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訪問 一

「馬鹿ですか?」


 美しく盛られた小さな前菜を咀嚼したあと、下僕はゴミを見る目でそう言い放った。


「そうかなー。けっこう良い案だと思ったんだけど」


 居室のテーブルに所狭しと料理が並んでいる。下僕と込み入った話がしたかったので、渋る侍従長に頼んで前菜からデザートまで全て並べて貰ったのだ。ちょこちょこ給仕されちゃあ、落ち着いて話もできないからね。

 侍女さん達にも下がって貰って、下僕と二人になれたので、さっきお風呂で思いついた計画を話してみたのだ。

 怪しまれずにごく自然に水牢に入れる、ナイスアイデアだと思うんだけどなー。


「王様に喧嘩を売って水牢にぶち込まれようなんて、よくそんな馬鹿げたことを思いつきましたね!?」


「だって他に方法ある? 衛兵がいるだろうから忍び込むのは無理だし、見学したいとか言うのも不自然でしょ? だったら自分から水牢にぶち込まれればいいじゃない? 私は水の中でも呼吸できるから満潮で水位が上がってきても平気だしさ」


「で、その後どうするんですか?」


「エル・クエロを召喚して飴をもらう」


「その後は?」


「ウアピを召喚して牢をぶち破る」


「物理で行くんですね」


「うん」


「この単細胞!!」


 ですよねー。まあ雑すぎる案だと言うのは分かってたんだけどさぁ。ちょっと疲れてるから投げやり気味なんだよ。

 

「殿下、忘れたんですか? マダム・シビラにした約束! 王宮で美形たちに会わせるって言っていたじゃないですか」


「はっ、そうだった。王宮で穏便に過ごさないと、攻略対象たちに会えないじゃないの」


「なんですか攻略対象って?」


「うん、こっちのことよ。でもあんたの言う通りだね。マダムとの約束を守りたいなら、王様挑発したり牢破りするのは得策じゃないわ」


「シンマス・モレノの居場所も未だ不明ですしね。妙なことは考えないでくださいよ」


「はいはい」


 私は行儀悪くダラーっと長椅子に寝そべりながらマカロンを摘んだ。少し冷めてしまった紅茶も啜る。

 晩餐は豪華で多分美味しいのだろうけど、食べる気がわかない。


 最初は飴の食べ過ぎかなー? と思っていたのだけど、王宮ってあのミルクの粉の匂いがするんだよね。

 色々と目まぐるしかったから後回しにしていたんだけどね。なんか不思議なんだよね。空腹も感じないし、身体に力が満ちてくる感じがするんだ。

 ウアピの過去やエル・クエロの話から想像するに、魔の泉とやらが近いのかな? 封印されていると聞いているけれど、どこからか漏れているのかもしれない。


 せっかく豪華な食事を作って貰ったのに残すのは悪いなと思っていたら、ルーカスが軽々と平らげてくれたので良かった。やっぱり相当お腹が空いていたみたいだ。

 暇なので攻略対象の事などを考えてみる。えと、全部で何人いたっけな。

 一人目はさっきあったフリオくん。伯爵令息で将来の天才剣士、腹黒わんこ。

 二人目はミゲル王子。今のところ名前くらいしか思い出せない。

 三人目は年上キャラで……茶色の髪と瞳の騎士だったような。確か学園の教師で体術とかの達人だったような……好みのイケメンのはずだったのに顔が思い出せないぞ。


そのとき、コンコンと部屋の扉がノックされて、年嵩の女官らしき人物の声がした。


「何用ですか。殿下はまだお食事中ですよ」


 ルーカスが眉間に皺を寄せて応答する。


「フェリシアナ妃が至急お会いしたいと」


 妃が会いに来いって言ってるんかー。

 急に現れた訳のわからん娘に、とりあえず睨み効かせとこっ、てとこかな。

 ぜったいめんどくさいやつじゃん。断ろう。

 

 ルーカスに目顔で伝える。


「王女殿下は大変お疲れで、体調も優れません。またの機会にして頂けませんか?」


「ではわたくしが直接訪いましょう」


「へ?」


 思わず間抜けな声が出る。今のってまさかフェリシアナ妃? なに直接来てんの?


 

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