第八話 温泉に行こう
後半編開始です。
欧女の学園祭は何事もなく二日目も終えた。
何とか楓ちゃんの体調は崩れることなく過ごすことが出来てよかった。
二日目にも俺達も顔を出すことが出来たらよかったのだが、皆それぞれ予定があっていくことが出来なかった。
その日の夜に楓ちゃんから聞いた話ではあるが楓ちゃんのクラスの出し物が大学も含めた学園祭で一番の売り上げを叩き出し、新記録を記録したとのことだった。
いのり君のお菓子の評判は二日目には多くの人に共有され開店前から行列が出来、飛ぶように売れたらしい。
そこに輪をかけてジャンさんとみのりさんが配達にやって来た。
というか、娘のスイーツの評判が気になって配達するんだとゴネまくって無理矢理パスをいのり君から奪い取ってやって来たらしい。もちろん、いのり君はその間もずっと厨房で作業漬けだったとのことだ。
それからは更にすごいことになった。
当然、ある程度裕福な生活レベルの人間ならば必ず聞き憧れる料理人がやって来て、サービスしながら売ってくれるとあって収拾がつかなくなっていたくらいだったとのことだ。
結局そんなこんなで用意した分はすべてが夕方前には売り切れ、売り上げもすごいことになっていたらしい。
クラスの女の子たちが売り上げの札束と硬貨の山を見て、目の色が変わっていたと言っていた。
それくらい繁盛したので、立花さんは学校の偉い人から褒められるどころか、やりすぎだと大目玉だったとのことだ。
そんなこんなで大記録を達成して楓ちゃんたちのクラスのみんなは大満足だったらしい。
楓ちゃんもこの話をヤレヤレというう風に言ってはいたが顔からは隠しきれない満足感、充足感が満ち溢れていた。
ちなみに補足だが次点は俺といのり君が写真を撮ってもらった写真部だった。
こっちはいのり君が払った大金が売り上げに大幅に貢献したようであった。
こうして学園祭は終わり、俺達はジャンさん、みのりさんに招待されている開業予定の温泉旅館に向かう日になった。
俺達一行に加えて、立花さん一家、里奈、常見、明美ちゃん、山田さんという総勢12名の大人数だ。
先に準備があると言うことで向かったジャンさん、みのりさんは旅館で待っていてくれる。
今回は更にいのり君のいた施設のみんなや藤堂刑事も招待されている。
みんな楽しみにしている。
「和にい、準備出来た?」
「ああ、早くいきたいよ。」
「なら、さっさと行きましょう。せっかくプライベートジェットを仕立てたのですもの、あちらの四人はウズウズ我慢ならないようね。」
今回、身重の里奈がいるので人込みの中はどうかと思い、人数がある程度いるので俺と常見、修造さんの三人でお金を折半してプライベートジェットを用意した。もちろん往復で。
そのため茉莉ちゃん、楓ちゃん、いのり君、立花さん、それに加えて山田さんが集合場所の俺の家で興奮しっぱなしだった。
「もう、私眠れなかったです。プライベートジェットなんて初めてで。」
「山田さん、私も! 全然眠れなかった!」
「美里、今からでも少し仮眠しておかないと飛行機の中で眠ってることになる。
私はカメラとビデオカメラの準備万端。」
「そうだよ? 私も早く乗りたいけど、寝落ちしないために今日はギリギリまでお布団に入っていたよ。」
「わかる!! いのりちゃん、おかげでビックリお寝坊さんだったヨ!
起きたってお父さん、お母さんに連絡したら大目玉だった・・・。」
そんなことを言っている。
修造さん夫婦と常見は何やら話をしている。最近は立花さんとイイカンジらしい常見は修造さんに頭が上がらないようだった。
「ふふ、不思議でしょ? ジョーちゃんがあんなになるなんて。」
「ああ、不思議だよ。狐に包まれたみたいだ。」
「ほんと、人生どう転ぶかなんてわからないね。アイツの過去を振り切ることが出来たらいいんだけど・・・。」
「それはわからないわ、里奈ちゃん。でも、美里ちゃんとの関係でジョーちゃんは結構変わってきたと思うわ、和樹ちゃんとは違った意味で。」
「そうか、アイツも先に進もうとしているんだな。」
「ま、アンタたちは結構律儀だもんね、こういうところがやけに男気があるというか、堅気というか。」
「それが二人の魅力でしょ?」
「そうね。」
俺と明美ちゃん、里奈で話をする。常見もチャラい男だが過去にはいろいろなことがあった。
俺達はその時の事を知っているので今の立花さんとの関係が良く、長く続いてくれることを切に願うのだった。
時間になり俺達は俺の運転するミニバン、常見の運転する茉莉ちゃんの使っているSUVで近くの飛行場に向かった。
そこに車を停めて、事務所で手続きをしてから俺達を待っていてくれる小型の飛行機に向かう。
「おお、これが!」
「なんと!」
「すごい・・・!」
いのり君、立花さん、楓ちゃんが飛行機に走って向かいスマホのカメラでいろいろ写真を撮っている。
もちろん後から来た茉莉ちゃん、カレン、山田さん、明美ちゃん、里奈、立花さんのお母さんと女性陣は写真を自撮りしたり、撮りあったりと撮影に余念がない。
俺達、男は当然飛行機の雄姿を写真に納めたかったのだが女性陣の凄みに負けて何も言えず、苦笑いしながら眺めるだけだった。
それからしばらくして、パイロットの二人の挨拶と案内を受け、飛行機に搭乗する。
「あれ?」
「うん・・・。」
「なんか違う・・・。」
いのり君、立花さん、楓ちゃんが我先に機内に駆け込んで、落胆している。
まあ、当然か。
俺達がチャーターしたのはプライベートとは言え、いわゆる普通の小型旅客機だ。内装は普通の格安ジェットに毛が生えた程度だろう。一応お菓子と飲み物は予め用意しておいて積み込んでおいてもらってはいるが。
一時間くらいしか乗らないからね。そんなに期待されても困る。
「何? 当たり前じゃない。こんな大人数で出かけるんですもの豪華な内装なんてありえないでしょう。
それも一時間だけのフライトよ?
アメリカじゃ下手したらバス替わりよ?
そういうのはいのりの家のを使わせてもらいましょう。今度は。」
「あはは・・・。そうだけど、ね。
女の子だもの、夢は見るよ。うん。」
「うん、カレンはそうかもしれないけど~。」
おや? 茉莉ちゃん、山田さんも少し落胆している。こちらの二人の期待値も予想以上に大きかったようだ。
それ以外のみんなはさも当然のように乗り込んでいる。
こうして、落胆する五人をみんなで宥め、慰めながら次回はいのり君がジャンさんにおねだりをしてみんなで本物のプライベートジェットに乗ってどこかに行こうということで話がまとまった。
こういうところでさらっと超金持ち発言が出来るようになってきたいのり君も流石だな・・・順応力が高い。
まあ、発進して離陸して空の上になったらそんなことを忘れて景色に夢中だったのは言わないでおいてあげよう。
こうして俺達はジャンさんとみのりさんの旅館に最寄りの飛行場に到着し、迎えに来てくれていたマイクロバスに乗り込んで旅館に向かうのだった。
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