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決戦2日前

おはようございます。

第98話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とてもとても励みになります。

楽しんで頂けたら幸いです。

 さて、魔王会議から約一ヶ月経ち私達は明日来る厄災との戦いに備えて白夜の国の寒さや戦い方に慣れるために軍を引き連れて訓練を行っている。


「豚汁の配布ですよー‼ちゃんと皆に行き渡るように作っているので焦らないでくださーい‼」


 訓練も終わり皆で休んでいると訓練終了後のお楽しみが配られる声が聞こえて来る。

 声の方を見ると暁の国から派遣されたアライさん達が戦闘要員兼給仕係として差し入れを配っている。

 毎回の事ながら暁、白夜、黄昏の軍の人数分の食事や差し入れを用意してくれる手腕がすごいと思う。

 今日は豚汁か・・・


「アライちゃ~ん、ちょっと具が多めなのくれよ~。あと人の姿を見せてくれよ~。同じ暁の国のよしみだろ~?」


 配布に並ぶ兵の一人がアライさんにウザ絡みしている。

 正直、口説くのなら他所でやって欲しい。配給の邪魔・・・あの様子を見るに彼は転生者ではないだろう。転生者は私の知っている限りフェルとオウル以外はアライさんをちゃん付けで呼ばない。


「ハイドさん、皆に平等に行き渡るように具を入れているのでそんな依怙贔屓は有りません。それと次に僕の事をちゃん付けで呼んだらその玉毟り取るので覚悟してください」


 アライさんは何ということなく男をあしらうと手際良く豚汁を配って行く。


「あれ?コハクさん。今日はこっちの担当だったんですね」


 私の番になり私に気付いたアライさんが豚汁を渡しながら話しかけて来る。

 アライさんの配布分は私で最後みたいだ。


「うん、全体の動きを見る為とは言え結構しんどかったよ。明日が最後のお休みで明後日が本番だからね。いくら演習しても足りないけどやりすぎも良くないしね・・・」

「緩める所と締める所の塩梅が難しいですね」


 アライさんと話しながら豚汁を受け取っていると唐突に隣から声が聞こえて来る。


「う~ん、ピッグ味噌スープベリーデリシャス‼」


「「トムさん⁉なんでここに⁉」」


 いつの間にかそこに居た人物に驚き二人で思わず声を上げる。

 当の本人はそんなこと気にせずに豚汁を楽しみながらのんびりと私達の疑問に答える。


「ヘイ、ガールズ食事の場で騒ぐのはよくないですよ。食べ終わるまで少し待ってくださイ」

「「あ・・・すみません」」


 うん?今ガールズって言ったけどアライさんが怒ってない?どうしたの?

 そんな疑問が混じった視線をアライさんに向けると私の視線に気づき視線から言いたい事を悟ったのか何とも言えない表情で答えてくれる。


「しょうがないんですよ・・・反論したくても小さい頃から知っている仲ですし、ある種、暁の国で二番目に強い人ですからね・・・勝てないんですよ・・・」


 え・・・トムさんってそんなに強いの・・・?確かに昔、先代の黄昏の魔王に素材寄越せって殴り込みに行って鱗を何枚か手に入れたって話は聞いてたけど・・・

 遠い目をしているアライさんをしり目に私は豚汁に口を付ける。うん、美味しい・・・


「さて、ワタシがここに来た理由ですが、注文の品を届けに来ましたヨ」


 自分の分の豚汁を食べ終わり唐突にトムさんは話を始める。

 全く持って暁の国の住人は自由人すぎる・・・てか、注文の品?

 私が頭に?マークを浮かべているとトムさんは背中のリュックを降ろして五着の衣服を取り出し自慢そうに口を開く。


「一ヶ月で五着、大変でしたがどれも最高の品にすることが出来ましタ・・・お納めください。勇者達5人分の戦闘服でス」


 そう言って敷物の上に並べられた衣服を見て一月前に注文をしていた狗神君達の戦闘服だと気が付く。しまった・・・今の今まで忘れていた・・・

 それにしても、また見事なぐらいに軍服がモデルになっている・・・私のコート以外に持っている戦闘服(コユキ時の色違い)やフェル達の戦闘服が揃いの軍服風衣装なのも狗神君達の戦闘服が軍服風なのもトムさんの趣味だろう・・・まぁ、高性能で動きやすいから何も問題ないんだけどね。


