悲しき人の世。愛おしき人の世。
2025.09.19 一部表現変更。
2025.09.20 エピソードタイトル変更。会話一部修正。
2025.10.10 セラフィーナの姓が間違っていたのを修正。
私にはもう一人のお母様ともいうべき人がいます。
彼女は時間をくれました。
四十数年にわたる苦闘の末に彼女が得た時間を、「人の世を生きろ。人生を楽しめ」と、私にくれたのです。
そんな優しい彼女に、優し過ぎる彼女に、私は失望を与えたくはありません。セラフィーナに与えた時間は無意味だった、と絶対思って欲しくないのです。
けれど、人の世を生きるとは、人生を楽しむとは、結局のところ、どういうことでしょう。どう生きたら、人の世を生き、人生を楽しんだ、ことになるのでしょう。
わかりません。私はまだ十五歳。人生を語れるほどの経験を持ってはいないのです。
だから、考えます。
考え続けるのです。
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「パット~」
王都へ戻って来て一月近くが経ちました。
最初の一週間こそは、帰郷の挨拶回り等、あれやこれやで忙殺されたものの、次第に平穏な日常を取り戻し、今では二人とも学院に戻り、恙なくこれまで通りの日々を送っています。
(私とセラフィーナ様の二か月にわたる不在は、見分を広めるための長期旅行に出たこととなっていました。これは貴族子弟にはよくあるとのこと)
そして、精霊廟から一緒に戻られ完全回復されたメイリーネ様も、晴れて来月から学院へ通われることとなりました。新たなる同級生です。……と言いたいところではありますが、私達の一つ下、一年生としてででした。
「パットってば~」
メイリーネ様が、ソファで読書をしていた私の肩を盛大に揺すって来られました。
「はい、はい。何ですか。メイリーネ様」
「やっぱり、私も、お姉様やパットと同じ二年が良い。私だけ一年なんて嫌。私、化身経験者よ、さんざん国を守ったんだから少しは優遇しなさいって、学院に言いに行こうかしら」
「行くのですか?」
「まあ、行けないけど……」
ちょっと意地悪でした。化身の存在は王国の重要機密。簡単に振りかざしてよいものではありません。
「とにかく! 学習レベル的には問題ないんだから、学院は融通利かな過ぎよ。頭固過ぎ、固すぎのこんこんちきよ!」
「こんこんちきって……。まあ規則は規則ですからね、守りましょうよ」
「もうっ、パットまで! 貴女も学院の味方するのね! パットなんてもう嫌い、フーンだ!」
頬を膨らませ首を振られるメイリーネ様。
そのなんとも可愛い姿、愛らしいしぐさはこちらの庇護欲をそそって来ます。ムムム。可愛さなら負けないぞー……って、最近自信無し。
セラフィーナ様はメイリーネ様について、「妹は私と全然違います。人との距離をつめるのが、とても上手なんです。私にはあんな風には到底できません。羨ましい限りです」と言っておられましたが、ほんとお上手。
知り合って短い時間しかたっていないのに、恋人たるセラフィーナ様が、未だ私に『パティ様』であるのに、メイリーネ様は『パット』『パットってば~』と愛称呼び。
そんなメイリーネ様なので、私もつい、
「言いましたね、お返しです。メイのバカ!」
などと言ってしまったりします。やばっ、今の聞かれてませんよね。
私達が座っているソファから少し離れたところに置かれている丸机で、書きものをされているセラフィーナ様を覗き見しました。私の恋人様は、少々嫉妬深いのです。
ホッ。
どうやら私の失言(?)は耳に入っていないようです。セラフィーナ様はペンを止め、何事かを一心に考え事をされているご様子。その表情は真剣そのものです。そのあまりの真剣さに、『セラフィーナ様。そんなに眉間に皺をよせ続けていては取れなくなってしまいますよ。リラックス、リラックス』と声をかけたくなります。
けれど、何をあのように一生懸命考えておられるのでしょう? 聞いてみようかしらと思い、ソファから腰を上げかけたところ、セラフィーナ様の方が先に立ち上がられました。
「これからお父様のところへ行ってまいります」
そうとだけ言って、何の為とも述べず私達の返事も待たず、廊下へ繋がる扉へと歩いて行きます。その何らかの決意を秘めたような背中を見て思いました。
