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だからドレスは嫌いなんだって‼

おはようございます。第89話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

そして申し訳ありません。前回、後書きに戦闘を入れると書きましたがそこまで行きませんでした。

☆は和登視点、二個目の☆はコハク視点に戻ります。

楽しんで頂けたら幸いです。


「さて、じゃあ、習慣になりつつある今後の予定を話そうか?」


 夕食を済ませ食後のお茶を飲みながら私は(おもむろ)にそう言うと皆が私をゆっくりと見る。


「まず、予想より早く皆が帰って来てくれたんだけどまだこの国に用事が有るから約一週間後に黄昏の国に行く事になるよ」

「用事?」

「うん。まず、私は明日ちょっとした理由でこの国の王様に呼ばれていてそれに応じないといけないんだ。あと、5日後にカルルカに有る星詠み祭りを見に行こうと思っているんだ」


 リルの疑問に答えていると今度はマカさんが首を傾げる。


「それでは星詠み祭りまで何をするんですか?」

「うん、その事なんだけどね。星詠み祭りまで自由行動・・・つまり、4日間を長期のお休みにしようと思っているんだ。渡した冒険者ギルドの登録証を使って依頼を受けるもよし、街に出て買い物をするもよし、ゆっくりと体を休めるのもよしって感じでね。」


 私がそう言うとマカさんは不思議そうに言葉を続ける。


「5日後なら移動する事も含めて3日間では無いのですか?それとも転移魔法陣でカルルカに戻るのですか?」

「悪いけど今の私は転移装置や転移魔法陣をあんまり使いたくないんだ。だから今回はネージュに乗せて貰う。丁度良い事に私は明日この国の王に呼び出されているからね。ついでにネージュの飛行許可を貰って来るよ。この国は申請すればネージュが自由に飛んで 良い数少ない国だからね」


 マカさんの質問を最後に一通りの話し合いを終え、私達はそれぞれ体を休める事にした。

 深夜になりネージュが眠ってから私はベッドを抜け出し、寝室を出て隣の部屋に行き、アイテムボックスから各種の武器を作業台の上に並べる。

 狗神君の救出前に全装備をメンテナンスしたけど改めて手入れをする為だ。

 大量の血で濡れたであろうコートはルージェが洗濯してくれているから明日には乾くだろう。

 部屋に明かりを付け、再びアイテムボックス開き整備用の道具を取り出してから整備を始めようとすると控え目ドアがノックされた。


 ☆


 暗い廊下を歩きながら俺は誰にも会わない様に細心の注意を払いながらコハクの部屋まで歩く。

 深夜に女性の部屋に行くとか知られたら真面目に社会的に死ぬかもしれない。

 そう思うならこんな夜中では無く明日にすれば良いと思うのだが何となく迷宮で別れた時と此処で会った時とでコハクの雰囲気が違う様な気がしたのだ。気にしだしたら眠れなくなり聞きたい事も有ったので今、会いに行く事にした。

 何だかんだと考え事をしている内にコハクの部屋の前に着いてしまった。今更になって寝ているかもしれない可能性に思い至り、ドアをノックしようとする手を止めてしまう。

 眠っていたら明日にでも聞いてみようと思い。改めて控えめにドアをノックする。


「どうぞ」


 以外にもノックしてすぐに返事が有ったので俺は静かにドアを開け中に入るとテーブルに色々な武器を広げているコハクが目に入った。

 てか、俺達に割り振られた部屋も広かったけどこの部屋は比べ物にならないな・・・


「君は夜に会いに来るのが好きだねぇ~。昨日までダンジョンに居たんだからちゃんと休まないと体に悪いよ?」


 部屋のソファーに座りながら星読み亭で見たティーシャツに短パン姿と違ってネグリジェ姿な事に少しドギマギしてしまう。

 朱色の刀身の剣を右手に持ち左手に布を持ち刀身を拭きながら揶揄う様に話す。


「立っていると疲れるよ?座りなよ?」


 剣を拭う手を休めずに座るように促され大人しくコハクの右隣に座る。

 そうしている間にも刀身を磨き終えたのか次に油らしい液体を染み込ませている布で刀身を磨く。


「武器の手入れをしているのか?俺もやった方が良いのかな?」


 テーブルの上に乗っている剣や弓、他にも何か文様が刻まれているナイフなんかを見ながらポツリとそんな事を口走る。

 本題に入る前に話の糸口を見つけたかったのもそうだが一度も整備をしていなかった事を思い出してしまったのだ。


「絶対しなくて良いとは言わないけど、勇者や魔王の使う武器はあまり手入れをしなくても問題ないよ」


 俺の言葉を聞きながらコハクが剣を磨き終え鞘に仕舞い。次の剣に手を伸ばし、布で銀の刀身の剣を磨きだす。


「そう言うって事はコハクの剣は専用武器じゃないって事なのか?」


 コハクの言葉にふと疑問に思い聞いてみるとコハクは苦笑しながら答えてくれる。


「お察しの通り私の剣はちょっと他の物とは違うけど勇者や他の魔王の使っている《レジェンド》クラスの武器と比べるとワンランク下のクラスの《ユニーク》クラスの剣だよ。黄昏の魔王には何時からか分からないけど専用の武器は無いんだよ。この剣は二本とも先代の黄昏の魔王から譲り受けたものなんだ」


