足りないのは……。
2023.10.24 セラフィーナの行動と感情表現、一部修正。
私とパティ様のメイリーネを救うための奮闘は、三日目に入っています。
食事と短い仮眠以外は殆どぶっ通し。さすがに十五歳(私)、十四歳(パティ様)と、若い私達でも、疲労の蓄積は隠すことは出来ません。二人とも、髪は乱れ、体は汗と垢にまみれています。
「うぷっ!」
失礼。思わず自らの胸元から立ち上る臭気にむせてしまいました。(パティ様も先ほど、変な声を発しておられたのはこれだったのですね)一応、花も恥じらう乙女である私達であるのに何たること!
「セラフィーナ姫、これを。パティ姫も」
側巫女が、湿らせたタオルを持ってきてくれました。ありがとう。ふう、生き返る。巫女頭が隣にやって来ました。またですか。
「姫様、化身様の治療はいったん中断し、どうか休息をお取り下さい。化身様の状態もかなり戻ってまいりました、どうかお願いでございます」
私達のことを気遣ってくれてのですが、今、それを受け入れることは出来ません。
「そうはまいりません。ここで止めれば、また悪化して、これまでの努力が水の泡になる可能性が大きいです。ここは化身様の意識覚醒まで一気にたたみ掛けます」
「一気に! そのようなことをすれば姫様方のお身体が持ちません、特に――」
「お小言は後、今は化身様の治療が最優先です」
私は巫女頭の諫言をいなし、パティ様に呼びかけました。
「パティ様、強化魔法をお願いします。貴女の力で私の魔法を更なる高みへ! あ、譲渡魔法が先でしたね。いくら疲れてるからって、私ったらもう!」
もう少し、もう少しです。パティ様。
頑張りましょう、パティ様!
「……」
しかし、パティ様はタオルを持ったままの棒立ち、返事を返してくれません。どうされたのですか? お加減でも悪いのですか? と問いかけようとしたその瞬間。パティ様の身体はグラリと揺れ、大理石の床に向かって倒れ始めました。
必死のダイブで何とかパティ様の肩と頭部を確保し、彼女を致命的な激突から逃すことは出来ましたが、私自身は盛大に背中を打ちつけました。しかし、そんなことはどうでも良いことです。
「パティ様! 大丈夫ですか! お怪我はありませんか、パティ様!」
私は泣きました。
意識を失ってしまったパティ様を胸に抱きながら、泣き続けました。
***
一昨日、精霊廟本殿に設置された祭壇に上り、メイリーネを見た時、私は眼が熱くなるのを抑えられませんでした。
パティ様が呟かれました。
そうでしたね。パティ様は夢の中で妹と会っているのでしたね。
「違う。私が知っているメイリーネ様と全然違う……」
本当にパティ様の言う通りです。敷かれたマットレスの上に横たわる妹は、王都にいた頃の彼女とはまるで別人でした。バラ色に輝いていた頬は色を失い、ふっくらとしつつも伸びやかだった肢体は見る影もなくやせ細っています。艶やかだった豊かな髪もバサバサ……。
このあまりにもな彼女の姿に、私は自分勝手な怒りを他者に向けました。(巫女頭、側巫女の皆。申し訳ありませんでした)
「貴女達! どうして化身様がこのようになる前に対処しなかったのです! 化身様の状況を、お父様へちゃんと報告していましたか? していたらお父様からの適切な指示があった筈です。どうして!」
「姫様。私達は化身様に再三再四、過度なご無理はお止め下さいとお願いしました。公爵様からも『王国は他の国々に比べればまだまだ大丈夫。自愛するように、休息をとるように』との指示が化身様に来ております。しかし、化身様は休んでは下さいませんでした。『自分は化身だから、王国を、王国の民を守る責任があるから』と祭壇に上り続けられました」
それでも彼女達には、何とかしてメイリーネを止めて欲しかった。
しかし実際は無理なのです。精霊廟にいる者は大精霊アレクシスとの契約に縛られています。最終的には、大精霊の代理人たる化身の判断に逆らうことは出来ません。
「そして、化身様は終には『未来予知の術』にまで……」
未来予知ですって!