これはついて行った方が良い……。
恋人としての直感でした。
「メイリーネ様。私も一緒に行ってきます。良いですか」
「え、ええ。はい……」
少し戸惑い気味のメイリーネ様を残し、セラフィーナ様の後を追いました。
私は何度もセラフィーナ様に、『何でも二人でですよ』と言っています。そして、彼女もそれを了解しているのです。だのに、直ぐに一人で抱え込もうとする。悪い癖です。本当に悪い彼女の癖です。
「セラです、入ります」
公爵様の書斎の扉を開けるいなや、セラフィーナ様は話を切り出しました。
「お父様、私と皇太子殿下の婚約の解消を発表して下さい。直ぐに発表して下さいませ!」
「なんだ藪から棒に……」
机に書類が山積みの公爵様は、不機嫌そのもの。
まあ、仕事を中断させられた上、セラフィーナ様のマナーを完全無視した所作と、いきなりの要求を鑑みれば、これは仕方のないことでしょう。公爵様とて聖人ではありません。
「解消の発表はお前達の卒業を待って、と前に言っただろう。これは王家の関わる問題。早急にはいかん、時間をかけて、じっくり根回しをして、双方になるべく害が及ばない状況を作り上げてからするべきものだ。だいたい、まだ布石もされてない今、二人の婚約解消を発表してみろ、殿下もお前も、口さがない連中には格好の餌食になってしまう」
顔を顰めながら公爵様は続けました。
「いいや、違うな。何故かこういう時に責められ、罵られるのは主に女性の方だ。やれ『セラフィーナ嬢はあんな顔して、実は性悪だったんだ』とか、『あんな素晴らしい殿下なのに、他の殿方と浮気したのよ』とか絶対言われるぞ。お前の評判は地に落ちる」
「かまいません。殿方とではありませんが、殿下との婚約中にパティ様に恋してしまった私に、浮気者のそしりを免れる権利はありません。彼ら彼女らは正しく、間違っては――」
「正しいとか、間違ってるとか、そういうことを言ってるじゃないんだ!」
私は温厚な公爵様がここまでの大声を出されるのを初めて聞きました。公爵様は彼の大きな手をセラフィーナ様の両肩に置き、言い含めるかのように語り掛けます。
「セラ、何故わからない。私は、お前にそのような辛い目にあってもらいたくない。お前を日陰者にしたくないんだ。皇太子殿下との婚約を決めてしまったのは私の失態だ。だから私がきちんと解決する。時間をくれ……、頼む」
公爵様の愛娘のことを大切に思う親心に胸が痛みました。
持ち上げられた者は、必ず叩き落される。
これは人の世の理です。
セラフィーナ様のもともと高かった世間での評価は……、貴族社会での評価は、演劇祭での活躍や、オーレルムの奇跡の立役者『オーレルムの聖なる乙女』ということもあいまって、高まりに高まっています。つまり、格好の獲物なのです。
セラフィーナ様が失敗をすれば、瑕疵を露呈すれば、人々は掌を簡単に翻すでしょう。自分自身のことは全く棚に上げて。
人の不幸は蜜の味。
この快楽に逆らえる人は少数派です。悲しいかなとっても少ないのです。私自身、今日まで「あの子ってさー」などと何度言ったことでしょう。何度、嘲ったことでしょう。
「……お父様」
セラフィーナ様は公爵様にまっすぐに顔を向けられました。そこには先ほどまであった険しさが消えています。あるのは……切なさの籠った悲しい笑み。
「私のような至らぬ娘をこんなに思って下さってありがとうございます。何たる幸せ者であることか。ですが、メイリーネのことも考えてあげて下さいませ」
「メイのことをか……」
「そうです。今の状態がメイにとってどれだけ残酷であるかは、お父様にもお分かりになるでしょう。形だけとはいえ、私は彼女の愛する皇太子殿下の婚約者。メイと殿下は心から想いあっているのに、逢瀬をしたければ、愛を語りたければ、人目を避け続けねばなりません。そして、人目のあるところでは、私の妹、殿下の婚約者たる私の、単なる妹、という立場を甘受し続けねばならない。こういう者を、どういうか知っておられますか?」
もう良いです、もう良いです。セラフィーナ様。
公爵様はわかっています。わかっていつつ、貴女のことをどうしても優先してしまうのです。人の愛とは、そういうものです。そういう悲しいものなのです。
そう告げたかった。告げようとしました。
