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第三話 一緒に行こ!!

 啓介のレストランに親父さんと到着し、関係者用駐車場に車を停め、順番待ちのお客さんを尻目に店内に入る。


「いらっしゃいませ!!

 って、ジョーちゃんパパじゃん。ということは、大木さんと茉莉ちゃん、楓ちゃんだね。」


 綾瀬君が出てくる。この子も親父さんとは顔なじみだ。

 親父さんも啓介を気遣って、個人的な要件での会食には良く利用してくれている。


 綾瀬君に案内され席に着く。いつも俺が案内される席よりも眺めがよい席だ。

 里奈が水を給仕しにやってくる。


「ご住職、いつもありがとうございます。今日は特別なメニューでおもてなしさせてもらいます。」

「ああ、頼むよ。」

「ええ、ご住職と常見、和樹は採算度外視で好きに料理を奮えるんで啓介も気合が入ってますよ。」

「はは、ワシらはいろんな意味で格別じゃからの。」

「ふふっ。今日のお礼も含めていつもより、よりを掛けてますよ、啓介が。お楽しみに。

 茉莉ちゃんも、楓ちゃんもよかったね、お父さん、お母さん、亜咲もあっちで喜んでいるよ。

 啓介と私から気持ちばかりだけど、楽しんでいってね。」

「里奈さん、ありがとうございます。」

「楽しみにしています。」


 そういって、戻っていく。

 こういう時に親友夫婦には感謝しかない。本当の家族のように遠慮なく接してくれる。

 そして啓介が腕を振るった料理が運ばれてくる。素材も通常のメニューより格段に良いものを使っているのだろう。見た目も味も格別だ。他のお客さんが注目している。


「今日は特別な日なんでしょ。気にしない、気にしない!」


 綾瀬君が給仕がてら二人に話しかける。この間で打ち解けているようでよかった。


「いのりちゃん。ありがとう。」

「いいって。」

「とってもおいしいって、啓介さんに伝えて。」

「そういえば、楓っち。そのおねーさんには刺激が強すぎる制服は何かと思うヨー」


 そういって制服のことを指摘する。

 確かに、楓ちゃんの制服は男には目に毒だ。

 チラホラ店内の男性客の視線を感じる。

 お前ら全員地獄に落ちやがれ!!

 特に親父!お前だよ!!

 真面目を装ってるけど、俺にはわかる!アンタの鼻垂れた視線が!!!!


「ご住職の手配で、今度新しいのを買いに行く。」

「よかったね。お姉さん心配したよ。これじゃあ、肉食獣の中に骨付き肉が歩いていくもんだったから。」

「よかったら、いのりちゃんも来ません?

 和にいに連れて行ってもらうんで。せっかくだしお話がもっとしたいな。

 いいかな?和にい?」

「ああ、綾瀬君の都合がよければ、是非に。」

「大丈夫だよー。決まったら教えて。

 この春休み期間はここのシフト満載。茉莉ちゃんとショッピングに行くって言ったら里奈さん達は行っておいでって言ってくれるよ。」

「やった。」

「楽しみ。」

「若い子はのぅ。」


 そうして楽しい会食は終わり、親父さん手配で制服を受け取りに行く日が決まった。

 そして当日。

 俺は寝かせていた赤い外車のSUVに二人を乗せて、綾瀬君と待ち合わせているデパートに向かった。

 この時、さすがに車のブランドを知っていたのかエンブレムを見て茉莉ちゃんはまたもやびっくりしていた。


「おはよー!!」


 綾瀬君が待ち合わせの広場で俺たちを見つけて駆け寄ってくる。

 彼女は黒タイツのショートパンツにダウンジャケットを羽織ったTシャツスタイルだった。


「おはよう。いのりちゃん。」

「おはよう、いのりん。」

「よう、綾瀬君。」


 まずは楓ちゃんの制服を受け取りに行く。

 念のため試着させてもうと、きちんと余裕のある作りとなっていた。


「これは着やすい。」

「だよね!おねーさんでも思わずお持ち帰りたくなる、かわいいよ。ほんと。」

「よかったね。楓ちゃん。」


 女の子同士で感想を言い合っていると、綾瀬君が俺を肘で小突いてくる。


「大木さんも何か言ってあげなよー。女の子はこういうのヒジョーにきにするんだから。」

「ああ、良く似合っているよ。楓ちゃん。」

「うん、ありがと。和にーちゃん。」


 楓ちゃんも顔をほころばせてくれる。

 かわいい。

 その後、俺たちは他のショッピング、つまりは女の子のお買い物を楽しむ。


「和にい、この服ってどうかな?」


 茉莉ちゃんがいろいろ服を持ってきて意見を聞いてくる。

 俺としては、何を着てもかわいいと思っているのでかわいいよとか返事している。

 すかさず綾瀬くんがやってきて、意見を言う。


「大木さん、そんなこと女の子は聞いてないヨ。

 もっと、こうしてほしい、ここがかわいいってほめてあげなきゃ。

 ほら、私の服も行ってみて!どう?」


 綾瀬君がアドバイスしてくれるので、彼女の持ってきた服の感想を言う。


「うーん。大阪のおばちゃんみたい。」

「だからダメなんだよー。もっと考えて。」


 そうダメ出しした綾瀬君は茉莉ちゃんたちのところに行って、彼女達にもアドバイスしている。

 彼女も専門学生だから、学校へ着ていく服装をアドバイスをしてくれて大変ありがたい。

 俺は、そのあたりは亜咲や里奈に聞いたことがなかったからわからないんでな。


「茉莉ちゃん、この服はチョーっと刺激が強いかな?大木さんに見せるには丁度いいかもだけど、学校の飢えた男子たちにはダメだよ。」

「そうかな?」

「そうそう。高校までの管理された世界じゃないから、男どもはオオカミになりやすいんだから、そのあたりを考えてみたらいいよ。例えばーーー。」


 そう言って女の子は姦しく、服を吟味する。

 俺はというと、彼女たちの買った服の荷物持ちだ。一応、今回のお礼ということで綾瀬君の服も奢りだといったら、遠慮なく買いまくっている。この野郎・・・。

 お陰で、遠慮なく茉莉ちゃん、楓ちゃんも服を買えているようだ。

 なんでも、二人とも格安の古着をやりくりしていたとのことだ。

 財布の箍を外してくれる綾瀬君がいたくれたおかげで、それぞれが欲しい物を買ってくれている。

 ひと段落して、最上階のレストランで昼食を摂る。


「いのりちゃん、今日は本当にありがとう。いろんな服を買えてよかった。」

「うん、気にせず自分に合った服を買えた。」

「いやいや、お礼を言うのは私だから。いつも学校帰りに眺めている服とか、大木さんのお陰で買ってもらえたし。」

「? よくこのデパートに来ているみたいな発言だな?」

「そりゃぁ、学校の近くにあるからね。勉強がてら、デパ地下のお惣菜とか買ってきているついでにね。」


 そういえば調理学校の学生だったな綾瀬君は。

 バイトで啓介の手伝いをしながら、料理を教えてもらっているんだったな。

 啓介も里奈も、綾瀬君は料理の筋もいいし、気が利いて助かるって絶賛していた。

 そんな彼女の勉強熱心な一面を垣間見た俺は、ふと聞いてみた。


「なんで、綾瀬君はそんなに勉強熱心なんだい?」

「ああ、私、将来自分のお店を持ちたいんだよー。茉莉ちゃん、楓ちゃんとはちょっと事情が違うけど私も親なしだからね。だから、お金を貯めつつ勉強できることは最大限しているんだよ。」


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