ただいまって言ってます。
おはようございます。第81話投稿させて頂きます。
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楽しんで頂けたら幸いです。
☆
「はぁ~・・・」
慌ただしい午前中の店番を終え、落ち着いた時間帯に目を通した新聞に書かれている大きな見出しを見て私は思わず右手で頭を押さえて溜息を吐いてしまう。
「お母さん、どうしたの?」
溜息を吐いた私を心配した6歳になる愛しい息子が心配そうな顔で聞いてくる。
「大丈夫よ。シエロ。あっちでお父さんとお爺ちゃんのお手伝いをしてあげてくれる?」
息子の頭を撫で奥で午後の準備や食器を洗っている父さんや旦那の方を手伝ってくれる様に頼む。
「うん、お父さん達を手伝って来るね」
大丈夫だとシエロに伝えると心配そうな顔を一転させニパッと笑い、奥に駆けて行く。
全く我が息子ながら可愛らしい。さて、それは置いといて・・・
私は再び溜息の原因である新聞に目を戻す。
新聞の見出しには大きな文字でこう書かれている『クラシア王国に魔王強襲‼処刑間近の勇者を連れて逃亡⁉魔王と勇者は何処に?』
その記事の下には最近できた技術である写真がデカデカ貼ってあり、そこには真っ黒のコートを着て二本の剣を振るう人物が乗っている。
「はぁ~・・・」
その写真を見て私は再び溜息を吐いてしまう。どっからどう見ても写真の人物は私のよく知るあの子だろう・・・と言うか約4ヶ月前にこの国が厄災の獣というものに襲われた時あの子は最初この姿で現れたのだから間違いない・・・
あの子と別れてからあの子は何回か家に帰って来ていたがあの子が魔王だと知った時には心底驚いた。それと同時に8年前のあの子の苦悩に気付いてあげられなかった事を後悔したものだ・・・
彼女は家に帰って来るたびに手伝いをしてくれて非常に助かったのだが今思えば家は魔王様に給仕や書類の整理の手伝いをして貰っていたのか・・・
て、そうじゃなくて‼あの子はこの後どうするつもりなのだろう?恐らくクラシアからは追手が掛かっているだろう・・・一体どうするつもりなのだろうか・・・
今、この瞬間も追われているであろう彼女の事を心配していると不意にガランと店の扉が開く。
「あ、いらっしゃ・・・」
「ただいま~」
何時もの常連さんだと思い声を掛けようとすると私の声を遮り聞き覚えのある呑気な声で中に入って来る。
その声を聞きヘナヘナと全身の力が抜けるのと同時に安堵する。
星読み亭にただいま~と言って入って来る子は一人しかいない。
「ニアさん、お久しぶりです」
予想通りの少女が笑みを浮かべながら立っている。何と言うかこの8年で本当に美人に成長したものだ。
私は受付から立つと彼女の顔を見て笑いながら声を掛ける。
色々言いたい事は有るけどまずはこの言葉が先だろう。
「お帰り、コユキ」
コユキはニッコリと笑いながら私に抱き着いてきた。
☆
「お元気そうで何よりです」
「コユキも元気そうで良かったわ」
星読み亭に入りニアさんの顔を見た瞬間、私は笑みを浮かべニアさんに抱き着くとニアさんも昔と変わらず優しく抱きしめ返してくれた。
4ヶ月前に私が魔王だと明かした後も変わらず接してくれるのが物凄く嬉しい。
「新聞で貴女がクラシア王国を襲撃したと知って心配したのよ」
「心配させてごめんなさい。でも、やらなきゃいけない事だったんです」
抱擁を解き心配してくれるニアさんに申し訳ないと思いながら私は返事をするとニアさんは溜息を一つ吐き、口を開く。
「その辺も新聞に載っていたから知っているわ。それで?助けた勇者とその仲間は何処に居るの?」
私が狗神君達の事を話す前に新聞を読んで知ったと言ったニアさんは彼等の居場所について聞いてくる。
「今はお店の前で待っていて貰っています。まずは説明が必要だと思ったので・・・」
新聞に関してはどの様な内容に為っているか分からないが彼等に関して先に説明が必要だと思った私は彼等には店の外で待っていて貰っている。その事を伝えるとニアさんはいつもの笑顔で口を開く。
「まずはお茶でもしながら話を聞かせて頂戴、まぁ、大体クラシア王国が悪いんじゃないかと思うけど・・・その髪の事も含めてじっくり聞かせて貰うわ」
大体の事は察してくれているニアさんの言葉に頷き私は外にいる狗神君達を中に招き此処までの経緯をニアさんに話した。
次回もまだ、星詠み亭でのお話です。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




