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王女の帰還 二

「フリオ!」


 そう! フリオだった! って今叫んだのは誰? 思わず私の心の声が出ちゃったのかと思ったけど、聞こえたのは野太い男の声だ。


「なぜお前が案内役なのだ! まだ侍従見習いのお前が出る幕ではない。他の者はどうした?」


「ふふふ。ヘラルド兄さんに見つかっちゃった。せんぱいたちには引っ込んでもらったよ。王女でんかのごきかんだなんて、じっとしていられない。この間の子も、ぼくがルビーの間にあんないしたんだし」


 おう……この年にして既に腹黒感かすごい。『引っ込んでもらった』って怖い。『この間の子』って、去年王女を騙って処刑された女の子のことかな? 闇をかんじる。

 そっかー、フリオとヘラルドさんって兄弟だったか。フリオは確か近衛師団長の弟だったよね。じゃあゲームが始まる六年後には、このヘラルドさんは第二近衛師団長から近衛総師団長に出世してるってことだね。

 そして近衛総師団長は、ラスボスとして正体を現し始めたヴィオレッタ王女に殺されるんだっけ……あわわ。

 兄を殺された憎しみとセシリアへの想いを糧に、フリオは天才剣士として覚醒するんでした。ぎゃー!

 将来私たちは仇同士になるのね?! いやならんけど、そうなる前に王宮からトンズラする予定だけども!


「殿下の御前だぞ、口を慎めフリオ。お疲れでいらっしゃるのだ、さっさと案内しろ」


 苦々しげにルーカスが言う。どうやらフリオが嫌いみたいだ。完全に顔に出ていて大人気ない。

 それからくるりと私に向き直る。


「殿下。この者はそこの近衛第二師団長の弟で、怪しい者ではありません。侍従見習いの案内など業腹ですが、時間が惜しいのでこのまま行きましょう」



「……それでは、ぼくがごあんないいたします。こちらへどうぞ。まじゅつしだんちょう、さいわい夏だから水はあたたかいと思いますよ。よかったですね」


 そう言いながらフリオは私に一礼して前を歩き出した。

 わーこの子すごい。お前偽物王女と一緒に水牢に入れられるぞって言ってるんだよね。まだ十歳くらいなのに真っ黒な性格だこと!

 思わずルーカスの顔を伺うと、見たこともないくらい眉間に皺が寄っていて、口は見事にへの字になっていた。


「ウフフッ」


 あ、思わず笑い声が漏れちゃった。

 すると、なぜか驚いたようにフリオが私を振り向いた。

 大きなエメラルドの瞳が、マスクに覆われた私の顔を一瞬捉える。


 そのまま正門の一歩手前でぴたりと歩みを止めた彼は、咎めるようにルーカスを眺めた。


「この方は知っているのですか? 王家といつわれば死罪になることを。まじゅつしだんちょう、あなたが何をたくらんでいるか知らないが、何も知らない子をまきこむのは許されません。おじょうさん、」


 そう言いながら彼は私の瞳をひたと見つめながら続けた。


「この門から一歩でも入れば、もう後もどりはできません。この男にだまされているのなら、今すぐにでも助けを求めなさい。王家の色を身につけるのは死罪ですが、だまされたり、むりやり連れてこられたなら罪もかるくしてもらえるかもしれません。ぼくも協力するから」

 

 んーー? フリオったら、なぜか知らないけれど、私がルーカスに騙されてるって思っているの? そして助けてあげるって言ってくれている。


 そうだった。フリオってワンコと見せかけて腹黒、腹黒と見せかけて良い奴っていう奥が深いキャラだったわ。

 腹黒なんだけど根は公平で、正義感溢れる人物なんだよね。伏魔殿みたいな王宮に出入りして色々と悲しい体験をしたせいで、ただの可愛い系ワンコでいられなくなってしまった過去があるのよね。

 それに、彼には何か特技があったような……。さっき私の笑い声を聞いてハッとしていたよね。声……そうだ、フリオは声色でその人の性格や想いが分かってしまうっていう性質を持っていたっけ。

 宮廷で生き抜くために、賢い彼はそれを公にはしていないんだけどね。

 私の笑い声を聞いた彼が何を感じて、どう判断したのかは分からないけれど、こうして助けてくれようとしてくれるのは素直にありがたい。

 いい子だ。


「優しいのね、ありがとう。でも私は騙されてはいないわ。大丈夫だから、お部屋に案内してくださる?」


 私はマスクの下でにこやかに微笑みながら言った。

 にこやかにっていうか普通にニヤニヤがとまらんのだけどね。

 いやー、思い出してきたわ! ヴィオレッタ王女やセシリアちゃんと違って、攻略対象たちの記憶はなかなか戻ってこなかったんだけどさ。

 そういえばフリオは一推しじゃないけどかなりお気に入りのキャラだったわ。

 ママの様子を見るためだけにここまでやってきたわけだけど、まさか推しキャラに会えるとはね! もしかしたら他のキャラにも会えたりして!

 うん、俄然楽しくなってきたぞ。


 フリオくんは私のワクワクを感じたのか、怪訝な顔をした。けれど「本当に良いのですね」と言って諦めたようにため息をついて歩きだす。

 

 最初はママを探したらトンズラする予定だったけど、ちょっとだけ他の攻略対象や、気になっていたモブさんたちを探しても良いかもしれない。宮殿の中も探検してみたいし。何たって前世で憧れたゲームの世界だもん。

 ここから逃げ出したら二度と戻らないんだし、今のうちによーく気が済むまで見ておかなくちゃね。


 よし! さっさと本物の王女であることを確かめてもらって、それからママ探し! それが終わったら攻略対象とかを探しに行くぞ〜! えいえいおー!


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