心の中で悲鳴を上げざるを得ませんでした。あれは万全の状態でも大変な術、術の使用後、三日は寝込んでしまうという術なのです。そんなもの過労で衰えきったメイリーネが使って良いものではありません。
ごめんなさい、メイリーネ。
貴女をこんな辛い目に会わせてしまったのは私、こんな悲しい状況に追い込んでしまったのは貴女の不甲斐ない姉である私……。
本当にごめんなさい。
この償いは何としてでもしたい、何としてもする。
だから頑張って、機会をちょうだい。
お願い……
逝かないで、メイリーネ。
私達は、メイリーネの治療を始めました。
今回、メイリーネを助けるためには二つのことを並行して行わなければなりません。一つは、彼女の衰え切った身体の回復。これは普通の回復魔法で対応出来るので側巫女達にやってもらいます。
そして、二つ目が私とパティ様の担当。メイリーネが陥っている状態異常の緩和。
今のメイリーネは加護の力の発動中に倒れたため、術が中途半端なところで止まった状態。それ故、大精霊から流れ込む精霊力は、絶えず流入し続け、彼女の身体の中を荒ぶり彷徨い続けています。このような状態は当然良いことではありません。というか最悪です、パティ様に教わった下町の若者の流行り言葉で言うと、
めっちゃあかん。
側巫女の回復魔法の効きが悪いのも、これのせいです。これの!
ですので、この異常状態を緩和しなければなりません。そのために使うのが異常状態回復魔法「キュア」です。
え? どうして異常状態の回復ではなくて緩和なのか? ですか。それは今回の異常というか、対処する敵が、魔力を遥かに超える精霊力という難敵だからです。完全にやっつけることなど殆ど不可能。緩和がやっとでしょう。
でも、緩和が出来ればメイリーネの意識が戻ってくる可能性が高くなってきます。そして、意識が戻れば化身たるメイリーネは、精霊力の制御はお手の物。自ら自分自身の状態に対処できます。
つまり、メイリーネはもう大丈夫。助かったということです。
私は最初から渾身の魔法をぶつけました。
「我、大いなる神より寵愛を受けし者、魔力を授けられし者」
術式展開。メイリーネを取り囲むように三つの魔法陣を形成。
「我は命ず。我が妹、メイリーネの中で彷徨う大精霊アレクシスの力よ、存在意義を失いし悲しき力よ。メイリーネの中から消えよ。汝が主の下に帰るのだ」
手印を結び、神言(※文字通り神の言葉)を三度唱える。
「神は天の理。この世に神を超える理無し」
「神は天の理。この世に神を超える理無し」
「神は天の理。この世に神を超える理無し」
印を解放。
「命に従え、我の命は神の命」
術を解放。
「最上位状態異常回復魔法、エクストラル キュア!!」
その瞬間、魔法陣から膨大な光がメイリーネに降り注ぎ、彼女を包み込みました。それは聖なる光、穢れを正す浄化の光。その光度は圧倒的で目を開けていられない程です。巫女頭や側巫女達からの称賛の声が聞えて来ました。
「姫様、よくぞこれほどまでに精進なされました」
「姫様方、素晴らしい。なんて凄い魔法なのでしょう。これなら化身様も……きっと」
しかし、結果は惨憺たるものでした。
「嘘でしょ……」
放ったエクストラル キュアは簡単に打ち消され霧散しました。
今のメイリーネは化身、大精霊の代理人。そのような存在を助けるのは大変困難なものであるのはわかっていました。ですが、エクストラル キュアは本当に最上位の状態異常回復魔法。王宮の魔術師長だって使えるかどうか(多分使えないでしょう)のものなのです。それなのに、ここまで効かないなんて……。
予想を遥かに超える無力さでした。ですが、このことは逆に私達の闘志を掻き立てました。
「パティ様。私は今、猛烈に腹が立っています、パティ様は如何ですか?」
「同じです。めっちゃ腹立ってます」
ねえ、アレクシス様。どこからか見てるのでしょ。
どこからか見て、私達の非力さを笑ってらっしゃるのでしょ。
私を笑うのはかまいません。けれど、今の私の魔法は私だけのものじゃない、パティ様の助けがあってのもの、二人の賜物!
