方をくらました。
信じられないことだ。なんせ魔族は人類と呼ばれる奴らより強い。基本的にはな。
だが事実として魔族の話も聞かないし、あちこちで出かけても魔族の気配を近くでだが、感じることはなかった。
でも、必ずどこかに残存勢力はいるはずだ。
俺はそう確信している。
この事については色々と調査する必要がありそうだ。
でも時間もあるし、面倒だし、時に任せるとするか。
俺は本を元の場所へと戻し、書庫を後にした。
◆ ◆ ◆
コン コン コン
「……入っていいよ」
「では、失礼します」
入室の許可を出すと、使用人が一礼をし、入ってくる。
正確に言うと、彼女は使用人というより教師に近い。
「では、礼儀作法についての勉強を始めます」
開始早々、貴族定番の礼儀作法の授業が始まった。
俺の名前はシン・フォン・ヘルフォード。
ソードマスターが当主を務める公爵家の次男として生まれた。
正確には転生した。
俺には兄と姉がいる。
だが、彼等は俺が生まれると同時に次期当主として継承権を一時的に破棄した。
まるでこの機会を待っていたと言わんばかりに。
そのため俺は幼い頃からスパルタ教育を受けてきた。
一言でいえば後継者教育。
他人にとっては苦だろうが、俺にとっては朝飯前だ。
この礼儀作法もすぐにマスターしてみせるさ。
そうして、公爵家だけあって厳しい地獄の特訓が始まった。
注釈:
人類。俗称:人類種。正式名称、人系類似種族。
魔物以外の知的生命体という。もしくは敵対している種族。
その名の通りだが、人系類似種族なのでドラゴンや妖精などは違う。
簡単に言うと人間+亜人種。
主要四種族。
"天の決壊"後に生き残った"主"な種族。
人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族。




