Chapter1 Rolling Girl - 3
予約投稿したのが投稿されてませんでした。。
「‥‥きろ」
ん、うぅ。
「おい、起きろ」
何か、声が聞こえる‥‥‥
「野盗にでも襲われたらどうする。おい、起きろ」
野党‥‥‥襲ってくるの‥‥‥?
「当たり前だろうが」
政権を取るために一般人を襲う野党はちょっと。。。
「‥‥‥何をわけのわからんことを。良いから起きろ。立ち上がれ」
んン‥‥‥
声に導かれるまま立ち上がり、大きく伸びをする。ふわぁ、と軽くあくびも一つ。
周りを見回すと暮れかけの夕方。山向こうに沈む夕日が一日の終わりを告げている。首を軽くコキコキと鳴らし、体をゆすって目を覚ます。
「ようやく起きたか‥‥‥。お前、名前は?」
少しあきれ顔の青年。年は私より少し上くらいだろうか。ファンタジーに出てくる旅人のような服装をしており、腕には赤い布を巻いている。
「名前‥‥‥?」
なんだっけ。
「そう、名前だよ。しょっ引くにしてもなんにしても、とりあえず名前がわからなけりゃ不便で仕方ない」
しょっ引くってなんだろ?
まだ、寝起きでぼんやりとした頭を振り振り、自分の名前を思い出す。
「えっと、私の名前はー」
「名前は?」
「‥‥‥すみません、その前に何か飲み物もってませんか?」
頭がぼんやりしている。私ってこんなに寝起き悪かったっけ。水の一口でも飲んだら目も覚めるだろうと旅人さんの持っている水筒を見つめながらお願いしてみる。
「‥‥‥」
ふぅ、とため息を一つついた後あきれたような顔で彼は肩にかけた水筒を外し、手渡してくれる。良い人だ。
ありがとうございます、とお礼を言ってからくるくると水筒のふたを開け、口をつける。ただの水なのはわかるのだが、水というものを初めて飲んだような感覚。常温の水は、こんなにおいしいと感じるようなものだったろうか。ごくごくと喉を鳴らして息継ぎもせずに、中に入っていた水をすべて飲み干してしまった。途中であ、とか、ちょ、とか声が隣から聞こえていた気がするが、それはとりあえずのところ気にしないことにした。そしてしばらくののち。
「ふぅ……ありがとうございました、おいしかったです!」
空になった水筒を返し、お礼を言う。本当においしい水だった。まるで、生まれて初めて飲んだような。
「‥‥‥名前は。」
軽くなった水筒を恨めしそうに受け取りながら、彼は言った。水を飲んだおかげでずいぶんと頭のすっきりした私は答える。
「私は、初見といいます。はつみ、なのかです」
私の名乗りに、彼はこういった。
「ふむ……、ハツミ。珍しい名前だ。ナノカ村というのはどこにある。ここらでは聞いたことのない地名だが」
確かに初見という姓は珍しいかもしれない。しかし、彼は今なんと言っただろう。
「ナノカ村‥‥‥?」
「あぁ。服は小ぎれいだがこんな地べたに荷物も持たず共もつれずに寝ているんだ。家名持ちというわけでもないだろ?」
いぶかしげな顔で私の顔を見る彼。
「私は日本人なので、初見が姓で、なのかが名前ですよ‥‥‥?」
とりあえず私の知っている常識で答える。海外では姓と名が逆なのは知っているが、私、日本人だし。
「ニホンジン‥‥‥?何を言っているかがわからんが、姓というのは家名のことか?」
「家名…、まぁ、家名といえば家名ですね。初見家の長女です。一人っ子ですけど」
家名なんて言葉を使った経験は私のこれまでの日常ではまずないし、私は母さんと二人暮らしだったから、彼の言う、(おそらくはこの世界では貴族的な扱いである)“家名持ち”なんて大した身分ではないけど、事実は事実として伝えておく。
「ふむ……変な奴だな。世界樹街から犯罪都市経由での落ちぶれモノか…?」
何やらすごく失礼なことを言われている気がする。
「‥‥‥まぁいい。ここは農業都市の管轄内だ。本来なら怪しい奴は縛って連行すべきだが俺も今別件で忙しい。じゃあな」
そういうと彼は私に背を向けてどこかに行こうとするが、一歩踏み出してから、空になった水筒を見てため息を一つついた。
「‥‥‥くそ」
悪態を一つつき私のほうを見向きもせずに反転して歩いて行った。引き留める暇もなかった。夕焼けに照らされていた周辺は赤の濃さを増して、だんだんと黒に染まっていく。なんとなしに彼の歩いて行ったほうを見ると灯りのともっているのが見え、人工的なものがあるとわかる。さすがにこの世界の夜がどうなるかはわからない。よくあるファンタジーだと、たいてい夜は危ない。見回しても街灯はなく、日が落ちれば本当に真っ暗になりそうだ。
太陽の反対からは月が一つ上ってくるのが見えた。今日は晴れているから星もよく見えるだろうが、やはり見知らぬ世界の夜は怖い。
よし、あの村を目指そう。知っている人もあっちに向かったようだし。
私は、彼の歩いて行ったあとを急ぎ追いかけた。追いつければラッキーなのだが。
今日のおしゃれワード:夕焼けに照らされていた周辺は赤の濃さを増して、だんだんと黒に染まっていく。