第一話 風邪をひきました。
第二章開始です。
綾瀬君が啓介を尋ねた翌日、彼女を連れてミニバンで買い出しに行く。
彼女はスマホと、親の手掛かりのバック、啓介からもらった調理用具しかない。
あとは茉莉ちゃんが急場凌ぎに買ってきたてくれた下着くらいだ。
今着ている服はサイズが近い茉莉ちゃんの服を借りている。
「大木さん、すまないねー。
そこら辺の量販店の最安値でいいんだよ?」
「ああ、値段は気にしなくていいよ。大型家具は茉莉ちゃん、楓ちゃんたちとの部屋と同じものを注文しているし、今日はそれ以外の物を買いに行くんだ。必要と思ったものを買ってくれればいいよ。
なに、お金だけはあるから、必要なものに糸目はつけなくていいよ。」
「ごめんね。ありがと!大木さん。
さすがに大金持ちは気持ちがいいね!」
そんな話をしながらいつもの家具屋に向かう。
だが、なんだか体が気持ち温かい気がする・・・。
俺たちは近くのショッピングモールで最低限の服とか化粧品などを揃えてから、いつもの家具屋で買い物をしたが綾瀬君はラグと棚を買うくらいだった。
ベッドとデスクに本棚、鏡台は俺があらかじめ注文しておいた。
「わたし、あんまりこういうのに慣れていなくて、必要最低限があれば満足だよ?。」
彼女はカラトリーや調理器具のコーナーへ向かう。
「それよりも大木さん、カラトリーや調理道具を買っていい?」
「・・・ああ、俺は料理のことは綾瀬君ほどわからないからな、必要だと思うものを取っていってくれ・・・。」
体がだるく重たくなってくる。
しまった、風邪をひいたみたいだ・・・。
多分綾瀬君の火事の現場に駆け付ける時にオープンカーでかっ飛ばしたからだろう。
しんどくなってきたので、俺は近くにあるベンチに座って俯いて座る。
「大木さんっ!どうしたの!?大丈夫?」
俺の様子に気が付いた綾瀬君が慌てて駆け寄ってくる。
「いや・・・。だいじょうぶ。ちょっと休めば治るよ・・・。」
「そんなことないよ!」
綾瀬君は俺の額に手を当ててくる。
「大木さん、すごい熱だよ?直ぐ帰ろう!!」
「いや、綾瀬君の買い物が済んだらでいい。
すまないけど、俺は車に戻っているから、残りの必要なものを買ったら車に来てくれるかい?」
「・・・うん。直ぐに買って来るから!早く車に戻って後ろの席で横になっていて!」
俺はヨロヨロと車に戻り、真ん中の座席をフルフラットにして腕を抱いてうずくまる。
寒気が段々としてきた。
これは久しぶりにやってしまった気がする。
何とか頑張って荷物置きに置いてあるブランケットを取り出して包まる。
それからすぐに綾瀬君が走って大荷物をカートで運んでくる。
後部ハッチに投げつけるように急いで放り込み、俺のところにやってくる。
「大木さん、運転大丈夫?」
「なんとか・・・。」
俺は起き上がろうとすると、よろけてしまう。
「何とかじゃないよ!!わたしが運転して帰るから。いい?
ちゃんと免許は持っているし、里奈さんのお店のワンボックスをケータリングで運転しているから大丈夫だよ!」
「・・・。お願いできるかな。ごめんね。」
「気にしないで。早く帰ってお布団に入ろう。」
綾瀬君は帰り際に買ってきてくれたスポーツドリンクを手渡してから運転席に座り、車を発進させる。
気を遣って、ゆっくりと急いでくれているようだ。
家について綾瀬君に言われるがまま居室に入れられ布団の中に入った。
「大木さん、食欲は?」
「あんまり・・・。」
「でも、食べられない訳じゃないよね?