パティ様は忙しい日々の合間を縫って、強化魔法の練習に励んでくれました、磨き上げてくれました。
「パティ様。どうしてそこまでされるのですか? パティ様のバフはもう十分過ぎるレベルだと思うのですが……」
「セラフィーナ様。どんなに頑張ってもブロンズランクの私の魔法は、セラフィーナ様には遠く及びません。でも、強化魔法だけは違う、貴女の隣に立ち、貴女を助けることが出来る。それがとっても嬉しいのです。バフは縁です、私を貴女と繋いでくれた大事な縁の一つなのです。それ故、私は大切にします、疎かにはいたしませんよ」
そう言って笑顔をくれる彼女から、私がどれだけ喜びをもらっていることか、愛を感じていることか。
だから、私の魔法を笑うことはパティ様を笑うこと。そんなこと、私は絶対に許しません。
こうして私達は奮起し、私にかけられた強化魔法が減衰する度に、強化魔法の多重掛けの回数を増やし、魔法の出力を上げて行きました。最初の頃は一回目同様、全然ダメでしたが、次の日の朝を迎える頃には段々効果を見せ始めました。塵も積もれば山となる。
「化身様の体温、呼吸、少し良くなっておられます! それに血色も!」
そして、もう一昼夜治療を頑張り続けた今、メイリーネの容態はかなり良くなりました。もう少し良くなれば、(希望的観測かもしれませんが)メイリーネの意識も戻って来ることでしょう。
私は少し安堵していました。そして、欲をかきました。
このまま一気に行こう!
巫女頭たちの「休息をお取りください」を何度も無視しました。その結果……、今は私は寝台に横たわり眠るパティ様と共に、祭壇の隣にある控えの間にいます。彼女の手を握りながら自責の念に打たれ続けました。
私は、どうしてこうなのか?
どうして、いつも周りの人に、愛する人に不幸を呼んでしまうのか?
パティ様はとうに限界を超えていたのです。彼女のランクはブロンズランク。最上位のプラチナである私に比べ、遥かに小さな魔力槽しか持っておりません。しかるに、今回、そのささやかな魔力槽はとんでもないフル稼働をまる三日近く行いました。
強化魔法の使用による放出が百回近く、私の譲渡魔法による魔力の受け入れも同じく百回近く。
魔法を使える者、知る者であれば、これは狂気のさたであり、パティ様に極めて大きな負荷を与えてしまう愚行であることは、簡単にわかるでしょう。でも、私は気づきませんでした。
何時でも、私の頼みを快く受けてくれるパティ様。
何度も、私の窮地を救ってくれたパティ様。
いつの間にか、そんな彼女を、私は万能の人のように思ってしまっていたのです。どんな時でも、私を助け、導いてくれる人。永遠に私を愛し寄り添ってくれる人……、そんな都合の良い人はこの世にいる筈はないのに……。
パティ様は、私を愛し守ってくれる人ではありますが、同時に、私が愛し守らなければならない人。私や他の皆と同様、強さと共に弱さをも持った普通の人なのです……。
なのに、なのに、なのに私は!