 手に持った剣を蝋燭の明かりに照らし汚れが無い事を確認するとコハクは再び油を染み込ませた布に持ち替え刀身を磨く。


「それで?ここに来たのはこんな事を聞きに来たんじゃ無いでしょう?」


 磨き終わった剣を鞘に仕舞いながら唐突にコハクに本題を切り出されしまった。

 ちょっと待って・・・・冷静に考えると心配だったから来たって結構キモイぞ・・・・


「あ~、いや、その~、間違っていたら申し訳ないし、ぶっちゃけるとこんな夜中にこんな事聞くのはキモがられるかもしれないけどもう覚悟して聞くよ。俺達と別れている間に何かあったのか?」


 その言葉を聞いてコハクは会ってから初めて見せる心底驚いた様な顔をし、直ぐに口を開く。


「なんで・・・そう思ったの…?」

「いや、何て言うか何となく別れる前と違って落ち込んでいるような感じがしたからだけど・・・」


 コハクは何とも言えないような顔を一瞬見せた後、苦笑する。


「あははは・・・実は明日の王城への呼び出しでドレスを着て行かないといけない事が決定していてね。私はドレスを着るのが好きじゃないから今から憂鬱なんだ」


 その答えに直感的だけど誤魔化されたと思った。

 お恐らくだけどまだそこまで信頼されていないのだろうと思う。まぁ、まだ出会ってそんなに時間が経っていないから当たり前か・・・・

 これ以上踏み込んだ事は聞かない方が良いだろう・・・もっと信頼関係を築く事が出来れば色々な事を話して貰えるだろう。


「そっか、大丈夫なら良いんだ。それとさ、明日からまた剣の稽古付けてくれるかな?俺も他の奴らに負けていられないしね」

「うん、良いよ。朝一からで大丈夫だよね?」

「あぁ、それで大丈夫。それとさ・・・俺のギルドのタグなんだけど名前の変更って出来ないかな…ワコのままだと女装して依頼受けないといけないし・・・」

「じゃあ、明日は無理だけど明後日にギルドに行こうか?支部長に話をすれば色々融通して貰えるかもしれないし、私も支部長に用事が有るからね」

「それでよろしくお願します。じゃあ、俺は部屋に戻るよ。明日も早いしね。お休み、コハク」


 明日の予定を話した後、俺はそう言って席を立ちドアを開け外に出る。


「お休み、狗神君。ゆっくり休んでね」

「ああ、ありがとう」


 武器の手入れを中断し、ドアまで見送ってくれたコハクに礼を言いドアを閉める。


「こちらこそ、心配してくれてありがとう」


 ドアを閉める瞬間コハクが何かを言ったような気がしたが声が小さく俺には聞き取ることが出来なかった。


 ☆


 お店に付いている庭からカンカンと木と木がぶつかる音が響く。

 はっきり言って驚いた。数日、目を離しダンジョンに放り込んだだけで彼の動きが格段に良くなっている。

 詳しく言うとダンジョンに放り込む前よりも正確な軌道と倍以上の手数で攻撃を繰り出してきて更に前は引っ掛かってっていたフェイントにも引っ掛かり難くなっている。

 実戦形式は結構良かったみたいだね・・・でも、まだまだ課題は多そうだ・・・


「うん、今日はこれくらいにしておこうか?」


 彼の放った横切りを一歩後ろに避けながら私は今日の稽古の終わりを提案する。


「わか・・・った・・・あり・・・がとう・・・ござ・・・いました」


 私の言葉に息も絶え絶えに返事をする彼に苦笑してしまう。

 とりあえず、そろそろ呼吸の方法も教えてあげた方が良いかな?まぁ、呼吸法やなんかは私より別の人を付けた方が良いか・・・


「お湯を入れて貰っているから汗を流して朝食にしようよ」


 私達は交代で汗を流し、朝食を取ってから午前中は各々自由に過ごした


 各々が自由に過ごした午前中が過ぎ、私は呼び出された王城に向かう為の身支度をルージェ達と共におこなっているとルージェはいつも私が着ているシンプルなドレス(これだって私的には動きに違和感が出来てあまり着たくはない)ではなく今年の若い御令嬢向けのトムさんの新作ドレス(何色も有るサンプルの中でも特に若い女性向けの可愛らしいピンク色)を持ってきた。


「ルージェ、とにかく話し合おう・・・ディオルド陛下に会いに行くのにそんなに可愛いデザインでなくて良いし、そもそも色やデザインが可愛すぎて私には似合わない。だから冷静になっていつも通りのドレスを持ってくるんだ」