直ぐにお昼のお粥を作ってくるから、休んでいて。」
綾瀬君はキッチンに行ってしまう。
人がいる家にいるとこういう時は無性に淋しくなる。
そう思っているうちに俺は意識を手放した。
「・・・。」
「目を醒ました?和にい。」
目を醒ますと茉莉ちゃんがいた。
とても心配そうな顔で見つめてくる。
「和にい、心配したよぉ!
いのりちゃんからメッセージをもらって、オリエンテーションが終わってすぐに帰ってきたんだよ。」
「そうか、ありがとう・・・。」
「そうだよ。茉莉ちゃん血相を変えて、自分の姿なんてなりふり構わずに走って帰ってきたんだから。」
綾瀬君が小鍋に入ったお粥を持ってきてくれる。
顔を赤くする茉莉ちゃんの隣にやってきて、サイドテーブルにお粥を置いてから、俺を起こしてくれる。
「いのりちゃん!!それは・・・」
「はい、茉莉ちゃんは髪の毛と、顔を見てみようねー。」
茉莉ちゃんは俺の部屋にある鏡で自分の姿を見てさらに顔を赤くする。
そりゃ、髪の毛は汗でべたついて、うっすらと施してあるメイクがにじんでいる。
女の子にとってはすごく恥ずかしいかもしれない。
「いや、気にしないよ。
それを言い始めたら、俺なんて汗だくだよ・・・。」
「和にいはいいの。寝ている間にお熱を測ったら、ものすごく高かったんだから!」
「まあ、病人だしねー。
でも、それだけ茉莉ちゃんも必死だったんだよ。心配で心配でたまらなかったんだよね?」
「うん、和にいにもしものことがあったら私、生きていけないよ。もう・・・。」
「二人ともありがとう・・・。でも、風邪を移したらいけないから。出て行った方がいいよ・・・。」
「いや。ちゃんと私達で和にいのお世話をするの。私達に少しは頼ってよ。」
「そうだぞー。こういう時はわたしたちに思いっきり甘えていいんだぞ!
お姉さんサービスしちゃうゾ!!」
綾瀬君は冗談を言ってくる。
そうこうしながら俺は綾瀬君の作ってくれたお粥を食べる。
出汁が丁寧に取られ、お米も食べやすいくらいに煮込まれ、温度も丁度良い。
体に染みわたってくる。
「おいしい・・・。」
「なら、良かったよ。取り合えずわたしは今日の片付けをしてくるね。
お昼からは茉莉ちゃんが見てくれるヨ。」
「すまないな。買い物の時に・・・。」
「ううん、多分、火事にあった時に引いたんだと思うから。わたしが謝らなきゃ。ごめんなさい・・・。」
「気にしないでくれ・・・。」
「出来るだけ、努力します。」
そういって綾瀬君は食べ終えた食器を持って部屋を出て行った。
「和にい、後でいのりちゃんが病院まで車を出してくれるって。病院に行ってお薬をもらってこよ?」
「ああ、そうさせてもらうよ。」
「うん、それまでは私が傍にいるから、ゆっくり休んでいて。」
俺は、茉莉ちゃんに布団を掛けてもらい再び眠りにつく。
次に目が覚めた時には、目の前に俺の顔を覗き込んでいる楓ちゃんがいた。
どうやら学校から帰ってくる時間まで眠っていたようだ。
「和にーちゃん。大丈夫?」
「楓ちゃん・・・。おかえり。
ああ、まだしんどいよ・・・。」
そういって体を起こそうとする俺を楓ちゃんが制する。
「ダメ。きちんと休んでて。もうすぐお医者さんが開く時間だから、それまで待ってて。」
「そうするよ・・・。」
「うん、私が見守ってる。お姉ちゃんといのりんが、夕ごはんと替えの氷枕を作ってくれているから、しばらく辛抱。」
その後、綾瀬君が運転するミニバンに乗り、俺は茉莉ちゃん、楓ちゃんに挟まれ看病されながら病院で薬をもらってくるのであった。
いつも後遺症で苦しんでいる亜咲の面倒を見ていたが、亜咲もこんな気持ちだったのかな・・・。
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