巫女頭の年を重ね少し硬くなった手が、私の肩におかれました。
「姫様、もう泣くのはお止めされませ。大丈夫でございますよ、パティ姫は一時的な過労です。半日もされれば目をお覚ましになるでしょう。言葉は悪いかもしれませんが良いタイミングでした。姫様も一緒に休んで下さいませ。是非、そうなさいませ」
「でも、そろそろ私はメイリーネの治療に戻らないと……」
「姫様、頭が悪くおなりになりましたね」
「え?」
「パティ姫の助け無しにどうするというのです。姫様だけで、あの凄き魔法を使えるのですか?」
「それはその……あの……」
当然と言えば、あまりにも当然な指摘。私は顔を赤らめざるをえませんでした。そんな私に巫女頭は、優しき言葉、そして、切なき言葉をくれました。
「姫様。良き人と巡り会われましたね、倒れるまで尽くしてくれる人など滅多におられませんよ、本当に良かったですね」
ええ、ほんとに。ありがとう、巫女頭。
「私にはそういう幸せは訪れませんでした。だから私には姫様方が眩しくて仕方ありません。姫様、パティ姫を大切になさいませね。そして、どんなことがあろうと、あの人の手を絶対放してはなりまんせんよ。絶対に絶対ですよ」
はい……、はい。
巫女頭は若き頃、大侯爵家との縁談を断ってまで、精霊廟の側巫女に志願したと聞いています。彼女は多分、いえ、きっと私と同じなのでしょう。同じ苦しみをもって生きて来た。私より長く、何倍も長く……。
「では、私は化身様の下へ戻らせて頂きますね」
控えの間から出て行く彼女の背中に向かって、頭を下げました。
パティ様は、半日後きっかりに目を覚まされました。
過度な疲労がある程度解消されたせいでしょうか、かなり元気を取り戻しておられ、すぐにでも治療に復帰したいと仰って下さいました。ですが、流石に倒れたばっかりで、それは無いでしょう。私もかなり疲れていますし、もう少し休みましょうと、更に半日休んで頂きました。
パティ様は、「えー、私は大丈夫ですよー」と、ブチブチ言っておられましたが、直ぐに眠りに落ちられました。やはり、まだまだ疲れておられるのですね。休んでもらって良かったです。
こうして丸一日休み、パティ様と私は完全復活。治療に戻りました。
しかし時間とは正直なものです。一日という時間は、メイリーネの容態にきっちりと影響を与えていました。一旦、かなり良くなっていたメイリーネの状態は、半分ぐらい元に戻っていました。
この悪化を解消するため、丸一日をかけました。せっかく取れていた疲労が……。この後も、『私達が休む、メイリーネが悪化する』は繰り返されました。
何時まで、こんなイタチごっこを続ければ良いのでしょう?
永遠に続けるわけにはまいりません。体力にも気力にも限りがあります。では、どうすれば……、わからない、全くわからない。
打開策を見いだせない私はパティ様に頼りました。これ以上ないくらい協力して頂いているのに、申し訳ない。本当に申し訳ないです、パティ様。
「メイリーネの中の精霊力は、エクストラルキュアでかなり抑えました。身体の衰えの方だって側巫女達の回復魔法で戻っている筈です。十分状況は改善しています、なのに、あの子は意識を取り戻してくれません。どうしたら取り戻してくれるのでしょう?」
「うーん、そうですねー」
パティ様は腕を組み、小一時間ほど考え込んでおられました。そして……。
「セラフィーナ様。もしかしたら私達は近視眼的過ぎるのかもしれませんね」
「近視眼的? どういうことですか?」
「私達は、メイリーネ様の体のことばかりに目が行き過ぎているということです。問題は他にある。つまり、精神的な問題では。メイリーネ様に何があったかはわかりませんが、何かショックなことがあったのでしょう。そして、『もう生きていなくても良い』とでも思ってしまったのではないでしょうか」
「そんな!」
思わず、大きな声を上げてしまいました。
「だったら、私達に出来ることは何もないです。精神に働きかける魔法など何処にもありません!」
私の断定を、パティ様はあっさりと否定されました。
