第十話 着物は似合う?
最近はいろいろあって更新が滞り気味ですが、頑張ります。
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いのり君の成人式の振袖の衣装合わせに合わせてみんなで着物を着ようということになり、旅館の広間の一室に俺達、立花さん一家は向かう。
そこには何人かのお世話してくれる人がいて、何着もの着物が用意されていた。
パット見ただけでもかなりの高級な仕立てであることがわかる一品ばかりだ。
そしてその一番奥の床の間には赤を基調とし、黒と金の刺繍で彩られた豪華な着物が飾られていた。
「わあ、すごいや。百合子ちゃんのお家でもこんなに豪華なお着物は見たことがないよ。」
「すごいわね。どれもこれもお店で置いてあるものよりも遥かにレベルが違うわ。」
「うん、これは芸術品。」
「はわわ。馬子にも衣裳ってこのことなのかな・・・。楓ちん。」
「パパが立派な衣装を用意するからな!!」
みんなが置いてある着物の美しさに嘆息している。着ることのない俺でも美しさに嘆息するほどだ。
いのり君は、奥の着物を指さしてみのりさんに確認する。
「お母さん、あの着物が?」
「ええ、貴女に来てもらいたいの。」
「いやいや、私には似合わないって。ほら、ハーフの顔立ちだしさ・・・。」
予想以上の着物が出て来てかなり畏縮してしまっているようだった。
「そんなことないわ。貴女は私に似ているから似合うわよ。きちんと高千穂の女の顔をしているから似合わないわけがないわ。」
「うう、そういわれるけど・・・。大木さん~。」
俺に泣きついてきた。
「ほら、折角なんだから着てみたらいいじゃないか。俺も見てみたいしね。
それに万が一違うなってなったらみのりさん達が新しいのを用意してくれるしね。」
「・・・見たい? 似合っていなかったら笑わない?」
「ああ、笑うもんか。俺は似合うと思っているしね。」
「ほら、大木さんもそう言ってくれているんだから、着てみましょう。
似合わなかったら新しいのを探せばいいだけだから。
それに昔から高千穂で働いていた皆に似せてあげて欲しいのよ。」
なんでもこの着物の価値はかなりのもので美術館に収蔵されていてもおかしくない品だそうだ。
もちろん今着物を選んでいる他のみんなの着物も格は落ちるが似たり寄ったりな品らしい。
何より、これらの着物は様々な危険が迫っていた時にみのりさんの両親、いのり君の祖父母がこっそりと信頼のおける従業員の人や関係する人に預けていた財産で何とか反社会的な組織の手に落ちず、漸く戻ってきたものらしい。
今回の旅館の夕食時に是非ともその人たちや昔から知っている人たちに是非とも見せたいとのことだ。
この話を聞いたいのり君は意を決して頷き、着物を見ていた。
そらからみんなが着る着物が決まり着替えている間、俺と修造さんは隣の部屋で待つことになった。
「本当にすごいものだね。」
「ええ、私達なんて目じゃないセレブですね。」
「ああ、年季が違うよ。家だって祖父が明治に商売を興して今があるが、高千穂といえば九州で名だたる名家、資産家として有名だったからね。」
「そうなんですか。パッと出の小金持ちの私はその辺りは全くで・・・。」
「まあ、大木さんはこれからだと思いますよ。間違いなく。
今手掛けている商いや資産運用のお話を聞く限り、私は一代限りの資産家ではないと思います。」
「そんな、買いかぶりすぎですよ。」
「そう思われるからですよ。ご住職も私もそう言うところを買っているんですから。」
「はあ・・・。」
「さて、お金のお話はここまでにして、大木さんは成人式は?」
「私の成人式ですか?