「主様、全然問題ございませんわ。主様に良く似合う物を選んでありますので無駄な抵抗せずにとっとと着てくださいませ?」


 私の必死の抗議に物凄くニコニコしながらルージェがドレスを両手で持ち近づいて来る。

 私は思わず一緒に準備を手伝ってくれていた二人に助けを求める。


「メイ、ジュン、二人も見てないでルージェを抑えて私のドレスを持って来てよ‼」

「主様、申し訳ありませんがその御命令は承知致しかねます。私達はメイド長から主様がドレスを着たら必ず写真に収める様にと命を受けております」

「そ・れ・に主様が新作のドレスを着た写真をお店に飾ればドレスの売り上げが上がるのでこのチャンスに撮っておくに越した事は無いですよねぇ~。あと、お城からのお迎えも来てしまいますので早く着てください」

「う、うらぎりものーーーーーー‼‼‼‼‼」


 結局、私は三人と30分程部屋の中で追いかけっこをし、妥協案として色はピンクでは無く薄い紫色という事で話は収まった。


「全く持って時間を無駄にした・・・」

「主様が素直に着ないからです」

「写真を撮るのにも時間が掛かってしまいました」

「まぁ、でも、お迎えにはまだまだ時間が有りますねぇ~」

「・・・私か?私が悪いのか?私の意見を一切取り入れようとしなかった君達が悪いんじゃないのか?」


 部屋を出ながら私が抗議の声を上げると三人は私の所為という雰囲気を醸し出しながら後に続く。全く持って数の暴力だ・・・民主主義など滅びればいいのに・・・

 三人の意見に反論しながら階段に向かうと向かいから狗神君が階段を上がって来た。

 彼は私を見て驚いた様な顔で足を止める。


「コハク⁉」

「どうしたの?」


 はて?鳩が散弾銃を喰らったような顔してどうしたのだろう?私のこのドレス姿が似合わな過ぎて驚かせただろうか?


「狗神様は主様がお綺麗だと思いますよねぇ~?」

「え?は?うん・・・思うけど」

「この方、これで似合わないというんですよ?世の女性を敵に回していると思いませんか」


 メイとジュンが瞬時に狗神君の近くに行き、何やら呟いているがここで話に入ると面倒くさい事になりそうなので話題を変えよう。


「そういえばリルとマカさんは何処かに出かけたの?」

「え、あ、うん、二人でネージュを連れて少し街の中を歩いて来るって言っていたよ」

「そっか、狗神君は、この後は部屋に居るの?」

「一応、その予定かな」


 他愛も無い話をしてから別れようとすると私と狗神君の会話を聞いていたルージェが良い事を思いついたと言う様な顔で口を開く。


「狗神様、この後特に御用事が無いのでしたら主様に着いて行って頂けませんでしょうか?主様は慣れないドレスですので手助けして頂ける方がいるとわたくし達も安心ですし、クラシア王国以外の王族とも繋がりを持つ良い機会かと思い提案させて頂きます」


 ルージェの言葉に狗神君は困ったような顔で私を見る。

 うん、まぁ、招待状には今代の勇者も連れて来られたら連れてきて欲しいと書かれていたし、連れて行っても問題は無いのだろうけど今からする話は面白い話じゃないし、何よりディオルド陛下が何を考えているのか分からない以上、彼を連れて行って厄介事に巻き込むのも忍びない。


「コハク、問題が無いのなら俺も着いて行っていいかな?」


 私が答えあぐねていると狗神君の方から着いて来てくれるとの返答を貰った。

 そうなったら私には拒否する選択は無いだろう・・・


「狗神君が着いて来てくれるというのなら何も問題は無いよ。良かったら着いて来てくれる?」

「あぁ、よろしく」


 私の答えと彼の返答を聞いた途端、メイとジュンが狗神君の脇を両側から掴み固め、動けなくする。


「は?」


 ルージェはその様子を見て近くの部屋のドアを開けて待機する。


「では、主様、もう少々お待ちください。10分程で準備を終わらせてまいります」

「お手柔らかにしてあげてね?」

「え?は?ちょ?どういう状況?」

「今から着替えますので大人しくしてくださいねぇ~」


 唖然とした顔の狗神君を二人はズルズルと引き摺って行きルージェが開けた扉の奥に連れて行く。

 呆然としたままの彼は部屋の奥に消えて行きバタンと扉が閉まる。

 恐らく10分間じゃ終わらないだろうなぁ~、写真も撮られるんだろうなぁ~、玩具にされるんだろうなぁ~、狗神君、何と言うか・・・ごめんね?

 恥ずかしがって悲鳴を上げる彼の叫びを聞きながら私は密かにドアの向こうの彼に黙祷を捧げた。


ちなみに狗神君の着替えには20分ほど掛かり写真も本人に許可を取り後にお店の宣伝に使われます。

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