リコリス商会・2
おはようございます。第79話投稿させて頂きます。
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今回はコハクの視点です。楽しんで頂けたら幸いです。
「ふざけんじゃねぇ‼この糞貴族‼次にてめぇの姿見たらミンチにしてやる‼二度と来るな‼」
その声を聞き私は溜息を吐きながら玄関で片足を上げたまま頭のてっぺんからしっぽの先までの毛を逆立てている女性を見る。
ユユに似た、燃える様な赤毛にピョコピョコと動く獣耳とフサフサの尻尾、勝気そうな少し吊り上がった黄色の瞳が特徴的な彼女の名前はヴァネッサ、種族は獣人族(狼種)この街の店舗を任せている人の一人だ。
「く、くそ!この獣人め‼客にこんな事してタダで済むと思うな‼パパに言いつけてこんな店潰してやる‼」
そんな事を考えている内に玄関から蹴り飛ばされたであろう身なりの良い恰好をした小太りの男がぎゃあぎゃあと喚き立てる。
てか、見た感じ私やヴァネッサより年上みたいなのにいい歳してパパって・・・
「うっせ‼とっとと失せろって言っているだろうが‼この糞貴族が‼」
そんな言葉と共にメキメキと言う音が聞こえて来てバキッという音がしたかと思うと店の扉がもげ、ヴァネッサがもいだ扉を上に掲げだす。その光景を見た男の顔が蒼白になる。
あぁ・・・また修理費がかかる・・・
「ひぃぃぃぃぃぃ」っと情けない悲鳴を上げながら走って逃げていく男の後をブンっと風を切って扉が飛んで行き見事に命中する店内からは他の貴族も含めて歓声が上がる。
リコリス商会アルテクト店名物空飛ぶ扉・・・修理発注しないと・・・はぁ・・・
「あっ・・・」
扉を投げたままの体勢のヴァネッサと目が合いヴァネッサが小さく声を上げる。
お互いに視線を合わせたまま数十秒が経過する狗神君達はお客さんに対しての対応に唖然としている。まぁ、普通は考えられないよね・・・
「やぁ、ヴァネッサ、ただいま」
思考を切り替えて片手を挙げ笑顔でヴァネッサに挨拶すると彼女は気まずそうに姿勢を正す。
「あ~・・・・お帰り、会頭・・・・」
返事を返している間ずっと彼女の耳は垂れて尻尾はクルリと巻いていた。
おいおい、私は別に怒って無いよ?
そんなヴァネッサとまだ唖然としている三人を連れ私達は店の奥の居住スペースのリビングに移動する。実はこの建物住居付きなんだよね・・・
ついでに扉は応急処置しました。
「さて、じゃあ、今からの予定を話そうか?」
お茶とお菓子を持って来てくれたヴァネッサにお礼を言い。もう一つ用事を頼んでからようやくポカーン顔から回復した三人に声を掛ける。
「今からの予定ってフルニカ王国に行ってそこで試験を受けて合格したら黄昏の国に行くんだよね?」
リルがお茶に口を付けながら森の中で話した大雑把な予定を口にする。
「うん、リル正解。ここではもう少し詳しく話しておこうと思ってね。まぁ、森の中で話した内容とそんなに変わらないけどね」
私もお茶を口に含み言葉を続ける。
「まず、今日を除いて2日間はこの国でゆっくり休んでからフルニカに向かう。その後でリルが言っていた試験を行うよ。試験の内容は洞窟ダンジョンの攻略、期間は2週間。それに合格したらフルニカで2日間休んで黄昏の国に戻り、他の勇者達と合流、合同訓練をするよ」
「四日間もお休みしちゃって良いの?あまり時間がなさそうなのに・・・」
2日間ずつ休みを挿むと聞いてリルが不安そうな顔で聞いてくる。
まぁ、確かに一から十まで教えている暇がないって言ったから不安にもなるよね。
