第十一話 御披露目
いのり君の成人式の着物の衣装合わせが終わったようで、先に準備を終えていたみんなと促されて奥の方で準備を終えたいのり君のところに向かう。
「わあ。」
「綺麗。」
「流石ね。」
「すごい!」
みんなから感嘆の声が漏れる。
みんなだってそこいらの美人よりもきれいだと思うが、確かにこれは芸術品のようなレベルだ。
いつもいのり君がおしゃれをすると、西洋人形のような容姿を活かしたコーデが多いが、今回はそれとは全く反対の方向、和風のテイストが強く押し出されている。
着物や髪飾りの豪華さが彼女の金髪や彫りの深い顔立ちを引き立ててとても似合っている。
「えへへ、どうかな?
いのりちゃんてきにはちょっと派手かな~。」
「ううん! そんなことない、いのりん。」
「うん、とっても綺麗だよ。なんていうのかな、お人形さんみたいな可愛さじゃなくて美しいんだよ・・・。」
楓ちゃんと茉莉ちゃんがうっとりしている。
「もう、こんなのみたらお着物が着れなくなっちゃう!」
「ほんと、そうね。私達なんか目じゃないわね。
ほら、和樹。いのりに何か言ってあげなさいな。」
カレンに促され、顔を真っ赤に染めるいのり君に感想を述べる。
「本当に美しいと思うよ。普段のいのり君はカワイイが多いけれども、今回は大人な美しさだよ。
まさに成人式の衣装にぴったりだ。」
「大木さん、ありがとう。そう言ってもらえるだけでも十分だヨ。
もう、お母さんや着付けをしてくれていた人たちが涙を流しながら気つけてくれたおかげで、気が気じゃなかったんだよ。」
そう言って後ろにいるみのりさんや着付けをしてくれた人たちを見やると皆、涙を流した後がある。
「ごめんなさいね。やっぱりいのりの晴れ着が見れるなんて夢みたいだったから・・・。
実際に着せてみるとこみ上げてきちゃったわ。」
「みのりお嬢様の時も感動しましたが、ああいう不幸があったので私達も感動が止まらないのです。
本当に亡くなられた御当主様や奥様に見ていただきたかったです。
本当に私共に預けていただき、お守りしてきた甲斐がありました。」
みのりさんや年配の着付けの人がそう言いながら写真に収めている。
そっか、そうだよね。
それからしばらく、みんなで写真を撮りあっているとジャンさんや常見達もやって来て撮影タイムが続いた。
ジャンさんなんかは号泣しながらカメラを撮っていたが、仕事があるのでみのりさん共々呼びに来たスタッフに連れられて渋々退散していった。
これから大宴会場でお世話になった人や高千穂で働いていた人たちを交えての宴会がある。
今までの事件のお礼と、高千穂の復活を祝う会だ。
今回、俺達は新たに開業するこの旅館のレビューをすることに加え、この催しがあるのでお呼ばれしたのだ。
みんなそれぞれドレスを用意したけれども、まさかのサプライズだった。
みんなで庭園を散策しながら写真を撮っている間に俺や修造さん達も着替えに戻り、会場へ向かうことにした。
大宴会場に入るとそこには本当に多くの人たちがいた。
藤堂刑事やいのり君のいた施設の人たちも今日は泊りで招待されている。
みんなが俺達を見つけて声を掛けてくれ、いのり君の美しさに見惚れていた。
西岡さんや施設の妹たちも涙を流して喜んでくれていた。
本当に愛させているないのり君は。
いのり君も妹たちの成人式にはきちんとした着物を用意するから期待していてと言って会話が弾んでいた。
そうして俺達も会話を弾みながら時間になるまで楽しく過ごした。
時間になり俺達も案内された席に着席することになる。
俺達一行はは一番上座にある高千穂一家の隣の席だ。俺や修造さんは固辞したのだが今回の主賓なので無碍に扱わせないでくれと言われ断りきることが出来なかったのだ。
里奈なんかガチガチだ。もちろん体調が悪くなったら直ぐに下がれるよう明美ちゃんと出口に近い席に座っている。
山田さんも藤堂刑事と話をしている。あの二人もこの騒動に深くかかわった人物なので多くの人たちが話し掛けに来て、泣いたり笑ったりしていた。
「うう、まさかこんなに大きなパーティーだなんて思わなかったよ、和にい・・・。」
「わかる、お姉ちゃん。なんだかおいしいお料理がお腹に入りきらないかも。帯で締められてただでさえ窮屈なのに。和にーちゃん、食べきれなかったら食べて。」
「そうね、まあ。私達はゲストなんだからドンと構えるしかないでしょう。ここまで来たら。
最初にこういう事もあるんだって想定しておくべきだったわ・・・。」
「だね。やっぱり後ろの席でって強硬に言い張るべきだったかな・・・?」
三人とも予想していた以上の人出にガチガチだ。
斯くいう俺も顔には出さないが足元は緊張でガチガチだ。
だが、常見や立花さん、明美ちゃんは平然としている。こういった場所に慣れているので普通にケロッと談笑している。ここは場数の違いがでてくるよね。
そうは言ってもいのり君よりは俺達はまだいい方だろう。
彼女は一番の上座に一人座し、多くの人たちから感嘆の声と共に注目の視線を浴びている。
もちろん顔はパッと見笑顔を返しているが、とても緊張しているのが付き合いの深い俺達にはわかる。
カレンは面白がって楓ちゃんと写真を撮っていた。
「これは、いい見世物ね。」
「うん、いい思い出。」
「こら、二人ともいのりちゃんが可哀想だよ。」
「あら、茉莉、そうは言ってもこういう機会なんて滅多にないのよ、ここはもう開き直って楽しんだ方がいいわ。」
「うん、深く考えるのはやめようお姉ちゃん。ほら、里奈さんなんて啓介さんに見せたら怒りそうな顔している。」
「・・・もう。そうかな。うん、そう思うことにするよ。」
「はは、里奈には言うなよみんな。もちろん写真を啓介に見せる時はこっそりとな。
後が怖いから。」
「あはは! だね。」
そうしているとジャンさん、みのりさんがやって来て席に着く。
司会の人が音頭を取って開始を宣言する。
ここからはジャンさん、みのりさんから今までのお礼や、これから高千穂を再び盛上げていくという話があり、最大の出資者である修造さんの乾杯の音頭で宴が始まった。
それから豪華絢爛な和洋折衷の料理の数々が運ばれて俺達は緊張も忘れて舌鼓を打った。
ジャンさん、いのり君に高千穂で働いていた人たちが今日のために考えた料理らしい。
宴会なのに多くの人が料理に集中している。
まあ、そうだよね。後で聞いたけれども高千穂で且つて働いていたジャンさんの兄弟子の人たちもかなりの有名店の料理人の人がほとんどでまさに豪華なコラボレーションらしい。もちろん旅館が開業するにあたって何人もの人が戻ってきてくれる。こんなレベルの料理が出てくる旅館は売れないわけがないよな。
なんだかすごい案件に関わってしまったな。
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