第七話 楓と学園祭~展望台にて~
更新再開です。
漸く動き出すことが出来ました。
皆様、この時期、タイミングですのでお気を付けください。
本当、大変でした・・・。
カレンとしばらく大学の出し物を見ていると高校の方の閉場時間が近くなり楓ちゃんから待ち合わせの時間の連絡が入ったので、その時間まで二人で楽しんだ後、俺は楓ちゃんが指定した場所へと向かった。
楓ちゃんが指定した場所は、学園の敷地の中でも一番高く、奥にある展望台がある場所だった。
俺がそこに着くとそこには既に楓ちゃんが待っていた。
「お待たせ楓ちゃん。寒くなって来たけど、大丈夫かい?」
そう言って俺は来る途中に売っていたホットココアとチュロスを楓ちゃんに渡す。
「ん。ありがと、和にーちゃん。大丈夫、ちゃんとコートも来ているから。」
楓ちゃんは日中に来ていたメイド服から制服に着替えて、学園のダッフルコートにマフラーといった晩秋でも少し暖かめかなといった服装をしている。
「和にーちゃん、少し歩こう。」
そう俺に言ってホットココアに口を付けながら楓ちゃんは歩きだす。
周りには人はまばらだがチラホラと距離を保ちつつカップルが居るといった感じだ。
多分見るカンジ、OGや大学の子が彼氏を連れてきているといったようだ。
中には高校、中学の子もいるな。
「ここは学校の敷地で一番奥にあって、あまり人が来ない。
でも、ここから見える景色がとてもきれい。特に今日は暗くなると大学のライトアップがあるからなおさら。この日だけはカップルが堂々と学校でいちゃつける日だから、そう言う場所。」
「そっか。だからカップルばかりなんだね。」
「うん。私達もそう見えるかな?」
楓ちゃんが振り向きかえって俺を見上げてくる。
「まあ、こういう場所で若い男と女が二人で歩いていたらそう見えるよね。
俺が若く見えるかはさておき、ね。よしんば変質者と思われているかもな?」
「そんなことない!」
お? 珍しいな、楓ちゃんが声を荒げて反論する。
「和にーちゃんはまだまだ若くてカッコいい。それはない。自分を下に見過ぎ。」
「はは、そう言ってくれるとなんだかうれしいよ。」
「うん、自信を持って。同年代の人でも、もう中年太りとか、疲れ果てた顔の人だっているんだから。
和にーちゃんは充実した気力溢れる顔をしているよ。今は・・・。」
楓ちゃんは俺にそう言いいながら、目を細める。瞳には薄っすらと涙が溜まっている。
「どうしたんだい?」
「ううん、ごめん。ちょっと、感情的になった。
再会した時の和にーちゃんのことを、亜咲ねーちゃんのことを思い出した。」
「そっか、あの時の俺はひどかったもんな。」
「うん、私達がやって来て、みのりんが来て、カレンが来て。日を追うごとに段々と昔の和にーちゃんのように戻ってきていると思う。」
「そう見えるのかい?」
「うん。でも、一番心の奥底、亜咲ねーちゃんのことはまだ引きずっている。」
「それは、治らないよ。それだけのことだよ・・・。」
「うん、わかっている。ごめんね、変なこと言っちゃって。
さ、座ろう。」
先を歩いていた楓ちゃんがちょうど人もまばらで、眺めのいい場所のベンチに座る。
「今日はどうだったかい?」
「楽しかった!」
「そっか、なら頑張って治した甲斐があったね。それに今まで頑張って準備してきたことも報われたね。」
「うん、よかった。まだあと一日あるから油断はできないけど、きっと明日もさらに楽しくなると思う。
高校に入ってからの一番の思い出になると思う。」
そうして、楓ちゃんは今日一日の話を話し始めた。
俺といのり君と別れた後、教室は茉莉ちゃんが来ていると聞きつけた先生や学生、果ては中学の子たちも詰め掛けて大変だったらしい。
茉莉ちゃんはそんなことを一言も俺に言わなかったけど、たくさんの人に愛されているんだな。
「もう、すごかった。お姉ちゃんはすごいと思う。いつも人を惹きつける魅力がある。」
「だね。これはすごいと思うよ。亜咲とはまた違った方向だけど、みんなを惹きつける魅力があるよね。」
「うん。羨ましい。」
「そんな言わない。楓ちゃんにだってそう言う魅力があると思うよ。だって、クラスや学校、バイトであんなに人に慕われていたんだから。自信を持って言えるよ? 俺は。
楓ちゃんにも人を惹きつけるとってもな魅力があるって。」
「そっか、うん。ありがと。和にーちゃんに言ってもらうとなんだか安心する。」
チュロスを齧り、一息ついてそれからのことも教えてくれた。
茉莉ちゃんとカレンが楓ちゃんのクラスを後にすると立花さんの活躍?が始まったとのことだった。
なんでも、茉莉ちゃんたちが出て行った後は、聞きつけて来ていた人たちも段々と少なくなり、客入りが少なくなって来たようだった。
これでは目標としている茉莉ちゃんの時の記録を打ち破ることが出来なくなってしまう。
そこで彼女が取った作戦はこうだ。
「あのジャン・ピエールの愛娘で、滝川 啓介の愛弟子が作るスイーツ!!
