着せ替え人形のなる事が決定しました
おはようございます。
第66話投稿させて頂きます。
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楽しんで頂けたら幸いです。
「ひゃあぁ‼」
皆の反応を見て一人で密かに喜んでいると唐突に私の目線が高くなり、不意な事だった為に情けない悲鳴が口から洩れてしまった。
・・・・人が人知れずこの格好の効果を喜んでいたのに一体誰⁉
驚きながら顔を後ろに向けようとすると後ろから聞きなれた声が聞こえて来る。
「久しいな。コハク、人間領から無事に戻って来たようで何よりだ」
「小父様‼」
私を持ち上げた犯人を見て思わず顔が綻ぶ。
そこには些か楽しそうな顔をしている小父様の姿が有った。
・・・ひょっとして彼等が驚いていたのは小父様が急に現れたから?
「クリストのおっさんもう来たのか?会議は明々後日だろ?」
「うむ、コハク帰還の連絡が来たのですぐに出て来た。色々と話を聞きたい事も有るのでな」
そう言いながら小父様は私を肩の上に乗せる。
わお・・・相変わらず3mも背が有ると視界が高い
「して、彼らが今代の勇者達か?」
「はい、目の前にいる彼が光の勇者の狗神和登君、右に居る子が風の勇者の湊瀬夢菜さん、左の子が白夜の勇者の山辺戌夜君、狗神君と対面しているのが暁の勇者の乾優君、その隣の子が水の勇者の早乙女光さんです。フェルとオウルの隣に居るのが法国の聖女のマカ・ネキネリスさんと私の親友のリリエル・ミューウェルクです。二人は狗神君のパーティメンバーです。皆、この方は穏健派の憤怒の魔王でクリスト・サムナーさんです」
小父様の質問に答え皆を紹介し皆にも小父様の事を紹介する。
狗神君はハッとした顔になり小父様に挨拶をする。
「あ、えっと、失礼しました。ご紹介に預かりました。狗神和登です」
それを機に皆の金縛りはやっと解けてきたようで口々に挨拶をする。まぁ、小父様はぱっと見は大きくて怖い顔だから固まってしまってもしょうがないかな・・・?
「うむ、皆、よろしく頼む」
「さて、挨拶はそれぐらいにして早く中に入ろうぜ。明々後日は会議だしそれ迄ゆっくり休もうや」
フェルが欠伸をしながら中に入るように促し私達は会議が始まるまで暁の国にお世話になる事になった。
他の魔王も途中までは馬車やなんかで移動して黄昏の国で転移装置を使うからそこまで時間も掛からないだろう。
「それにしてもやっぱり転移は便利だよなぁ、いい加減、技術を公開しろって話だぜ。なぁ、黄昏の」
さて、時間は過ぎ会議当日、会議の内容も粗方終了した時点で唐突に馬鹿が挑発気味に口を開く。相変わらず腹立たしい奴だ。まぁ、今からその顔を屈辱に染めてやるんだけどね。
「まぁ、提供してあげても良いけどね。でも、その代わり君達はどんな技術や物を提供するつもりかな?」
「あ゛ぁん?」
「まさか、対価も無しに提供して貰おうなんて思ってないよね?白夜も暁もそれ相応の対価と誓約を払って使っているんだよ?どこかの馬鹿みたいに無断で違法に使うのとは訳が違うんだ。そこら辺の所をどう考えているか説明してくれるかな?」
「テメェ、ふざけて・・・」
「まて、コハク殿、違法使用とはどういうことだ?」
私の言葉に怒り顔で噛みつこうとしたグリドを押し退け、転移装置の違法使用の話について傲慢の魔王から質問された。
「どういう事も何もそのまんまですよ。ルベリエさん。先日、勇者の一人を鍛えている途中で我が国の転移装置を不正に使用して人間界に攻め入った魔王軍が居たんです。しかも、黄昏の名を騙ってね。その軍と我が国に居た裏切者は始末しましたが、その国にももちろん責任を取って貰わなければ道理が通りません。なので、私は誰の差し金かわかっていますがその国の主にこの場を借りてちゃんと責任を取って貰おうと思っています。よって、私が星霊から得た情報は犯人が責任を取り、その他の魔王も誓約書にサインをし、魔術的な誓約をしなければ喋りません。文句が有るならどうぞ真正面からお相手させて頂きます」
私は、傲慢の魔王に笑顔で事の経緯を話しこちらの要求を話す。はっきり言ってそんな話を聞かなくても良いと言う人はどうぞご自由に私には関係の無い事だ。でも、一国の主なのだからそういう訳にもいかないよね。だって、皆、自分の国に厄災が着て欲しくないのだもの。
他の魔王、特に色欲の魔王や暴食の魔王、途中で仲良くなった嫉妬の魔王当たりは巻き添えになってしまうけど過激派を黙らせるには誓約で縛るのが一番手っ取り早い。もっと言えばグリドを下すのに他の魔王を使うのが一番労力が少ない。
えっ?フェルやオウルや小父様?もうこの事は話済みで了承を得ていますけど?
