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訪問 二

 侍女たちがパタパタと入ってきて、「お着替えなさいませ」「お部屋を整えさせて頂きますっ」などと慌てている。


 なんて強引なのお妃! こちらの都合お構いなしかよ。

 

 ルーカスによれば、フェリシアナ妃は王族ではないので、位的には王女である私よりずっと下だ。

 しかし、私がなんの後ろ盾も持たないぽっと出王女であるのに対し、妃は王子の生母かつ宰相の娘という、盤石の立場で王宮内の地位を築いているのだから無下にはできない。

 追い返したいけどねー。

 はぁ……。いずれ会わなきゃいけないのなら、とっとと済ませてしまうか。


 私はため息をつきながら、侍女たちに室内着を脱がされるに任せた。しかし……。


「こちらのドレスはいかがでしょう」


 そう侍女が取り出してきたドレスには絶対反対!! そんなフリルだらけのミノムシみたいなモン着れるか!


「私が昼間着てきたドレスを出して」


「……でも」


「あれ以外は着ないわ。衣装部屋(ここ)のドレスは私の趣味に合わないの。室内着はリラックスするために仕方なく着たけれどね」


「はい……」


 何か言いたげな侍女のマリアさんだけど、これは絶対に譲れないの。あんなもの着るなら麻袋の方がマシ。

 室内着だって相当抵抗があったのだ。着る者を馬鹿にしているとしか思えないアホらしい柄。でべそ柄ですよ? で・べ・そ柄!

 ウエストの締め付けがない服でごろ寝したかったから着たけどさ。


 前世は入院着ばかりだったけど、転生してからはママの拘りで毎日可愛く装っていたのだ。例え魚獲りや畑仕事の時でも髪を編み込んだり、綺麗な木の実や貝殻で作ったアクセサリーを着けたりして素敵に装ってきたのだぞ。服だってママのお手製でセンスの良いものばかり。だからこんなめちゃくちゃな服は美意識が許さないのだ。


 マダム・シビラのドレスと仮面を身につけて応接室に戻る。

 これ、どうやって迎えるのが正解なんだろう? 位は私が上、でも王宮内でフェリシアナ妃の力はかなり強いだろう。

 だからと言って無理矢理訪ねてきた下位の訪問者を、立って迎えるとかどうなの? 舐められたら嫌だな。こういうのって多分最初が肝心だよね!

 

 入学初日を思い出すわ。始めて研究所の外に出て健常者の学校に放り込まれ当然のごとくオドオドしていた私は、タチの悪いのに虐めのターゲットにされた。だから次は初日から睨みをガンガン効かす事にしたんだ。見た目がアレだったせいで怯えて泣き出す子もいたから、やりすぎたのかもしれないけど。そして陰で『魔女』とか恐れられるようになったけど。でも虐められるより全然マシだったしオッケーだ。


 私は一人がけのソファに座って彼女を待ち受けることにした。後ろにルーカスが立つ。お得意のイヤミも降ってこないしまあこれでいいんだろ。


 フェリシアナ妃かあ……私の伯父にあたるミゲル王子の生母だ。妃であって王妃ではない。黒髪紫眼でない彼女は、王族とはみなされないからだ。

 アマリア王女の死亡後早々に、王家の血を絶やすまいとフェリペ王にあてがわれたうら若き公爵令嬢。

 ゲームが始まる六年後時点でまだ三十代前半。ミゲル王子が十五歳だから、十五、六歳で出産かぁ。

 なんかすごいな……。だって娘の死後すぐに同年代の少女を娶ったって事でしょ? 王族の義務とは言えなんとも言えない気分になるし、公爵令嬢の側としてもなぁ。当時フェリペ王は四十歳前後。この世界の常識じゃあ、この程度の年の差はまあ()()なのかも知れないけれどさぁ。


 なぜ公爵令嬢が選ばれたかと言うと、王家の血がまあまあ濃い家柄だったから、王家の色彩を持つ子を産める可能性を考えてじゃない?

 フェリペ王には既に後宮に何人ものお妃がいたけれども、()()()()()のある子は産まれなかったからさ。

 フェリシアナ公爵令嬢には貴族には珍しい相思相愛の初恋の婚約者がいたとか。それを破談にして王様に嫁がされたってわけ。

 まあでも無事に王家の色彩を持つ王子を産めたわけだから、お国のためお家のため充分義務を果たせた……と言いたいところだけど、そこに王子より遥かに王家の色彩が濃い王女が帰ってきちゃった訳だ。

 心中穏やかじゃないよね? 多分。

 ゲームのヴィオレッタは彼女に何度も命を狙われていたけれど、この辺が理由なんじゃないかなと思う。

 何しに来たのか知らないけれど、決して好意的な態度ではないだろう。

 嫌味を言われるくらいなら全然良いけど、刺されたり毒を浴びせられたりしないだろうか? う……ちょっと心配だ。

 私は燃やされても死ななかったけど、ライオンに喰われた小指は未だ再生していないのだ。毒をかけられたら毒に蝕まれた状態で生きるのかもしれない。それはごめん被りたい。


「入っていただいて」


 侍女のララに扉を開けるよう頼む。しずしずと開いた扉から現れたのは……視覚の暴力だった。

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