もちろん二人のお墨付き付き! 食べなきゃ損!
しかも、自身がメインの料理店の開店が控える新鋭の料理人、高千穂 いのり作のスイーツ!
今回だけ特別に提供されたここでしか食べれない絶品スイーツでーす!」
そんなことを大声で言いふらしながらPRして、サンプルのお菓子を配り歩いていたらしい。
ジャンさんと啓介の名声、いのり君のスイーツの味の実力もあってすぐに客足が戻ったらしい。
もちろん茉莉ちゃんがいた時の比にならないくらいの勢いで人が入り始め、テイクアウト用のお菓子も飛ぶように売れたらしい。
予め、こうなると踏んでいた立花さんはいのり君がドン引きする量を発注していたらしいが、それもすぐに無くなったため、俺とデートが終わった後のいのり君は直ぐにルイジに戻って手の空いている人の力を借りて増産していたらしい。
今日は夕方前に材料が尽きて本当に売り切れになったが、明日は更に来るだろうからということで徹夜で啓介やジャンさんの店のスタッフの人にも手伝ってもらい数を揃えることになったと連絡があったと言っていた。
「まったく、なんというか・・・。立花さんらしいね。」
「うん、本当、美里はやりすぎ。」
「で、目標はどうだった?」
「ぶいっ! お姉ちゃん達の記録は軽く突破。多分これから余程のことがない限り破れない。
間違いなく来年は学校から制限が掛かると思う。」
「そっか、よかったじゃん。おめでとう。」
そう言って俺達は見つめ合って笑いあう。
無邪気に笑う楓ちゃんは普段の落ち着いた感じではなく、本当にこの年頃の女の子の顔だ。
こんな無邪気な楓ちゃんの顔を見たのは初めてかもしれない。
俺はそんな彼女の無垢な笑顔に見とれていた。
「・・・。和にーちゃん。」
「! ごめん、ちょっと楓ちゃんの顔に見とれちゃった。」
「!!」
楓ちゃんは急に顔が赤くなり、俯いてしまった。
「大丈夫?」
「ううん、大丈夫じゃない。」
「直ぐに顔を上げて! 熱があるなら直ぐに帰ろう!!」
俺がそう言って彼女の肩を持って起き上がらせると・・・。
その瞬間、頬に楓ちゃんの唇が当たった。
一瞬、俺は何が起きたのか理解できなかった。
「!?」
楓ちゃんは俺の頬から唇を離し、ベンチから立ち上がり手前にあった柵に手を掛けて夜景を眺めながら話す。
「大丈夫じゃない、大丈夫じゃないよ和にーちゃん。
うん、全然ちっとも熱が下がらないの。これはお姉ちゃん、いのりん、カレンも一緒。
私達の胸の中にある和にーちゃんへの熱は日に日に強く、熱くなっているの。
今のは親愛のキス。
でも、いつかは・・・ね。
私達は和にーちゃんが思うほど可愛い女の子じゃない。自分自身の想いに身を焦がしながら燃え尽きないようあがいているだけ。まるで、この風景にある学校の光みたいに。
さ、こんな話はやめにして、夜景を見よ?
こんなにも綺麗なんだから、冷える前に帰らなきゃおいけないし今しかない。」
楓ちゃんの話に戸惑う俺の手を引き、あたりが暗くなってライトアップされた風景を見せてくれる。
確かに高いこの場所から見える景色は夜景は綺麗だ。それに加えて大学の光が一際大きく、明るく茫々と輝いていた。
確かに楓ちゃんが言うように、みんなを表す光のような気がする。
そんなことを思いながら、隣で一緒に眺める楓ちゃんの横顔は一人の「少女」ではなく一人の「女性」の顔をしていた。
俺は一体どうしていけばいいのだろうか・・・?
彼女たちにとって「何」であるべきなんだろうか?
気になった、続きが読みたいって方は是非ひと手間お願いします。
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