第四話 いのりと学園祭~写真を撮りました~
誤字報告ありがとうございます。
随時、確認して適応させていただきます!
楓ちゃんのクラスで最初にみんなでお茶をしてから順番にみんなと学園祭を見て回ることになっている。
まずはいのり君からだ。彼女は楓ちゃんのクラスの喫茶店のスイーツを担当しており、少なくなってきたらルイジに取りに行くもしくは作りに行かなければならないので一番最初となった。
楓ちゃんのクラスの喫茶店に残ると言っていた茉莉ちゃんとカレンを残して俺といのり君は一緒に外に出る。
「えへへ~。いっちば~ん。」
「そんなに嬉しいもんかい?」
「うん! そりゃあもう。一番に大木さんを独占できるのはやっぱり嬉しいかな。」
「そっか。じゃあ、時間の限り楽しまなきゃね。」
「もちろん! それじゃあ、まずここに行きたい!」
そう言っていのり君がパンフレットを取り出して指さしたのは・・・。
「えへへ、一度こういうの撮ってみたかったんだよね。」
「・・・おう。」
「さ、そんな構えずに気楽に衣装を探そうヨ。」
いのり君は写真部の出し物のコスプレ写真館に俺を連れてやって来ていた。
何やら搬入の時に見つけて話を付けていたらしい。
いのり君の西洋人形のようなルックスだ。これを見て撮ってと言われて喜ばない写真部員はいないだろう。
当然、大歓迎されている。もちろん袖の下でいのり君はお菓子をあらかじめ渡していたようだったが。
この写真館は本格的な貸衣装屋から大量に毎年衣装を借り入れて本格的な撮影が楽しめることで有名らしい。
そんなわけでブースの外には写真を撮ってもらおうと並んでいる人がたくさんいた。
しかも、メイクは演劇部などのメイクの子などの有志が手伝ってくれていて本格的にしてくれる。
もちろん本命の撮影はこの日のために練習をしてきた写真部員達が、部の潤沢な予算で購入したか個人所有のフルサイズの一眼レフに大口径レンズ、スポットライトなどをふんだんに用意した撮影ブースで行ってくれる。
つまり、最初にカワイイ写真を最高級機材で撮ってもらいがてら、綺麗にメイクもしてもらえるとなれば女の子たちが群がってくるのは道理というわけだ。
「さ、どんな服にしようかな~。」
いのり君はアテンドの部員の子と相談しながら衣装を探している。
俺はそんなに衣装に興味がないのでいのり君に合わせた衣装でと言っている。
しばらくあれやこれやと合わせてはやめてを繰り返して衣装を決めたようだ。
「それじゃ、大木さん。わたしは着替えて軽くメイクをしてもらってくるから、この服に着替えて待っていてね。」
いのり君は俺が衣装を合わせると言っていたので自分の衣装を合わせるついでにアテンドの子にいくつか持って来てもらい俺の衣装を決めてくれていた。
俺も更衣室に通されて着替えをする。
俺が渡されたのは黒の燕尾服にいくつかの意匠が施されたものだった。
結構本格的な衣装で、俺の持っている夜会用のタキシードといい勝負だ。
そんなことを思いつつ更衣室を出て、いのり君を撮影ブースで待つ。
何やら写真部員の子たちがカメラを構えて大勢集まってきている。
まあ、当然だよね。
しばらくして、アテンドの子たちに連れられていのり君がやって来た。
いのり君の意匠は純白のゴシック調のフリルがたくさんついたミニスカワンピタイプのドレスだ。
これに黒のリボンがアクセントとして配されている。
もちろん頭には同じようなヘッドドレスが配されまさに西洋人形の雰囲気を醸し出している。
流石に西洋系の血が濃く出たハーフだけあって抜群の相性だ。彼女を見て見惚れた子たちからは感嘆のため息や甘い声が聞こえてくる。
「あぁ、尊い・・・。」
「わたし、もう今日はお腹いっぱいかも。」
「これを撮らずに何を撮れって言うの!」
「あはは・・・。いや~、いのりちゃんも罪な女の子だね~。」
頬を掻きながら苦笑いするいのり君。
隣にいるアテンドの子なんて瞳を潤ませて頬を染めているぞ?
「おう。似合っているな。白の中の黒がアクセントになって可愛いよ。」
「ありがと! 褒めるのも上手になったよね。素直にうれしいよ!」
「ああ、そりゃあ毎日、な。」
「もう! いい雰囲気なのに!」
何故だか顔を赤くされて怒られた。
しかも周りの女の子たちは何を勘違いしたのか顔を赤くしてモジモジしている。
「さ、気を取り直して撮影してもらおう!」
「そうだね。」
こうして俺達はシックなセットが置いてある撮影ブースでの撮影が始まった。
始まったまでは良かったんだが・・・。
「すいません、目線はこっちで!」
「動かないでください!」
「次のポーズは・・・。」
「あはは・・・。」
「なんだか撮ってもらっているんじゃなくて、これは撮られているだね。」
「うん、予想以上にいのりちゃんのかわいさが炸裂しちゃったみたいな?」
「わかっているなら自重してくれよ。」
「むむ、大木さんとの写真はかわいく撮りたいから譲れないな~。諦めて。」
「・・・。」
というわけで、かなりの時間を費やされて撮影が行われた。
終いには撮影待ちしている人たちも見に来て見世物になっている気分だった。
撮影が終了して、着替えて印刷してもらう写真を選ぶことになっていたのだが撮影された画像があまりにも多すぎて選べないということで、いのり君が全部のデータを買い上げて且つ修正を入れてもらうように追加で注文していた。
部員の子たちが請求費用に驚いていたが、いのり君は自分はかなりのお金があるから気にせずに思う存分綺麗にしたデータを作って費用を請求してくれればいいと太っ腹なことを言って前金でかなりの金額を払っていた。
これを見ていた子たちは目の色が変わり、最敬礼で俺達を送り出してくれた。
「うん、楽しみだね。一生の思い出にするよ。」
「ああ。よかったのか? 俺なんかとで。」
「大木さんじゃないとダメだヨ!」
「そうか。」
「そうだよ。ホントはもっと着たいものがあったけど、流石に分不相応だからあきらめたけど。」
「? 折角なんだから着たらよかったんじゃないか?」
「ううん。これはダメ。みんなにも、何より亜咲さんに悪いからね。」
「?」
「気にしないでっ!
さぁ、次に行こ!!」
それから俺といのり君は展示物やイベントを見ながら様々な軽食を摘まんで時間の限り楽しんだ。
後日、仕上がった写真を見た時は俺もため息が出てくるほどきれいな仕上がりでみんなもため息をついて見とれていた。
ただ、なんだかその後、いのり君以外のみんなが写真を一緒に撮ろうとおねだりすることが増えたり、夜の寝間着がいつもより過剰になったりと別の騒動を引き起こすことになるとは思いもよらなかった。
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