girls side カレン②
これで第三章は終わりです。
和樹の家に住むことになった翌日、彼に家具を揃えに連れて行ってもらえることになった。
その時に彼に仕事について聞いてみた。
何と宝くじに当たったというのだ、それも巨額の。
アメリカでもそういう事があるし、額も大きい。
それゆえにTVに名乗り出て有名になり身を破滅させるといったことが多い。
しかし、日本はそういう事がないので安心して私に話している。
よく信頼されたものだなと思う。私が悪人だったらどうするんだろう?
頭が切れそうだが、善人過ぎる。
そんな彼にその強運を少し分けてくれといったら、彼から思いもよらない答えが返ってきた。
奥さんに先立たれてしまったと。
宝くじに当たっても事情は違えど不幸になる人間がいるということを目の当たりにした。
私も気が付くべきだったのだと思う。ところどころに世界各地で撮った同じ女性の写真が飾られていたし、他の女の子たちが彼に安心を置いているのはそう言う事情があったことを。
それから家具を揃えて、寿司を食べさせてもらいながら話をした。
彼はいろいろなことを知っているし、考え方が国際的だ。
本人は世界一周クルーズに行ったからとは言っていたが、間違いなくもとから持っている人格による知性だ。
それを誇ることもなく、単純な事象として当たり前に話すことが出来る彼に好感を持った。
その後、しばらくは和樹に手伝ってもらいながらビジネスの準備をして他の準備が整うのを待っていた。
ポールが届いた折に彼らにポールダンスを見せたら、とても感動してくれていた。
ついでに試しにやってみてもらった。
茉莉は、頑張れば何とか。
楓は、相当頑張れば・・・。いや、無理ね。
いのりはさすがに白人の血が入っているからか難なく・・・。いえ、調子に乗らなければね。
そしてようやく準備が整ったので保険証を受け取り、大学での手続きと検査を行うことにした。
大学では必要な手続きと交換条件である相談会の話をしてから、茉莉との待ち合わせまで時間があるので図書館に行ってみた。あちらほど大きくはないが英語の蔵書も揃っている。
私はいくつか必要な本を借りた。
お昼になって茉莉とその友達の百合子がやってきた。
彼女は経済学部の学生なので、いろいろと講義の話を聞かせてくれた。
それになんと彼女も同じ病院にリハビリに通っているとのことだった。
私と同じで靭帯を損傷していて、手術をして最後のリハビリ中だった。
彼女から話を少し聞かせてもらうがやはり道のりは長く厳しい。
それでも百合子は運がよく元通りに近い感覚まで持ち直してきたと言っていた。
ドクターからは想像していた通りの答えが返ってきた。
百合子は出来ていた。私だって望みに掛けられる!!
様々な恐怖が心の奥底を支配してくる。
私はおくびにも出さず即答した。強気に振舞って自分を鼓舞するんだ。
そうしなければ逃げ出していたかもしれなかったから。
今日は歓迎会だ。みんなが私を歓迎してくれていた。
いのりはジョーと和樹が出資をして友人の啓介が経営するレストランに就職が決まっている。
それも啓介はかなり有名な料理人らしいが、その彼が直々に指名するほどの腕前らしい。
ジョーやみんなで何度か利用させてもらっているが常に行列ができる繁盛店でかなりおいしい。
出資者の特権で待ち時間無しかつ、特別な格上のメニューがしばし並んで舌鼓を打っている。
そんな彼女が作る和食などもかなりのものだった。
お酒もかなりおいしいものが出ていた。私もいのりもついつい飲んでしまっていた。和樹はほどほどに飲みながら、温かく私達を見守りながら飲んでいた。
何だかんだでみんなと気が合うらしい。いろいろお話しをしたりゲームをしたりして楽しんだ。
そうしているうちに酔いつぶれて眠ってしまった。
気が付いたら隣でいのりがいびきをかいて眠っていた。誰かがブランケットを掛けてくれていたようだ。
少し二日酔いだ頭がもうろうとする。いのりしかいなくなった静かな部屋だ。
なんだかこんなに歓迎されていいのかっていう気持ちがフッと心を過ってから様々な不安が心の中を支配した。
私はいつもこうだ強気で、それを通そうとするけど誰もいなくなると急にマイナスのプレッシャーが襲い掛かってくる。
そんな時は一人で実家のガレージの車のボンネットに転がって泣いていた。
ふと、外を見てみるとガレージが目に入り、傍にあった飲みかけのワインボトルを持ってガレージに向かっていた。
ボンネットに転がってから泣き始めるのは直ぐだった。今まで我慢してきた糸が切れたんだと思う。
何もしなくても涙があふれて止まらない。
そうしていると急に声を掛けられた。
和樹だった。シャワーを浴びてきていたのか髪が濡れていた。
彼は私を心配そうな顔で見つめ、相談に乗ってくれると言ってきてくれた。
ついつい私は甘えたくなって、話を聞いてもらうことにした。
お酒の力なのか、彼の雰囲気がそうさせるのかわからなかったが、だんだんと感情の制御が利かない。
全てを彼にぶつけていた。
そして、彼は受け止めていてくれた。
でも、彼の回答は私が期待していたものとは違った。
「いいじゃん、それで。
不安のない人間の方が俺は信用できないよ。後はそれをどう乗り越えていくかだけだ。」
私は感情が制御できないありったけの睨み顔を彼に向けた。
でも彼は亡くなった奥さんの話をしてくれた。
期待して外れて、怖くて怖くて仕方がない死にたいくらいの恐怖に打ち勝った術を。
私は聞いているうちに憑き物が落ちていったのだと思う。
和樹の奥さんのように図太い神経はないかもしれないが、亜咲さんのようにありたいと思った。
もし、亜咲さんが見てくれているのならば力を貸してほしいと縋りたかった。
彼が帰っていこうとしたとき思わず後ろから抱き留めてしまっていた。
彼の大きさに多分亜咲さん、茉莉、楓、いのりも救われてきたんだと思う。そして、私も。
もちろん、彼女たちと同じで一人の男性としてしか見られなくなっていく自分がいた。
たとえ叶わない想いでも、今この時は私を抱き留めてすべてを受け止めて欲しいと心から思った。
それは甘えだ。それも甘美で抗えない背徳の味を持った。
私は知ってしまったのだ。禁断の果実を口にしたアダムとイブのように。
もう抗えない。成すがままに、思うがままに、すべてをさらけ出そう。
許されるなら、彼が受け入れてくれている限り・・・。
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これから夏の話になっていきます。
少々お待ちください。




