第十四話 和樹の受難・・・。
学園祭編と秋の温泉編は分割したほうが良かったかなと後悔していたりします・・・。
機会があれば分割を考えて加筆していけたらと思います。(涙)
初期構想より大きくなってしまいました・・・。
「疲れた…。」
早く帰って温泉に入って寝よう・・・。
今日は誰と寝るのかな・・・?
いや、とにかく一緒に寝る子に抱き着いて温もりを感じていたい・・・。
彼女の香りを胸いっぱいにして心安らかに眠りたい。
仕事の付き合いとはいえ長いこと掛かってしまった。
もちろんジャンさん達の仕事の手伝いをするにあたって相談役という役員を引き受けているため、地元関係者の人をはじめとする人々に紹介され、今後の関係づくりということもあって中座することが出来なかった。
ああいった会はそれなりに年齢を重ね、会社の重鎮や名士の人々が多く、修造さんが若造扱いされ、俺や常見なんてのは子ども扱いや、下っ端の新入社員のようなものだった。
だが、修造さんはそれなりに名の知れた開発企業の社長、常見も土地の名士で名門大学理事且つ大きな寺の住職の次男坊にして勢いのある若手実業家だ。
二人は場慣れしていることもあり直ぐに中に入って打ち解けていった。
一方の俺はというと・・・。こういった会なんて全然出ていないから、ある意味で圧倒されていた。
会が終わった後で二人から聞いたが、俺と同じく九州の歓迎に圧倒されていたとのことだった。
単純に場数の差で飄々と振舞っていただけだったとのことだった。
まあ、ここで多くの人と顔を繋げることが出来たのは大きな収穫だったとホクホク顔の二人ではあったが。
そして何より、あんまりバックボーンを持たない俺がジャンさんの、名家 高千穂の旅館の役員だ。
修造さんはともかく、世界的なシェフと名家の息女が代表を務める法人の役員、しかも相談役にこんな若造がついているなんて普通、絶対にありえない。
俺が超一流大学を出て経営の天才とかであるなら話は別だけどね。
いろんな人から質問攻めされた。
最初は、常見と啓介のの会社の役員で修造さんと懇意にしているという事を話していたのだが酔っ払ったジャンさんがいろいろとやらかしてくれた・・・。
「いやいや、大木さん何を謙遜。 皆さん実はですね・・・。」
「あ! ジャンさ・・・。」
質問攻めにあっている俺を後ろから肩を回し一升瓶を持ったジャンさんが大声で話してしまったのだ。
今までの事情で一人だったいのり君と知り合って、火事で焼け出されみのりさんが最初に持たせた物だけを抱えて身一つになった彼女を引き取ったことを。
そして、親身になって世話をしてくれ、さらには仇敵である金子から勇敢に守り抜いてヤツを捕縛したと。
しかも、俺のことは才気溢れる若手資産家で、これから大きくなるであろう常見や啓介、更には修造さん、ジャンさんの懐刀と言う始末だった。
俺はお酒の酔いもサァァと引いていくのを感じるのとは裏腹に、周囲の視線や空気が熱くなり熱狂の渦に包まれていく。
その後は更にすごいことになった。
歓声と共に多くの人がお酌をして話かけてくる。
いろいろな話をされたが顔は覚えても内容はほとんど覚えていなかった。
なかには結婚指輪をしているにも拘らず、俺に縁談を勧めてくる人もいた。
これには俺の顔も歪みを隠せない。
そこにいち早くジャンさんが反応して、俺のテンションを更に下げる爆弾発言をしてくれた。
「いやいや、大木さんは奥様を失くされたばかり。後添えさんはまだ早いですよ。
それにウチの娘がお世話になっています。
そういう事と捉えていただければ・・・。」
「ちょっと!! ジャンさん!」
流石に今の発言はいろいろとマズいし、俺には亜咲という心に決めたただ一人の女性がいる。
承服しかねた俺が抗議しようとすると藤堂刑事と修造さんが俺の肩にを叩く体で密着して耳打ちしてくれた。
「ダメだ、抑えるんだ大木さん。ジャンさんは話を濁しているんですよ。
なにも直接的には指し示してはいない。
つまり、煙に巻こうっていう事です。」
「あ・・・!!」
「いやあ、私も鼻が高いです!! こんな将来有望な若者と知己を得て一緒に仕事が出来て!
