Chapter1 Rolling Girl - 4
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「あら、あんた旅の人かい?何やら不思議な格好してるね」
集落の門をくぐると、店じまいをしていたおばちゃんが声をかけてきた。
「えぇ、まぁ‥‥‥そんなところです」
人生で旅なんて、ましてや一人旅の徒歩旅行なんてしたことはないが、今の現状を鑑みるにそう答えておくのが無難だろう。制服で旅行がありえない、なんてのは日本人の先入観だ。
「おや、そうかい。そんなら宿はあっちだよ。ほら、あそこに人がいるだろ。あの人が今入ってったところがそうさ」
彼女は村の入り口から40mほど離れたところにある建物に入っていく人をさしそういった。赤茶色いレンガ造りの建物だ。
「あ、あの人」
おばちゃんの指さした建物に入ろうとする人の腕に、赤い布がまかれているのを見止める。
「なんだ、知り合いかい?」
えぇまぁ、ちょっと、と日本人得意の笑顔と濁した言葉で返すと、おばちゃんは何を勘違いしたのか物知り気な顔をする。
「ほー。‥‥‥まぁ、若いうちはいろいろあるもんさね。残念ながら宿はあそこしかないけど、頑張りな」
何を勘違いしているのかはわからないが、積極的に正す気もない。ありがとうございました、と仕事に戻ろうとするおばちゃんの背中に声をかけてから、教えてもらった宿へ向かう。
村の入り口となっている門から中央の広場まで太い道が一本。そこから奥に反対側の門が見える。真ん中の広場で道が十字になっているようだが、建物で左右がどうなっているかは見えない。道には石畳が引かれ、左右には石造りの建物で、まるでヨーロッパの街並みだ。道のわきには馬につながれた荷車から荷物を下ろしている人もおり、かごには野菜や干した肉や、何やら毛皮のようなものが積まれている。さっきのおばちゃんと話しながら荷下ろし作業をしており、雰囲気からして卸業者のようだ。あるいはどこかの村々を回って仕入れから帰ってきたのだろうか。
写真でしか見たことのないような中世の街並みを楽しみつつ、宿の前までたどり着く。
扉の向こうからは大きな笑い声や話し声。前の世界と変わらない酒場の喧騒が聞こえてきた。どこの世界もこういうのは変わらないんだなと思いながら扉に手をかけ、中に入っていった。
今日のおしゃれワード:特になし。