第一話 美里の恋バナ?
楓ちゃんの熱がなかなか下がらない。
一旦昼に下がったかと思ったら、またその日の夕方にぶり返してくる日が続き、病院にも何度も通った。
だが、原因は疲労から来るものなので、十分に休んで治すしかないとのことだった。
みんな心配している。しかし、薬を飲みながら栄養のある物を食べて休養するしかないのが歯がゆい。
もちろん、体調は良くなってきているので普通のご飯が食べれるようになったり、動けるようになりつつはあるが、少しでも無理すると熱が急激に上がって来ていたりする。
お医者さんは今まで体に蓄積されていたダメージが風邪で体のバランスが崩れたことによって噴出してきたのだろうとの見立てだった。
確かに楓ちゃんはこのところものすごい勢いで頑張っていたしな。学園祭の準備に加え、ルイジでのバイト。それが終わってから夜な夜な勉強といったスケジュールだった。
俺なら多分どこかでダウンしているか、音を上げているだろう。
「楓ちゃん、今日の調子はどうだい?」
「うん、今日も朝は元気、熱も微熱。これなら明日の学園祭の準備日には学校に行けそう。」
「そうだね。今日一日で治しきろう。」
「がんばる。美里から毎日電話してもらってきているけど、やっぱり自分で確認したいことがたくさんある。」
「もう明後日だもんね。」
「だから、何としても今日でおしまいにしなきゃ。」
そんなことを朝、楓ちゃんを起こしに行ったら会話していた。
そして、朝ごはんの時には茉莉ちゃんといのり君にお願いしていた。
「お姉ちゃん、いのりん。今日で体調不良を直し切りたいから、ごはんはたくさん、栄養満点なのをお願い。」
「わかった。お昼ごはんは栄養の摂れて、消化のいいものにするね。」
「うん、今日の夜ごはんは力の付くものにするヨ!」
「お願い。」
「カレン、また体のなまりや体力維持に出来る簡単なストレッチをしたいから教えて。」
「ええ、いいわよ。体調がいい時に声を掛けてちょうだいな。」
カレンにもストレッチを見て欲しいとお願いしている。
朝から楓ちゃんはフル回転だ。頭は完全に動くのに体の調子がついて来ていないと言ったところだろう。
もうここまで来たら、藁にも縋る想いで、出来ることをやっていくしかない。
だが、俺はあんまり楓ちゃんの力になれそうにないな。
何か楓ちゃんを元気にすることをしてあげることが出来ない。
それが悔しかった。
「和にい、そんな悔しそうな顔をしないで。」
「そうだよ、大木さんはドンと構えて、楓ちゃんの傍にいてあげることが一番。」
「そうよ。みんな貴方が傍にいてくれたから心細くなかったし、早く治したいって思えたのよ。」
「うん、和にーちゃんは居てくれるだけでいい。それが何よりのお薬。だから、いろんなことを頑張ろうって思える。」
「そっか、なら今日一日は楓ちゃんにくっついていないとね。」
「うん! お願い。」
満面の笑みで応じてくれる楓ちゃん。
今日で何が何でも治しきれるよう、微力ながら俺も手伝てあげなきゃ。
みんなが通学した後、俺は楓ちゃんと二人っきりになったので立花さんから聞いている学校の勉強の遅れの分の学習をしている楓ちゃんの質問に答えたり、いのり君から追加でもらったオイルを塗ってあげたりしていた。
「和にーちゃん。今日は調子がいい。いつもならこれくらいの時間に一度熱が上がって来るけれども、それがない。」
お昼前、楓ちゃんが一息つくついでに体温を測って教えてくれる。いつもなら大体この時間くらいに微熱から少し高めの熱になり、薬を飲んだら落ち着くと言った様子だった。
今日はなんだかいい感じに進んできている。これは期待できるかもしれない。
「おお、良かったね。期待しすぎるのはいけないけど、この調子なら明日の準備日には登校できそうだね。」
「うん、これもみんなのおかげ。治ったら一杯お礼を言わなきゃ。」
「そうだね。でも一番のお礼は学園祭でみんなを元気にもてなしてあげることだと思うよ?
あれだけ頑張っている楓ちゃんをみんなも見ているからね。元気になって学園祭の出し物を成功させてくれることが一番
だよ。」
「わかってる。いっぱいおもてなしする。もちろん和にーちゃんには一番いっぱいおもてなしさせてもらう。」
「そっか、期待して待っているよ。早く俺も学園祭の日にならないか期待しちゃうな。」
「ふふ、そうだね。期待して。」
そう言ってメイドのようなお辞儀の真似をしてみる楓ちゃん。
しかし、一体どうしてそんなことを学んだんだろうか?
啓介の店はそんな感じの接客はしていないはずだ。
「? どうかした?」
「ああ、ちょっとさっきの仕草はどこで覚えたのかなって、思ってね。」
「それはジョーに美里が教えてもらった。」
「へ?」
立花さんが常見から教えてもらっていたらしい。
たしかに衣装は常見の店のイベントで使っているものを借りているのは知っているけれど、そこまであの二人に深い接点があったとは思えない。
俺はてっきり楓ちゃんから誰かを介してお願いしているものだと思っていたが、直接やり取りしているそうだ。意外な組み合わせ、でもないか。
そんなことを思っていると、それを勘付いた楓ちゃんが教えてくれた。
「前にご飯行った時に連絡先を交換していた。それでやり取りをしているうちに仲良くなったみたい。
二人とも似た性格だから、すぐに馬があったみたい。
何回か一緒にデートもしているみたい。」
「お、おう。」
常見、お前未成年に手を出してくれるなよ?
お前が自分で建てた誓いを破ったら元も子もない。
そこは理解しての付き合いだろうが、あの二人の爆発力が生み出すシナジー効果を考えるといろいろと恐ろしいものがある。絶対トラブルを引き起こすぞ・・・。
嫌な光景を想像して身震いする。
「和にーちゃん、そこは大丈夫。基本美里のパパが同伴でお仕事の話に美里が付き合っているみたいな感じだから。」
「ならいいけど、あの二人は確かに似ているからね。何かの間違いで大きなトラブルを起こしたら、火の粉が掛かりそうで怖いなと思って。」
「私もそう思う。だから美里のパパがくっついている。
多分、みんな同じことを考えていると思う。」
だよね。
あの二人が引き起こしたトラブルは数知れず、反面、莫大な利益をもたらすことも多々あるので強くは言えないのが現状といったところか。
しかし、あの二人がいい雰囲気みたいだとは露にも思わなかったな。
そんなこと常見から一言も聞いていなかったぞ?
「それは、和にーちゃんが知ったら絶対に止めると思ってこっそりしていたんじゃないかな。
私も知ったのはつい最近だったし。」
楓ちゃんがまたも俺の思考を先読みして教えてくれる。
う~ん、なんだか人の恋バナを聞いて、モヤモヤとするのはなんでだろう。
間違いなくあの二人がトラブルメーカーで主な被害先で、それが更なる相乗効果を生み出すとかを考えちゃうからかなぁ?
頼むから本当に付き合ったりしないでくれよ? 俺の胃に穴が開く・・・。
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