それに私のところの娘も高賢寺君とイイ仲でしてな。
将来有望な若者に恵まれて我々は果報者です!!。」
「そうです!! さあ、将来有望な若者の前途を祝して乾杯と行きましょう!!」
「あざーっすっ!! 今後とも皆様、よろしくお願いします!!」
熱くなっていた俺の頭が一瞬で冷静になる。
普段の自分だったらこのトリックに直ぐに気がついて対応していたんだろうけど酔いが回っていたのか気が付けなかった。
ジャンさんと修造さん、藤堂刑事の老獪な対応で救われた。
それからは何事もなく会話をこなし、深夜に会はお開きとなった。
そういう事もあってドッと疲れがやって来た。
最後まで俺とジャンさん、修造さん、常見は残って見送りをした。
その後、先に修造さんと常見が部屋に戻り、俺も部屋に戻ろうとした時、片付けに仲居さんを連れてやって来たみのりさんとジャンさんに引き留められた。
「大木さん。」
「? どうされました、みのりさん?」
「今日は本当にありがとうございました。そして申し訳ありません。」
みのりさんが、ジャンさんと共に俺を真剣な眼差しで見つめ深々と腰を折ってきた。
「?! いったいどうされたんですか? 体を上げてください。」
「いいえ、これは精一杯の誠意なんだ。」
「実は・・・。」
話を要約するとこうだ。
今回の宴会と二次会の目的の一つにいのり君に縁談が舞い込まないようにするためにタイミングを見計らって一芝居打ったと。
なんでもジャンさんとみのりさん、いのり君の関係が公になってからいのり君への縁故、財産目当ての見合い話がひっきりなしに舞い込んできているとのことだった。
その話を聞いた俺はとても腹立たしく、苛立つ表情を隠すことが出来なかった。
多分、腰を折り頭を下げている二人は更に怒りに歪んだ顔をしているのだろう。
愛情深いこの人たちのことを想像することは難くない。
丁度、俺といのり君のいきさつを話して上手くオブラートに包んでしまえば多くの人は俺の地位や資産、関係性から想像することは一つだ。
二人はそれを狙っていたのだ。
もちろん宴会で着飾ったみんなと一緒にいるところを見せつけることで余計な虫がつかないように取り計らったのだと。
「はあ、わかりました。その期待に応えられるよう道化を演じさせてもらいます。」
「重ね重ね申し訳ありません・・・。
でも、道化じゃない方が私達としては嬉しいかな?」
「へ?」
みのりさんとジャンさんが顔を上げて俺のことを真剣な眼差しで見つめる。
「あの子の気持ちを私達は優先させてあげたい。幸せになってもらいたい。」
「そう、どんな形であってもいのりが一番幸せだと、心から思えるように出来ることは何だってしてあげたいの。」
「あの子は知らない間に大人になった。そして良き友、家族を得ていた。いのりにとって一番大事な物を・・・。」
「大木さんにはそれを守ってもらいたいんです。いのりを含めた彼女たちの幸せを・・・。」
「だから、これからもいのりのこと、よろしくお願いします。」
「は、はあ・・・。こちらこそ、よろしくお願いします。
俺にできることであれば最善を尽くすことをお約束します。」
そんな少し意味の分からない会話をして送り出された・・・。
帰り道にいろいろこれについて思案する。
意味を考え、俺はどうしていくべきか、どう在るべきかを。
そんなことがあって、いのり君の名を関した部屋、いのりの間に着いたのであった。
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