「その辺は心配しなくて大丈夫だよ。休む時間が取れるように予定を組んであるからね。まぁ、一日早くクリアーしたのは少し予想外だったけどね」
リルはほっとした様な顔をする。その後にマカさんが控えめに手を上げて発言をする。
「あの~、私達、黄昏の国に行く途中でフルニカ王国の洞窟ダンジョンはクリアーしてしまっているんですけど・・・」
彼女の言いづらそうな言葉に私はニッコリと笑って答える。
「大丈夫、今回、皆に攻略して貰うのはダンジョンの『裏』だから」
「「「裏?」」」
私の言葉に三人仲良く首を傾げる。
そんな三人の仕草に私は苦笑を浮かべながらダンジョンの裏について説明を始める。
「そ、『裏』のダンジョン。要するに隠しダンジョンだね。君達がクリアーした『表』のダンジョンと違って魔物の強さも上がっているけど今回行く所は『表』をクリアーしていれば万が一でも死ぬ事は無いと思うよ・・・多分」
多分の部分は小声で言うとマカさんは続けて質問をして来る。
「それでそのダンジョンの『裏』と言う所で何をするんですか?」
「そのダンジョンでボスを倒してある素材を持って来てくれたら試験クリアーって流れだよ。ダンジョンの構造自体は『表』と変わらないから道に迷う事もないしね」
「会頭、風呂が沸いたよ」
「あるじ~、ただいま~」
そこまで話した所でそう言いながらヴァネッサがリビングに入って来る。
ネージュもご機嫌で戻って来た。
「ありがとう。ヴァネッサ。おかえりなさい。ネージュ」
ヴァネッサにお礼を言いながら駆け寄ってきたネージュの頭を撫でる。
「さぁ、ヴァネッサがお風呂を入れてくれたから入ってきなよ。まずはリルとマカさんから行ってきなよ、ヴァネッサ案内してあげてくれる?」
「了解、そっちの子は良いのかい?」
ヴァネッサが狗神君お方を見て不思議そうな顔をする。
「あぁ、彼は男の子だよ。前に話したでしょ?勇者の子だよ。今は変装して貰っているけどね」
「ああ、なるほど・・・似合ってるな・・・」
ヴァネッサは一瞬目を見開いた後リルとマカさんを連れてお風呂場に向かった。
「・・・似合っているって、良かったね・・・?」
三人が居なくなった後、机に突っ伏してしまった彼に私は苦笑いしながら声を掛ける。
「全然嬉しくない・・・俺は何時までこの格好をしていれば良いんだ?」
机から顔を上げすごくぐったりした感じで聞いてくる。
「残念だけど最低でもフルニカに着くまでは今の格好のままだね。この国はクラシアに近いから街を歩くときはその恰好で歩いてもらった方が良いんだよ。この店の居住スペースの中でなら普通の格好で過ごしてもらって大丈夫だよ」
「マジか・・・そう言えばヴァネッサさんだっけ?俺が勇者だって話しちゃって良かったのか?あと、貴族にあんな態度取ってこの店大丈夫なのか?」
私があっさりと彼を勇者だと話した事に疑問を感じたのか落ち込みを置いといて聞いてくる。あと、お店の心配をもしてくれた。
「うん、どっちも大丈夫だよ。この店で私が雇った人達は私の事情や勇者の事も全部教えて有るし、お店に関しては貴族が手を出せない後ろ盾が有るからね」
「そうなのか・・・それで後ろ盾って誰なんだ?」
「それは知らない方が身のためだよ」
まぁ、別に妖しい者でもなんでもなくこの国の王族なんだけどね・・・彼らとも同盟を結んでいるから迂闊に此方に手を出せないってだけだし・・・
狗神君とそんな話をし、交代でお風呂に入りその後はゆっくりと体を休める事にした。
次ぐらいでレイデアを出られたら良いなぁっと思っています。
ごゆるりとお待ち頂けたら幸いです。




