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王宮へ 三

 魂を媒介にすればヒトでも魔法が使えるよ、とルーカスに言ったところ、思い切り眉を顰めて『怖気が立つ』と言われた。

 まあまともな感覚だよね。前世とちがい、この世界のヒトたちは『魂』と言うものを明確に意識している感じだし。その生き物の核心というか、最も本質的な物としてね。

 本当のところは分からないと思うけどなぁ。魂のない人魚たちはまた違う捉え方をしていたし。


 エル・クエロによれば魔法を使えば使うほど魂がすり減るらしい。『白夜』常時発動に比べれば微々たるものなのだろうけど、魔法の使いすぎには注意しろと言われたな。

 何よりその神精領域とやらと魂が、この肉体から遠くに引き離された状態っていうのが気持ち悪いよね。今頃人魚たちの手に落ちているのだろうか。人質ならぬ魂質だな。

 そして物理的には遠くに引き離されているのに、魂に刻まれた体験は魔法として使えるって不思議。

 隔魂術……魂を隔てる術? 肉体から魂を隔てるのかな。完全に肉体から離断すると肉体は死んで、魂はどこか遠くの場所に行ってしまうんだよね。そうなると困るから間に魔法具を入れて()()()。メガラニアでは安価な魔石を使っていたんだってさ。

 

「ところで下僕、王宮のどの門に行けばいいのか教えてよ」


「正面の門でいいのでは? しかし……翼蛇は神獣と聞いていたんですが、ご主人様の言うことを聞くと言うことは魔物なんですかね? 魔物である魚龍やイルカたちは人魚たちに使役されていましたし」


「さあ? 人魚が使役できるのは海の魔物だけらしいよ。それに、そもそも何をもって魔物とか神獣とか言うのか分からないな。翼蛇が言うことを聞いてくれるのは、封印を解いたお礼のつもりじゃない? それに餌と厩の話もしたし。それより翼蛇(この子)で正門に乗りつけるとか目立ちすぎじゃない? ちょっと手前で降りて裏門あたりまで歩いて行った方がいいかな」


「いや、広場であれだけ目立ってたらもう遅いのでは……。それにまあ、ご主人様は目立った方が良いですよ。目立って衆目の目に触れれば、王宮内でこっそり消される心配も減りますからね」


「消されるとか王宮物騒すぎじゃない!? 仮にも王女だよー私」


「普通じゃないですか? アマリア王女が亡くなりご主人様が捨てられた後、王と側妃との間に待望の王子がお生まれになったのはご存知ですね? 薄いとはいえ王家の色彩も持っていて優秀なお方ですから、数年内に立太子されると言われています。今更平民筋で行方不明だった王女がのこのこ現れるなんて、私は不穏な予感しかしませんがね」


 あー、そっかミゲル王子がいたなー。私の祖父にあたるフェリペ王と側妃の間の子だから、私の産みの母であるアマリア王女の腹違いの弟……つまり私の叔父になるのか。年下の叔父。でもゲームでは立太子どころか、王位継承権第二位だったぞ。ちなみに一位はヴィオレッタ王女だった。理由は王家の色彩である黒髪紫目が、ヴィオレッタ王女の方が濃く現れているから。

 ミゲル王子は黒髪というよりも灰色の髪で、瞳も薄めの紫なんだよね。『白夜』の大きさや強固さは王家の色彩の濃さに比例するってことで、王家では産まれた順番とかよりも色彩の濃さが重要視されるんだよなー。

 はぁーこれは、私が王女として生きていくなら一悶着も二悶着もありそうだな。王子の母親のフェリシアナ妃がまた癖が強い人で、ヴィオレッタを目の敵にしていた覚えがあるぞ。

 

 ん? ルーカスが私を襲ってきたのも、もしかしてフェリシアナ妃の差金ってこともあり得るかな。


「ねえ下僕、あんたが私を殺そうとしたのってさぁ、その側妃の命令だったの?」


「は? 違いますよ。私の一存です」


「一存で王族殺そうとするとか、あんた頭おかしいから! 聖結界張れる王族がいなけりゃこの国詰むんでしょ? 人魚もびっくりしてたよ」


「は! 私はこの国とかどうでも良いですからな。我が一族を処刑し幼き私をあんな目に……。むしろ滅んでしまえば良いのだ」


「……この国はなんでこんな危険人物を要職につけてんのかな」


 ま、私はママの無事さえ確保できたら、さっさとこんなところトンズラするけどね。王女の身分なんて興味ないし、ゲームのヴィオレッタ王女って散々殺されかけてるんだよね。毒を盛られたり魔術の暴発とやらに巻き込まれたり。そんな目に会うのはゴメンだよ。

 あ、でもマダム・シビラとの約束は守らないとね!

 

 そんなことをつらつら考えているうちに、もう王宮に着いてしまった。

 遠くから見ても壮麗な建物だったけど、こうして近くで見ると圧巻だ。

 しばし宮殿上空を旋回して宮殿を観察してみる。

 

 湾に面した広大な広場はモノトーンの市松模様で埋め尽くされ、海から引いた一本の水路がその中心を貫いていた。

 アーチを描く美しい正門は金で彩られ、その奥には水色とクリーム色を基調とし、随所に彫刻が飾られた宮殿が鎮座している。

 海からの水路は宮殿の正面で澄んだ池に姿を変え、水の面にもう一つの宮殿を映している。潮の干満に合わせて水位を変えるこの池には趣向が凝らされ、時間ごとに美しい噴水が立ち現れるのだそうだ。

 本殿の裏側には広大な庭園があり、その中心に立っているのが聖灯台だ。

 宮殿の西側は市街地だが、宮殿の東側は大きく湾曲した海岸線に沿って城壁が築かれている。ルーカスによれば例の水牢は、海に張り出すように建てられた灰色の建物の地下にあるらしい。本殿と渡り廊下で繋がっているのが見て取れるが、美しい本殿とはかけ離れた無骨な塔だった。


「エル・クエロはあの塔にある水牢に行けって言っていたね。そこに棲んでいる人に会えって。」


「ああ、はい。でも何かの間違いじゃないですか? 満潮時には水牢は完全に水没しますから人が住むのは無理ですよ」


「うん……とにかくタイミングを見て行ってみないとね」


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