まあ、ご存じの通り身寄りがなく妻、その当時は幼馴染ですが、とその父と写真を撮りました。
知り合いのいない成人式に出るのもなんでしたので。」
「それはいい孝行をされましたね。」
「ええ。修造さんは?」
「私はお恥ずかしいことなんですが、そのころは荒れていましてね。
パンチパーマに紋付き袴でした。もちろん大人になってとっても後悔をしました。
いまでもその時の写真を見ると恥ずかしくなります。」
「そんな時期があったんですね。驚きです・・・。」
「ええ、まあボンボンによくある話ですよ。本当にバカな子供でした。」
そう言って修造さんは出されたお茶を啜り、お菓子を口にしている。
しばらく仕事や世間話をしていたら声が掛かり広間に再び足を踏み入れる。
そこには、豪華な衣装で着飾ったみんなの姿があった。
みんなの容姿は身内贔屓なしでもかなりカワイイが、それを際立たせる着物で神々しい美しさだ。
俺と修造さんは息を飲んで見つめていた。
「えへへ、どう? 和にい。」
「ほら、何か言って。」
「そうよ、呆けてないで感想を言って。早く聞きたいの。
でも、生半可な言葉はイヤよ?」
「パパ、どうかな? ママはなんだか気が早いけど泣いちゃってわかんないから。」
俺と修造さんは気を取り直してそれぞれ感想を述べる。
茉莉ちゃんは薄桃色の生地に上品な草花が描かれた着物だ。
「茉莉ちゃんらしい着物だね。茉莉ちゃんの雰囲気を上手に引き立ててくれていてとっても可愛いよ。」
「えへへ、ありがとう和にい。次は私の成人式のお着物の時にも聞かせてね。」
「? 成人式の着物があるのかい?」
「うん、おばあちゃんが認知症が酷くなる前に百合子ちゃんのところで私と楓ちゃんの分を頼んでおいてくれたんだよ。まだ柄は私にも秘密だって百合子ちゃんは言っていたけど、ちゃんと用意してもらってるんだ。」
「そっか、じゃあその時を楽しみにしているよ。と言っても次の成人式だね。」
「ふふ、待ち遠しいね。」
次に楓ちゃんだ。
楓ちゃんは楓ちゃんにしては珍しい色のチョイス、赤色の着物だ。
友禅というのだろうか、確か。俺は着物のことはよくわからないが確かそう言う着物だ。
茉莉ちゃんと違い様々なモチーフが描かれており豪華な仕上がりだ。
「どう? いつもと違う色にしてみた。」
「ああ、確かに。でも似合っているよ。楓ちゃんの知的な落ち着いた雰囲気と朱色の着物の豪華さがとてもコントラストになっていて映えているね。」
「うん! 頑張って勇気を出してみてよかったよ。」
「ああ、これからもこういう色合いの服も見せてくれよ?
「うん、そうしてみる。
あと、私の成人式のお着物も楽しみにしていて。忘れないでね。」
「ああ、もちろん。忘れずに楽しみにさせてもらうよ。」
最後はカレンだ。
カレンはカレンらしいチョイスだ。
濃紺の落ち着いた派手ではないが品の良さが滲み出ている着物を選んでいる。
「いのりじゃないけど、ハーフ顔の私が似合うかなって思っていたのだけれど、案外似合うものね。」
「ああ、いのり君もカレンも気にしなくていいと思うぞ? カレンらしい芯の強さが表現されているから俺は好きだぞ?」
「ふふ、ありがとう。これは後で写真を撮ってもらいたいわね。」
「ああ、いいぞ。」
「お願い。やっぱり成人式ってママやおばあちゃんから聞いていたけど羨ましいって思うところがあったのね。着てみたら見せてあげたくなっちゃたわ。」
「そっか、成人式はないもんな。」
「ええ、そもそも成人年齢が州でマチマチですもの。」
そんなことを話ていると隣では立花さんの感想を修造さんが話している、というか感動して感涙して写真を撮りまくっていた。
立花さんは金柑色の着物で、緑や赤のアクセントが施されていた。元気な性格の立花さんを顕わしている着物だ。彼女らしいチョイスだ。
「パパ、そんなに泣かないでよ。」
「いいや、美しいよ美里!! ママが泣くのもわかる!!
成人式の着物はとっておきのを用意してあげるからな!!」
修造さん夫婦はそんなことを言い、感動で涙を流していた。
そしていのり君は・・・。
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