「ありますよ。精神に、心に働きかける魔法はあります」
パティ様があまりにも自信たっぷりに話されるので、つい嫌味な口調になってしまいました。
「私は古今東西の魔法について勉強しました。その私が知らない魔法をパティ様が知っているとは思えないのですが……」
「セラフィーナ様も知っておられますよ」
「え? 私も?」
「はい、知っておられます。それは『愛』です、『愛情』です」
愛……、愛情……。
心がチクリと痛みました。
「言っては悪いというか、真に申し訳ない言葉なのですが、私達はメイリーネ様への愛が足りないのです。愛の容量が全然足りてないのですよ」
パティ様の言葉に、異を唱えることが出来ませんでした。
可哀想な妹、メイリーネをなんとしてでも助けてあげたいと思っています。この気持ちに嘘はありません。けれど……。
私はメイリーネが私を疎ましく思っていることを、以前から知っていました。そして、そのことに対し、何ら改善のためのアクションを起こしませんでした。自分のことで手いっぱいだった私は、家族であるのに、「嫌うなら嫌うが良いさ」と放置してしまったのです。そんな私に、妹への愛情が十分あるとは到底言えません。
忸怩たる思いで尋ねました。
「では、どうしたら良いのでしょう」
「ある意味簡単です。メイリーネ様への愛情たっぷりの人を祭壇に連れて来るのです」
「メイリーネへの愛情たっぷりの人って…………」
でも、その人は……。
「話を進めましょう。セラフィーナ様、マルグレットは魔法が使えたりしませんか?」
「え? え? 今一つ脈絡が……」
「まあまあ、脈絡のことは置いておいて質問に答えて下さいませ」
「それは彼女は平民なので、当然使えな……」
ん? ん? ちょっと待てよ。以前、メイリーネがマルグレットは父親の顔を知らない、それどころかどこの誰かもわからない可哀想な境遇だった、それなのにあんな凄い人になった。ほんと偉い、尊敬する! と言っていたのを聞いたことがある。だったら全く可能性が無い訳じゃない。色濃く貴族の血を受け継いでいないとは言い切れない……。
※いくら貴族の血を継いでいても、あまりにも薄ければ、魔力を持つ可能性は殆どありません。(四分の一、八分の一とかでの実例は皆無です)
そう言えば、メイリーネはこんなことも言っていました。
「マルグレットは何でも出来るのよ、何でも。お姉さまの専属とは大ちがいでしょ」
あの時のメイリーネの得意そうな顔といったら。メイリーネは、ほんとマルグレットのことが好きでした。大好きでした。
「パティ様、もしかしたら」
マルグレットは……と、言おうとした時、大きな爆裂音が響き渡りました。それは外から、門のある方角からでした。
本殿の中は騒めきました。巫女頭は即座に、側巫女や控えていた騎士達にメイリーネと私達を守るように指示し、一人の騎士には外の様子を見て来るように命令を出しました。
しかし、その命令は必要ありませんでした。外にいた騎士の一人が本殿に駆けこんで来たからです。巫女頭の声が響きます。
「何事があったのです! 敵襲ですか!」
「いえ、そうではありません! メイドの一人が、マルグレットと言う名の方が、中に入れないことに焦れて、結界に破ろうと爆裂魔法を放ったのです! 敵襲ではありません!」
マルグレット……、貴女ねえ。
気持ちはわかりますよ、気持ちは。けれど、これは流石に分別のある大人がやるべきことじゃないでしょ。それに化身の結界が、少々の爆裂魔法くらいで破れる訳が……
ん? 爆裂魔法? 魔法?
マルグレットが魔法!!
心の中で呆れかえりました。
パティ様。貴女は魔法使いなのですか? いえ、実際に魔法使いではある訳ですけれど、そういう意味じゃなく……。ほんと何なのです? 何なのです、貴女は!
パティ様が笑顔で仰いました。
「道は開かれました」
そうですか、道は開かれたのですね。良きことです。私は思考を放棄しました。
「さあ、セラフィーナ様。マルグレットを、彼女のマルグレットを迎えに参りましょう」
「はい、参りましょう」