「・・・して、その誓約とは?」
傲慢の魔王の言葉に私は控え貰っていたアライさんに声を掛け魔法の誓約書を人数分持って来て貰う。
「一つ、厄災の襲来に対して襲撃の有った国に攻め込まない。
これは人間の国も含めます。
一つ、厄災と戦闘を行っている国の邪魔をしない。
一つ、被害にあった国の復興の支援
これは人間の国は含みません。
一つ、他国の技術を悪用しない。
一つ、各国に有る訓練場等の使用を無償での使用。
これは例えで言えば傲慢の国に有る。鏡の塔などですね。
一つ、約定を違えた国に対し誓約を誓った全ての国による報復を行う。
以上の事を守ると誓い尚且つ今回の犯人が責任を取るのならば星霊から得た情報である現状分かっている後の厄災の襲来日と襲来国を教えます。誓えない。又は犯人が出て来ないのならばどうぞ襲来に怯えて一生をお過ごしください」
私は、あくまで微笑む様に冷淡に席に座る魔王達に告げる。
私の言葉に結局、グリドは怒り顔で噛みついて来る。どうでも良いけど何でコイツ偉そうに意見できるんだろう?
「てめぇ・・・マジでふざけるのもいい加減にしろよ・・・大体、他の魔王共だってこんな誓約に素直に従う訳が———」
「はい、コハク、これで良いんでしょ?別に脅さなくたってこれぐらいやってあげるわよ」
「あらあら~いつも余計な事もやって貰っているから~、これぐらいの事なら協力しちゃうわ~」
「ふむ、コハク殿、これでよろしいか?」
「え?あっ、ありがとうございます。レヴィさん、アミルさん、ブブドさん」
グリドの声を遮り、レヴィさん達三人が誓約書にサインをして見せてくれる。
つい、驚いて素が出てしまった・・・
「ふむ、ここは従った方が吉であろう・・・」
「はぁ~、字を書くのも面倒くせ~」
アミルさん達の行動の速さに驚いていると更に驚くような声と共にサインされた誓約書が渡される。
・・・あれぇ~?皆、協力的すぎない?
「な・・・てめぇら何簡単にサインなんかしてるんだよ。誇りは無いのか?大体、こんなの無理に決まってるだろ‼冤罪を吹っかけて自分が優位に立とうとする策略だろ‼こんな横暴に屈するのかよ‼ふざけんなぁ‼」
そう言いながら武器を抜き突撃してこようとするグリドより早く動き手に握られている武器を弾き、首を掴んで壁際にそのまま押し付け、悔しそうな顔のグリドにそのまま声に殺意を乗せながら話しかける。
「無理?横暴?冤罪?ふざけている?馬鹿も休み休み言えよ?はっきり言ってこんな誓約でも交わさないと纏まらない魔王陣営の方が問題だろう?大体、まとまりが無いのはお前が原因だろ?あまり馬鹿を言っているのなら本気で滅ぼすぞ?私が最後のチャンスだと思い自分から言い出すチャンスを与えてやれば調子に乗りやがって、良いか?よく聞けよ、グリド・ロイド。お前が侵略行為を行った事を当然、私は知っている。その愚かな行為によって協力してくれる国と戦争になる可能性も有ったんだぞ?お前が侵略を命じた兵士の末路を教えてやろうか?私に殺された後、死体が残った物は皆、埋葬もされないで見せしめに使われたよ。愚かな王の命を聞いたばかりに可哀そうにな。お前の自殺願望に他人や他の魔王を巻き込むな。最後通告だ。まだ魔王としてここに座っていたいのなら王としての責任を取り賠償して誓約書にサインしろ。
大体、いつまでも穏健派とか過激派とか馬鹿じゃないの?やりたいなら全部終わった後でやれよ。お前の勝手な行動で私達の足を引っ張るな」
私の声音の冷たさに穏健派も過激派も勇者も何も言えずに黙り込む。
唯一、フェルとオウルが両隣で「やべぇよ、マジでやべぇ」っと小声で呟いているぐらいだ。
「コハク‼もうその辺にしておけ、この人死んじゃうぞ」
ギリギリと首を絞めつけていた脇から腕を軽く掴まれ、手を離してやるように声を掛けられる。
横を見ると些か心配そうな顔をしている狗神君の顔が見え、少しだけ冷静になる。
狗神君に大丈夫と答えグリドの首から手を離す。
「ガハ、ゲホ、ゴホ・・・」
咳き込むグリドを見下ろしながら私は止めの一言を吐き狗神君と共にそれぞれの席に戻る。
「特別だグリド。お前には選ばせてやる。素直に従うか、死か席に着くまでに決めろ。先に武器を出したのはお前だ。次は無い」
しばらくしてやっと呼吸を整えたグリドが立ち上がり悔しそうな顔で口を開く。
「クソ・・・わかった・・・今回の事はお前に従う・・・」