「トムさん。態々、ありがとうございました。これ代金とお礼金です」


 私は、アイテムボックスから金貨の入った袋を取り出しトムさんに渡す。

 トムさんの服は良い物だけど値段の問題で全員に行き渡らせることが出来ないんだよね・・・昔、小父様に買って貰ったドレスも後で値段を調べて青ざめましたとも・・・


「あい、確かに頂戴したヨ」


 トムさんは中身を確認すると袋を懐に仕舞い込む。

 さて、じゃあ、これらの装備を皆に渡しに行こうか、決戦前にトムさんが届けてくれて良かった・・・

 私はアライさんとトムさんに一言断りトムさんの持って来てくれた服を持って狗神君達の元へと向かった。



 狗神君達の訓練場所に行くとそこにはさっき見た様な大鍋とそれを囲んで差し入れを楽しんでいる人達の姿が見える。


「はぁ~、温まる~」

「異世界で豚汁ってなんか面白い感じになりますね~」

「暁の国だと米とか普通に日本食系の物も食べることが出来たぞ」


 そんな中に男三人固まって会話をしている狗神君達を発見する。リルや夢菜さん達とは別行動中みたいだ。

 のんびりと話す三人に近づきとりあえず声を掛ける。


「や、お疲れ様」

「あ、コハク、お疲れ様」

「お疲れさん」

「コハクさん、お疲れ様です」


 声を掛けると三人共直ぐに返事を返してくれる。

 ちなみに勇者達は皆、私の事を名前呼びする用になった。私の体調が回復した後にどう呼べば良いかと聞かれたので魔族領以外で私の事を呼ぶ時の注意点のみ話して好きに呼んで貰って良いと言ったところ皆で話し合い名前呼びで決定したみたいだ。


「どうしたんだ?何か用事?」


 狗神君がお椀を持ったまま首を傾げ私がここに来た理由を聞く。


「うん、ちょっと前に頼んでおいた皆の装備が出来上がったから持って来たんだ。湊瀬さんと早乙女さんは何処にいるかな?」


 私の問いに男性陣は何とも言えない顔になる。

 え?何?何か言い難い事を私聞いちゃった?


「えっとね・・・湊瀬さんと早乙女さんはリルさんとマカさんと一緒にお風呂に行っちゃいました・・・これ僕が言って良いのか分からないけど・・・」


 全員で言い難そうにしていると両隣の先輩からの圧に負けたのか山辺君が顔を赤くしながら教えてくれる。

 うん、まぁ、確かに女性がお風呂に行ったって言うのは男性には言い難いかも・・・ごめんね山辺君・・・


「じゃあ、先に三人には渡しておこうか?」


 そう言いながら私は三人にそれぞれの服を渡していくと三人共何とも言えなそうな嬉しそうな顔をする。

 うん、やっぱり男の子に専用装備って言うのは憧れの物なのかもしれない。


「サイズはメイド達に聞いたものを伝えたから大丈夫だと思うけど一応、確認しておいてね」


 その一言を最後に私は女性陣の方に向かおうとすると狗神君から声を掛けられる。


「あ、そうだコハク、聞きたい事が有るんだけど・・・明日って本当に訓練を休みにしてしまって大丈夫なのか?」


 私は歩き出そうとしていた足を止め狗神君の方を向き狗神君の質問に答える。


「まぁ、不安に為るのも分かるけど気を張りつめすぎるのも良くないからね。それに・・・明日が最後になってしまうかもしれない人達もいるから・・・」


 私の言葉で察したのかさっきまで専用の装備にはしゃいでいた彼等は気まずそうに黙ってしまう。


「・・・えっと・・・ごめん」

「気にする必要は無いよ。私ももうちょっと言い方が有ったね。ごめんね。まぁ、こんな話をしちゃった後だけど明日はゆっくり休んで楽しんでよ。何かやりたい事が有れば手配しとくよ?」


 最後の方は明るい声音で話しかけると場の空気が多少軽くなり乾君が遠慮気味に手を挙げる。


「ドラゴンに乗せて貰う事って出来るか?」

「ドラゴン?要するに背中に乗って空を飛びたいって事?」

「そうそれだ‼」


 乾君は気を使ってくれているのか多少大げさに返事をして頷く彼に私は笑いながら答える。


「ネージュで良ければ私とあの仔の時間が合えば乗せてあげることが出来ると思うよ。他の飛竜種は明後日の戦いで使うから難しいと思うけどネージュはこの気候だし飛ぶのが好きだから問題ないよ」

「じゃあお願いできるか?」

「時間が合えばだけどね」

「コハクも明日は休みじゃないのか?」


 嬉しそうな乾君と話していると狗神君は時間が合えばという言葉に疑問を持ったのか首を傾げる。


「魔王は最後の調整をしないといけないから明日はフェルとオウルともう一度配置や戦術、ポーションやなんかのストックを見直す予定なんだよ」

「休み無しなのか?」


 私の言葉に狗神君は顔を顰める。


「まぁ、人の命を預かっているからね。休憩時間が有るからその時で良ければネージュに乗せてあげるよ」


 その言葉を最後に狗神君達と別れ私はお風呂に入っている湊瀬さん達の元に向かった。



次回は決戦前の休日に入り、少しだけ厄災を出す予定です。

ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。

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