「日陰者です」
私の口は動きませんでした。動けませんでした。
「お父様、メイリーネを、あんなに王国のために、皆のために頑張ってくれたあの子を、そんなものにしてはなりません! 絶対にです!」
公爵様の書斎は、今や裁判所のようでした。判事はいません。いるのは検事、被告人、弁護人。
検事はセラフィーナ様。被告人は公爵様。そして、弁護士は私。
セラフィーナ様原理主義者たる公爵様は、あろうことかセラフィーナ様自身から告発されたのです。弁護人の私はいる意味無し。ただの無能。
「……わかった。お前の言う通りにしよう」
裁判は終わりました。私達は負けました。
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翌日、公爵様は王宮へと出向かれました。その結果、二人の婚約解消の布告は、一週間後になされることに決まりました。予想よりかなり早くの発表です。公爵様、頑張って下さいました。
********
公爵様の書斎を辞した後、私は、セラフィーナ様にようやく語りかけることが出来ました。
「セラフィーナ様。公爵様の貴女に辛い思いをしてもらいたくないというお気持ち、わかってあげて下さいね。そうでないと公爵様が可哀想です」
「そうですね。お父様のお心は嬉しく感謝の気持ちでいっぱいです。でも、ひたすら明るく振舞う、振舞おうとするメイを見ているのが辛くて……」
「……そうですか。それで思い立たれ、婚約解消の発表を訴えられたのですね」
「はい」
メイリーネ様の明るさに対する違和感は私も最初は感じていました、ですが、日々彼女と接するうち、だんだんと元々こういう性格の娘、屈託のない陽気な娘なんだと思うようになって行きました。なんて馬鹿で、なんて卑怯なのでしょう。
姉に対するコンプレックスまみれの彼女が、屈託のない陽気な娘な訳がありません。私は自分自身をだましました。セラフィーナ様に都合がいいように……、自分に都合が良いように……。
私は弁護人などではありませんでした。公爵様と同じ被告人だったのです。口など動けよう筈がありません。
自分がとても情けなく、その分、ますますセラフィーナ様が光り輝いて見えてきました。
「それに、一応言っておきますが、私は悪口や誹りなどどうでも良いです。全く恐れていません」
「ええっ、全くですか?」
「はい、全く」
セラフィーナ様、いつからそんなにお強く……。男子三日会わねば刮目せよとは、よく言われますが、男女関係ないのですね。
「ただ、申し訳ない……と思う気持ちはあるのです」
「申し訳ない? 誰にですか?」
「友達にです。私と仲良くしてくれた皆。一緒に頑張ってくれた皆にです。私に、皇太子妃、王妃となる未来は最早ありません。そのことを知った時、彼ら彼女らは、どんなにガッカリすることでしょう。どんなに……」
「セラフィーナ様……、それは……」
「だから申し訳なくて、本当に申し訳なくて……。謝罪ならいくらでもしたいと思いますが、どんな謝罪をしたら良い――」
「この話、もう止めにいたしましょう」
「え?」
「セラフィーナ様がそのような罪悪感を抱くなら、私も同じように抱かねばなりません。貴女の未来を変えてしまったは私なんですからね」
「あ……、いえそのあの」
「二人手を取り合って仲良く落ち込みますか? 『悪いのは私達~~、もうどうにでもして~~』って」
私はおどけて見せました。セラフィーナ様に少々腹を立ていることと隠したかったのです。
「フフッ。それも良いかもですね」
「えー。良くないですよー」
セラフィーナ様。
人は間違います。
間違うべくして間違います。
公爵様も間違いました。私も間違いました。そしてセラフィーナ様、貴女も間違えています。
皆は、ガッカリなんてしません。
謝罪など欲しがりません。
皆は、私がこの世で一番愛する貴女の友達なんですよ。
そんな者達であって、たまるものですか。
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「被告人、セラフィーナ・アリンガム。立ちなさい」
何にが起こっているのでしょう。頭の理解が追いつきません。
「本日、当法廷へ、パティ・フォン・ロンズデール嬢より貴女への告発がなされた」
パティ様が私を告発?
