白夜の国・2
おはようございます。
第94話投稿させて頂きます。
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「コハクも光の勇者を含めたパーティの子達もよく来たな」
「よく来たと思うなら毎回、実験室に研究中の危険な薬品を散布しないで貰いたいんだけど。てか、いい加減頭の上から降りて!」
「定位置に居て何が悪い?それに毎回、研究中の薬は体が痺れたりするが無害だぞ」
ポカンとした顔をしている三人を前に私は頭の上のオウルと話をする。てか、オウルの奴、結局、私の頭の上を定位置にしよった。
そして、オウルが頭に乗っているのを見てネージュ何時もの様に私の肩の上(自分の定位置)に戻って来る。
「はぁ、オウル。もう良いから白夜の勇者達の居る所に案内してくれる」
「何をそんなに急いでいるんだコハク?急いだって良い事なんて無いぞ?まぁ、急ぐ気持ちも分かるがな・・・わかった。案内しよう」
そう言いながら私の頭の上で右の翼を上げて案内を始めてくれる。
・・・どうでも良いけど自分で歩いてくれない?
「なんでしょう・・・なんだか物凄く面白い光景に為っている気がします・・・」
「コハクちゃんがコート姿なのがシュールなんだよねぇ・・・」
「あの格好じゃ無ければ動物に好かれている少女なのにな・・・」
オウルの案内に従って歩いて行くと後ろからそんな会話が聞こえて来たがここはスルーだ・・・
「お、ここだ。ここ」
オウルに案内されながら数十分城の中を歩いていると訓練室の前でオウルが声を上げる。
中からは兵士が訓練をしているのか剣のぶつかる音が響く。
「戌夜‼もっと懐に入られない様に気を付けるんだ‼他はだいぶ良くなったがまだ甘い所が多い‼聖武器を持っていると言っても武具が戦を決めるわけでは無い。使い手が重要だ‼だが、突きの速さは前より格段に良くなっているぞ‼」
「はい‼」
「夢菜‼走って的に中てる事を心掛けるんだ。一か所に留まれば狙い撃ちにされてしまうぞ。常に動いて相手に的を絞らせるな‼君の狙いは正確だ自信を持て‼」
「はい!」
訓練場の中に入ると一際大きな声で指導している声が聞こえて来る。
声の方に目を向けると白夜の勇者君と風の勇者さんが獣人の男性からそれぞれ訓練を受けている。
「お~い、ヴィレド、マティス、ちょっと大丈夫か?」
オウルが声を掛けるとヴィレドさん達は勇者二人に声を掛け私達の方に走ってくる。
「陛下、研究室から出て来られるなんて珍しいですね」
「あぁ、コハクに引っ張り出されたよ」
ヴィレドさんの言葉にオウルは少しだけ不満そうに答える。少しは外に出ろ引き籠り・・・
その言葉に苦笑いを浮かべながら今度はマティスさんが口を開く。
「黄昏様、お久しぶりです。人間領から帰って来たばかりなのにうちの陛下(引き籠り)を引っ張り出すのは大変だったでしょう?」
「お二人からもせめてトラップくらいは無くすように言ってもらえると幸いです」
「「いやぁ・・・・無理ですね」」
私の言葉に二人は揃って無理だと断言した。・・・ですよねぇ
さて、ここで少しこの二人について話しておこうと思う。ヴィレドさんとマティスさんは御兄弟でオウルの親衛隊だ。
勇者達の訓練をしていたのはそれぞれ槍と弓の名手だからだろう。
「いきなりで悪いが今から勇者二人を連れて暁の国に渡る。彼等に此処を発つ準備をさせてくれ。以降は黄昏の国で共同で訓練する事になる」
「「御意‼」」
「愛弟子を離れさせるような事になってすまないな」
オウルの言葉に二人は些か寂しそうに笑いながら首を振り勇者達の方に戻り彼等を連れて来てくれた。
連れてこられた二人は狗神君顔を見て驚いた後に嬉しそうな顔をして駆け寄って来た。
「先輩‼」
「戌夜、湊瀬さん。元気そうでよかった」
狗神君達はお互いの無事を喜び合っている。オウル達共良い友好関係が築けている様で一安心だ。
てか、白夜の勇者君と風の勇者さんは狗神君の後輩で私と同い年か・・・約一ヶ月前に彼等を見た時にはそこまで気にする余裕は無かったなぁ・・・
「マカさんとリルちゃんもお久しぶりです。お元気そうで何よりです」
「お二人も御無事で安心いたしました」
「夢菜ちゃん達も元気そうで良かったよ~」
一通り狗神君と話すと風の勇者さん・・・湊瀬さんはリル達と親しそうに話をしている。
あぁ、なるほど・・・途中まで一緒だったのだろうから当然、彼等もリル達と面識が有ったわけだ。
「それで先輩、この人は誰ですか?」
「うん?あぁ・・・この人は・・・」
戌夜君と呼ばれた白夜の勇者君は狗神君と一通り話し終えたのか私の方が気になったみたいだ。狗神君は私の性別も含めてどう説明するかを少々迷っているようだ。
「初めまして白夜の勇者君、風の勇者さん。僕の名前はコハク、不本意ながら頭の上の梟と同格の魔王である黄昏の魔王をやっている者です」
「丁寧な挨拶してるが気を付けろ。俺達、原初の魔王の中で一番ヤバ・・・うぐっ‼」
私のとりあえずの挨拶の後に余計な事を言おうとするオウルの点穴を突き黙らせる。誰が一番やばいって?私は一応、三人の中では常識人なつもりだよ‼てか、ヤバさで言ったら断然、フェル(農業魔王)とオウル(マッドサイエンティスト)の方が上でしょ・・・
「これの言った事は気にしないでくれると有難い・・・とりあえず宜しく」
頭の上でビクンビクンと悶え苦しんでいるオウルをほっといて私は戌夜君達に握手を求める。
戌夜君と湊瀬さんはオウルの事を心配そうに見ていたがヴィレドさんとマティスさんが何時もの事と言う様な顔で安心させると私の手を交代で握ってくれた。
「白夜の勇者をやらせて貰っている。山辺 戌夜です」
「風の勇者をやらせて頂いている。湊瀬 夢菜です。・・・・あの、ひょっとすると私達が操られている時に助けてくれました?」
湊瀬さんは名字で大丈夫だったみたいだけど戌夜君の名字は山辺だったのか・・・そして、湊瀬さんは私の事を何となく憶えていたみたいだね。
「そうだね。一応、君達の解呪は僕がやらせてもらいました」
「やっぱり、そうだったんですね。その節はお世話になりました。ありがとうございました」
湊瀬さんはそう言うと私に頭を下げてお礼を言ってくれる。山辺君もその様子を見て同じ様にお礼を言い頭を下げて来る。
「無事で何よりだよ。さて、詳しい挨拶やなんかは残りの勇者達と合流をしてからにしようか?オウルいい加減動けるようになったでしょ?私達はもう暁の国に移るから転移装置の部屋を開けてくれる?」
オウルを突っつき起こしてから私達は暁の勇者達との合流の為に白夜の国を後にした。
次回は暁の国に行きます。
あともう少しで件の厄災との戦闘に入る予定です。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




