堂々と入国しました
おはようございます。第76話投稿させて頂きます。
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「よし‼怪しい人間も勇者もいないな、通って良いぞ。レイデア王国にようこそ」
私達より少し先の方でそんな声が聞こえて来て商人の物と思われる馬車と護衛の冒険者がもんを通って行く。
彼らを見ながら順番待ちをしていると後ろから小声で不安そうに声を掛けられる。
「なぁ、コハク・・・俺、変じゃないか・・・?」
後ろを向くと茶髪の髪を目の辺りまで伸ばした背の高い女の子が藍色の毛並みの兎を抱きながら立っている。
うん、身長が少し高いけど冒険者の女の人には結構長身の人も多いしモジモジと兎を抱いている所なんか一部の男性に人気が出そうだね。
そんな事を思いながら私は彼女・・・彼に向かって小声で返事をする。
「大丈夫、変じゃないよ。十分可愛いからバレないよ。あと、ここから先はコハクじゃなくてコユキね」
「そうですよ。ワコさん。とても似合っています」
「素敵ですよ。ワコ様」
不安そうにしている狗神君に同じく変装して服装と髪の色や目の色を変えたリル達も小声で大丈夫だと言って励ましている。
まぁ、彼には非常に申し訳ないと思っているよ・・・最後まで嫌がっていたからね。
「次‼」
そんな事を話していると私達の番が周って来たので全員で砦の門の方に進む。
「こんにちは、冒険者4名です。入国審査をお願いします」
砦に入り兵士に笑顔で声を掛けると検問所の兵士が私達の顔を確認する。
「女性冒険者が四名か持ち物を全て出してください。怪しい人物や勇者は居ないな」
そう言いながら兵士はドックタグを確認して訝しげな顔をする。
「《真珠》級の冒険者が三人に《エメラルド》級が一人とはずいぶん力量差の有るパーティだな」
(もしかすると何かを隠しているのか?)
兵士の不愛想な態度と言葉と心の声に私は内心苦笑しながら口を開く。
全く派手に暴れたとはいえ相当警戒されているな・・・
「パーティと言うかたまたま冒険者登録をした所がフルニカ王国で同じだったんで一緒にフルニカまで戻ろうって話になったんですよ。嘘だと思うなら確認して貰ってかまいませんよ」
冒険者のドッグタグにはそれぞれの国特有の紋章が隠れて刻まれている。ある魔道具の光を当てると嵌っている宝石からその紋章が浮かび上がって何処の国で登録したかやランクアップしたかが分かるようになっている。
ドッグタグが偽造出来ないのもこのギミックの所為だ
私の言葉に兵士は机の下から魔道具を取り出し4つのドッグタグにその魔道具から出る光を当てる。
するとドッグタグに嵌っている宝石からフルニカ王国の冒険者ギルド紋章である月に星の紋章浮かび上がる。
私は全部のランクアップをフルニカで行っているので宝石から浮かぶ紋章は全て同じだ。
「9つ全てフルニカの紋に《エメラルド》クラス・・・ひょっとしてあんた銀姫か?」
私のドッグタグを確認した兵士が驚いたように声を上げる。
おいおいおい、今頃気付いたのかい?名前も彫ってあるでしょう?てか、銀姫って呼ぶなし・・・実は二つ名そんなに好きじゃないんだよね・・・姫とかなんか背中がぞわぞわする。
「その呼ばれ方は不本意ですけどそれです」
あくまで笑顔を崩さずにそう返事をすると先程とは違う態度でなぜか嬉しそうに返事が返って来る。
「そうか!アンタが銀姫か‼聞いていたのとは髪の長さが違ったから気付かなかったぜ!」
私は頭に疑問符を浮かべながら耳を傾ける。はて?私はこの人とは初対面だし、何かしただろうか?
「あー、すまない一人で盛り上がってしまった。実は俺の甥っ子が冒険者でな、二年前に討伐の依頼を受けた先で死にかけた所を銀髪の女の子に助けて貰ったって聞いてな。名前は知らなかったらしいが二つ名とランクアップの更新をフルニカでしか行わないって事を他の冒険者から聞いていたらしくて俺もそれを甥っ子から聞いてたんでピンと来たんだ」
あぁ~、そう言えば私ってこっちの方だとコユキより二つ名の方が有名だったりするんだよね・・・
そんな世間話をしていると私達の荷物検査も終わったのか兵士がドッグタグを返してくる。
「怪しい物も無いし、あんたなら大丈夫だろう。クラシアで起きた魔王の襲撃で厳重体勢を取っているが、そもそも魔王や裏切った勇者が堂々と国境を越えるわけも無いもんな。レイデア王国にようこそ。フルニカまでまだあるが道中気を付けてな」
「あ~、なるほど、それでいつもやらない荷物検査なんかもやっていたんですね。確かに私が魔王や勇者だったらひっそりと密入国を考えますね。ありがとうございます。それではまた」
後半やけにフレンドリーな兵士からドッグタグと荷物を受け取り皆で門を潜り私達は無事にレイデア王国に入国した。
「堂々と入国してますよね・・・」
「考えたら負けですよ。マキさん・・・」
「俺は何時までこの格好なんだ・・・」
門を潜り、とりあえず国境近くの街に向かう途中リルとマカさんは人そんな会話をしている。
因みに狗神君は取り合えずフルニカに着くまでは外では基本その恰好です。
兎に角、次は首都行の馬車に乗らないとなぁ~
私達は各々で話したり落ち込んだり考え事をしながら街までの道を歩いた。