「罪状は『侮辱罪』」
侮辱罪って……。
「告発人、パティ・フォン・ロンズデール。告発趣旨を述べよ。……告発人!」
「裁判長。ロンズデール嬢はとうに帰られました」
「な、なんと! 告発人が不在とな」
「何でも今日、王妃様、マティルダ陛下とのお茶会があるのよね~、とかほざいて、もとい、申しておりました」
「ムムム、王妃様とのお茶会とな。それでは致し方ない。告発状をこちらへ、私が、直々に代読するとしよう。被告人は耳をかっぽじってよく聞くように」
「あの、ヴェロニカ様。これはいったい何をやっておられ――」
「ここは法廷である! 裁判長閣下と呼べー!」
ほんと、何なのこれ。
今朝、ヴェロニカ様、バイサム侯爵家御令嬢からの使いの者がやってきました。その使いの者が申すには、真に急で申し訳ないが、本日昼過ぎ、私に侯爵邸にヴェロニカ様を訪ねて欲しいとのこと、なんとしても来て欲しいとのこと。
ヴェロニカ様は学院入学以来のお友達。私に関係する方々の取りまとめをなさって下さっています。そんな御恩のあるお方です、無下になど出来よう筈がありません。私は急遽決まっていた予定をずらし、とっても心配しながら彼女の屋敷を訪ねました。
『彼女に何かあったのかしら、私に助けを求めねばならない何かが……。神様、どうかヴェロニカ様に難事が降りかかっておりませんように!』
その結果がこれ。
私は、ヴェロニカ様をはじめ、私と仲良くして下さっている御令嬢の方々が、壁を背にしてズラッと一列に居並ぶのを前にして、ポツンと一人、部屋の真ん中に立たされています。
ヴェロニ……、もとい裁判長閣下は、受け取ったたった一枚のぺらい告発状を一瞥した後、私に再度顔を向けました。
「この告発状を読みあげる前に、先に聞いておきたいことがござる。よろしいかな、被告人」
ござる…………。もうどうにでもなれ、と思えて来ました。
「何でしょう」
「この告発状に、貴女と我が王国の輝ける星、麗しき皇太子、セドリック・アリエンス殿下との婚約が解消になったとロンズデール嬢は記しているが、これは本当であるな?」
王宮からの発表は三日後です。
なのに、パティ様。どうしてこんな先走った真似を……、どうして……。私は動揺しながらも、なんとか返事をしました。
「はい、本当です……」
「では、代読する」
ヴェロニカ様のお声は朗々と部屋中に響き渡りました。
「私、パティ・フォン・ロンズデールは、セラフィーナ・アリンガムを告発するものなり。彼女は先日、彼女と皇太子殿下の婚約が解消になったことに対し、『皆に申し訳ない。どんなにガッカリするだろう、失望するだろう。どう謝罪したら、どう謝ったら!』などと、方々の温かき誠意を、方々の熱き御友情を愚弄しました。こんなことがあってよろしいでしょうか? 否、あって良いものではあません。よって私は、セラフィーナ・アリンガムを侮辱罪で告発します。どうか、彼女に天の裁きを! 天なる罰を!」
「あー、なんて酷い、私は貴女様との関係を、地位だの、権力だの、名声だの、財力だの、そういう世俗を超えた関係、本当のお友達だと信じていましたのに~! 悲しいですわ! よよよ」
ヴェロニカ様の右横に立っていたマクシーネ様、カルバート子爵家御令嬢が、ゆっくりと崩れ落ちました。
「ほんに、ほんに……。よよよ」
左横に立っていたリネーア様、ハイネット伯爵家御令嬢も、これまた、ゆっくり崩れ落ちます。
