Chapter 0 - World is mine
Plotは完成していますが当初の予定よりかなり壮大になりました。毎日更新予定です。次からはいくらか読みやすいのではないかと。。
君たちは人生において、なんらかの物語を読んだ、経験した、想像した、創作した、あるいは___した、実現したことがあるかと思う。多分理解できなかった箇所があるかもしれないが、それは君たちの存在がまだそれを理解することができないからで、決して君個人のせいではない。なるべくはそのような齟齬が発生しないように今は語ろうかと思う。
これはすべて一つの体系立てられた管理下で実際に起こっていることで、一部は見聞きしたことがある話かもしれないが、まぁ、歪んで伝わっていることがないわけではない、あるいは一般的だから、私がある程度言葉を尽くして語ってみようかと思う。別に必要があるからとかではない。ただ、そういうこともあるというだけだ。
さて、君たちは自身の生命活動における目的を考えたことがあるだろうか?君個人であれば存在世界における富を求めたり、あるいは種全体で考えれば生殖活動によって次代につないだり。これは君たちの生きる次元ではおそらく一般的な思考だと思う。
それでは、私のほう、管理者から見たときの君たちを生み出す理由は何だと思うだろうか。
君たちの生きる星、ELN-392366、君たちの呼び方だと地球、において君たち人類の存在は、明らかに同じELN-392366に生きる他の生物とは違うことが実感できていると思う。我々はこのような存在のことを、我々のことを認識し理解しようとすることができるという意味で知的生命体と定義している。
ここで大事なのは、理解しようとすることができる点だ。認識するという意味であればはっきり言って、君たちよりはむしろ他の生物のほうが先入観などがないために優れている。我々を理解しようとするプロセス。このプロセスこそが君たちを知的生命体たらしめている。君たちの世界では科学と呼ばれる法則を理解しようとする試みが発達し、さらなる謎に阻まれながら、これを解決することで物事を進めようとする。これはほかの生物には存在しえない行動で、我々から見れば、この過程において我々への理解を行おうとしているといっていい。
話を戻そう。我々管理者は、君たち地球を常に観測している。それは何のためか。君たちが一定のレベルにたどり着く経過を見るためだ。ここでいう一定のレベルとは、君たちの世界の場合であれば「科学」が我々の望むレベルにたどり着くことをいう。つまり、こういうことだ。
世界は多次元で成立していることは聞き及んでいるかと思う。そして世界の存在が3次元であることも君たちの中では一般的だと思う。しかし。君たちの本来存在するべき次元は4次元だ。一般的に3次元といわれ、それを強く信じている人もいるだろうがそれは違う。君たちの存在する軸に対しては時間という軸が、他3次元を構成するすべての軸に対して___になるように流れている。そして本来であればすべての軸に対しては自由に移動できる。
しかし君たちの存在する宇宙、ELNにおいては4次元軸、つまり時間軸に対して自由な移動ができず、一方通行で不完全な世界だ。それゆえにBugが多く発生し、複数の管理者が適宜ことの対処に当たっている。この管理の必要がなくなるようになってもらうこと。これが君たちというELNに置ける知的生命体の存在理由であると理解してもらいたい。君たちの世界で想像するには392366以外の星に宇宙人というのがいて、それは君らよりもはるかに先に進んだ技術を持っているらしいが、それは大抵の場合ほかの___からの訪問者であると思ったほうがいい。君たちの宇宙で一番進んだ技術を持っているのは君たちだ。それに寄与しているいないにかかわらず、先人の努力を誇るといい。
……まぁ、君という個人が私の話を理解する必要は実のところないし、わかってもらおうとも思っていない。時間軸でいうところのあと1000年くらいは最初の計画立案時に予定されているし、私が今回こんなところに姿を見せたのも単なる気まぐれだ。神というのは存外忙しいが暇な時も多分にある。またどこかで君とお目にかかることもあるだろうが、その時君は私のことは気づかないだろうし、気づいても何の感慨も持たない。少なくとも私個人としてはそうあってほしい。そもそも我々のあり方というのは……
「話が長い」
ん?あぁ、君も写りに来たのか。いいよ、場所を変わろう。なれないことをするものじゃないね。たまの気まぐれに前に立って語ってみたが、途中から自分でも何を言っているかよくわからなくなった。もういっそ流れに興に乗せて好き放題しゃべってみたが途中で破綻していないか不安でね。見ている人がこれを聞いたら上にさかのぼってあらを探してくるんじゃないかと気が気じゃない。
「___は?」
あぁ、言われてたアレなら今は舞台の真ん中で寝ているよ。ご指定通り17歳、女の子。家族は母一人。良い設定だね。うるさく泣きわめくこともなく、夢を見ることもなく。与えられた現実に沿ってよろめきながらも歩きそうだ。物語を作るには向いてないが箱庭を歩かせるには最適だ。しかし、なんだい、君の箱庭はもう休眠状態じゃなかったのか。君は飽きっぽいからな。
「ちゃんとメンテナンスはしてる」
そうかい。まぁ、時間の流れも何もないんだ。好きに作ってかき混ぜて壊して作り直すといい。スパイスが欲しくなったらパプリカを一つまみだ。オセアニアでは常識さ。
「また何かに影響されて」
ふふ。細かいことは気にするなよ。しょせん彼ら彼女らにとっては人生なんて泡沫なんだ。ご飯が炊ける間で人生を楽しむことができるっていうじゃないか。好きなようにパレードを楽しむといい。
「‥‥‥はぁ。まぁ、そうするよ」
言外のThank youが聞こえたね。いえいえ、どういたしまして。
……行ったみたいだね。それでは喜劇らしく、始まりは以下のように。
さてさて紳士淑女、老若男女。皆様、こちらの箱をどうぞ覗いてみてください。ちゃちな箱庭ではありますが、因果の紐は絡みもつれ。アンドロイドが電気羊の夢を見るように、人々は泡沫の夢を見て前に進みます。それが自身の幸せか他者の幸せか。他人の不幸が蜜の味となるかは見てのお楽しみ。
それでは、箱庭年代記、はじまり、はじまり。