そう言いながらグリドは誓約書にサインをし、今回の騒動に関する賠償も約束した。
「では、コハク殿、星霊から聞いた情報について話して貰ってもよろしいか?」
その光景を見てルベリエさんはやっと一段落と思ったのか私にファクターから得た情報の共有を促してくる
「今から一月後、白夜の国に光刃、その二週間後、人間の国に支配、二か月後、憤怒の国に幻惑、人間の国に増殖、その二週間後、人間の国に厄毒、人災、三か月後、人間の国に殺戮、その二週間後、黄昏の国に虚無の順で厄災が襲撃して来る。残された時間はあまりない。襲撃に備えよ。との事です」
その言葉を最後に今回の魔王会議は幕を閉じた。
「レヴィさん、アミルさん、ブブドさん。先程は同意してくださりありがとうございました。それと、脅す様な事を言ってすみませんでした」
会議終了後、私は最初に誓約書にサインをしてくれたアミルさん達に御礼とお詫びを言いに近寄る。視界の端では狗神君がフェルとオウルに連れられて何か話しているのが見える。
「あらあら~、別に気にしなくても大丈夫よ~。あれぐらいやらないと過激派の人達は言う事聞かないでしょうし、グリド君は特に貴女に反抗心をもっているから~」
「事前に連絡ぐらいは欲しかったけどね。あ、お礼は化粧品とお菓子で良いわよ」
「あ、私の所に送ってくれるのはお菓子多めでお願いするわ~」
「コハク殿、俺の所にもアミル殿と同じで頼む」
ハハハ・・・しっかりしている。まぁ、それぐらいで済むのだから良いか・・・
「分かりました。後で各国の支部の子達に連絡して送らせてもらいます」
「あ、あと可愛い服も用意しておこうかしら~。施設を提供するならうちの国も来るだろうし、楽しみだわ~」
「面白そうね。アミルさん私も誘ってよ」
「分かったわ~」
「それだけは勘弁してください」
「ダ~メ♡」
・・・お願いです。本当に勘弁してください・・・
笑顔で語尾にハートマークが付いていそうなアミルさんの顔を見ながら私は絶望的な顔をする。こういう時は何故かレヴィさんも食いついて来るので泣きたくなる。
「それにしても良かったのか?誓約書にサインをさせたとはいえ転移装置の技術を強欲の国などに渡しても・・・」
不穏な方向に行きつつある御礼に関しての話をしているとブブドさんは若干心配そうな顔で転移装置のその後について聞いてくる。
はい?技術提供?あぁ・・・成程、グリドとそういう話をしている時に誓約書を出したから勘違いしたのかな?
「?いえ別に転移装置については技術提供しませんよ?誓約書には技術の悪用をしないとは書いていますが技術の提供については書いていませんし、何より私自身は誓約書にサインをしてないですもん」
「「「・・・ちゃっかりしている(わ~)」」」
そうなんだよねぇ~。皆何気にスルーしてたけど私は誓約書にサインしてないんだよねぇ・・・
呆れたような三人の視線を浴びながら一波乱有ったものの魔王会議は終わり。他の魔王は暁の国に有る転移装置を使ってそれぞれの国へ従者と共に戻って行った。
「じゃあ、私達も行くね。オウル、厄災の来る一週間前に兵と勇者君達を連れて白夜の国に行くから受け入れの準備をお願いね」
「あぁ、迷惑を掛けるな」
「それはお互い様だよ」
小父様を含む全魔王を返した後で私達も黄昏の国に戻る。
「オウルさん。一ヶ月ありがとうございました。」
「うん、夢菜と戌夜も元気でな。って言っても一か月後にまた会うんだけどな」
湊瀬さんがオウルに御礼を言い他の皆も口々に別れの挨拶をしている。
「和登、コイツの事頼むな」
「期待に添える様に頑張るよ」
別れ際にフェルが狗神君に何か言っている。
はて・・・誰の事を頼むのだろうか?
そんな事を思っていると転移装置が起動し、私達は無事に黄昏の国に戻る事が出来た。
少し、歩き城に戻って応接室でメイドの一人にメルビス達を連れて来るように頼む。
さて、メルビス達には今日、戻る事を連絡しておいたし、彼らが来たらまずは皆に連れて来た狗神君達の紹介と今後の予定を話して部屋を割り当ててあげないと・・・
「確保――――――‼‼‼‼‼」
今後の事を考えているとそんな声と共に私は複数人の何者かに取り押さえられた。
あと一回話を挟んで厄災との戦闘編になります。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