カン! カン! 小槌が打ち鳴らされました。
「では、決をとる。被告人セラフィーナ・アリンガムは有罪であるか、無罪であるか、有罪なら挙手を!」
部屋にいる私以外の手が、一斉に上げられました。
そして、私の手も……。
「全者一致! よってセラフィーナ・アリンガムは有罪。この場全員の肩もみの刑に処す!」
この日の夕方、私の過ちを正してくれたパティ様にお礼を言うために、ロンズデール家を訪ねました。
パティ様。ありがとうございます。私は愚か者でした。本当に愚か者……、
ですが。
「ええっ! ホントに揉んだのですか!」
「ええ、もみもみしましたよ。総勢十一人、一人残さずたっぷりと揉ませて頂きましたとも。 皆様、『気持ちいい。あー極楽!』と大変満足して下さいました。メアリー様に至っては、プロの揉み師になれるとまで言って――」
「セ、セラフィーナ様が、もみもみ。筆頭公爵家御令嬢の貴女が、もみもみ。ひっ、苦しい! お腹が! お腹が!」
「そんなに笑わなくても! 貴女のせいですよ、貴女の」
「すみません。ヴェロニカ様が、まさか肩を揉め~なんて言い渡すとは思っても。けれど、けれど……。セラフィーナ様が、もみもみ。『お客さん、凝ってますねー』もみもみ。 ダメ、やっぱりダメ、全然ダメ、助けてー!」
どうやら、パティ様は勝手に笑いのツボにはまってしまったようです。
「ヒー!」
こうなってしまっては落ち着くのを待つしかありません。
階下の方からアンナの声が聞えて来ました。
「お嬢様、どうしましたかー。何かありましたかー」
パタパタパタ。パタパタパタ。パタパタ。
その温かき足音に、頬が緩るみます。胸の中がいっぱいになります。
大丈夫。
大丈夫だ。
私達はちゃんと人の世を生きている。
ちゃんと生きて、人生を楽しんでいる。
このまま行こう
このまま、皆と共に……、パティ様と共に……、
頑張って生きて行こう。
皆、大好き!
パティ様、大大大好き!!
「アンナ。パティ様ったら酷いんですよ。とっても酷い方なんです」
■ 揉み師 セラフィーナ 営業日誌 ■
もみもみ。
『セラフィーナ様。わたくし達、以前から貴女と殿下の結婚は無いのではと、薄々思っていましたのよ』
もみもみ。
『だって、セラフィーナ様、全く殿下のことお話になりませんもの。わたくし達が、話を振っても一言二言で終わってしまって、あー、これは……、と、どうしても思ってしまいますわ』
『ですね。あのような素晴らしき殿下と婚約していて、まったく話題にしないなんて普通ありえませんもの。私なら一日中だって喋り続けますよ』
もみもみ。
『まあ、政略結婚、白い結婚、世にいくらでもございますけれど、わたくし達は貴女にはそういう目にあってもらいたくないなーと思っていたのです』
『そうです、そうです。私達のセラフィーナ様には愛のある結婚をしてもらいたいです。いつか良き殿方に巡りあえますよ。殿方は星の数ほどおられるのですから』
もみもみ。
『星の数ほどねー、でも、見つからない時は、とことん見つかりませんよね』
『その時はその時。パティ様とでもくっついちゃいませな。仲良しこよしのお二人なら、女同士でも幸せになれるんじゃありませんこと。わたくし達、祝って差し上げますことよ。オホホ!」
ドキン!
もみもみ!もみもみ!もみもみ!もみもみ!もみもみ!
『ちょ、ちょっ、痛いですわ、セラフィーナ様! 指に力が入り過ぎですわ! 冗談です、冗談ですってー!』