その質問は命を削ると思え‼
おはようございます。第70話投稿させて頂きます。
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・・・あれ~?勇者君の反応が無くなっちゃった・・・?なんで?
勇者君の目の前に手をひらひらと揺らしていると不意に勇者君が動き出す。
あ、良かった。生きてた。
「お、女の子だったの?」
「あ、はい。生物学的にも女です」
勇者君の言葉に間の抜けた返事を返しながら私は内心ガッツポーズ取っていた。
よしよし、無事に性別を隠すのにも成功しているみたいだね。
さて、じゃあそろそろ着替えるか・・・傷の手当てもしたいし
「取り合えず、私は向こうで着替えて来るよ。悪いけど少し待って居てくれるかい?」
「あ、うん」
まだ、なんか信じられないものを見る目の勇者君を置いて私は近くの背の高い茂みに入る・・・くそ‼一瞬で勇者君が見えなくなった‼自分の背の低さが恨めしい・・・
ため息を一つ吐き私はコートとズボンを脱ぎ冒険者の時に使っているネーヴェさんの素材から作ってもらった薄い青色の羽織と同色の上着とスカートの服装になる。
コートとズボンの下に身に着けても全く違和感ないって便利だけど本当にどうなっているのかわからなくて怖い・・・
そんな事を思いながら羽織と上着を脱ぎアイテムボックスから包帯と薬を取り出し、肩と左手の傷の手当てを行う。案の定、左手は傷が開き血塗れだった。
それにしても、あの金髪金眼の女性の投げて来たナイフには腑に落ちない事がたくさんある。
ナイフには返しが付いていてちょっとやそっとじゃ抜けない構造になっていた。何よりたかが《ノーマル》クラスの武器に私の装備が抜かれるなんてありえない事だった。
不思議に思い。眼でも確認を行ったが結果はますます疑問を深めるだけだった。
アイテムボックスから新しい上着を取り出しながら件のナイフのステータスを思い出す。
☆
名称:縺却∴剣アム隕シ九
刀匠:不明
スキル:無し
特性:慕ュ峨↓
クラス:ノーマル
☆
不気味な事に名前も特性も意味の無い文字列が並べられているだけのナイフは現状の私ではどうする事も出来なかったので回収し、他の魔王や鍛冶師の意見も聞きながら調べる事にしよう。
傷の手当てを終えサラシを少し緩めてから上着を着て羽織をはおる。戦闘時の服装は胸を抑えて着るのを想定して作ってもらった物だから変に胸元が余る事もないしね。服と同色の指ぬきの手袋をし、ブーツを履き替えていると丁度リル達を探しに行ってもらったネージュが返って来た。
最高のタイミングだね。勇者君に話して彼女達と合流しよう。
「勇者君、移動してリル達と合流しよう」
ネージュを肩に乗せ、オカミノカミをアイテムボックスに入れてから茂みを出て勇者君に声を掛け移動を開始する。少し歩くと勇者君は思い出したように口を開く。
「あ、そうだ。魔王、幾つか質問良いかな?」
「何だい?」
「俺に渡してくれたのは魔王の髪だったんだよな?あの箱に入っていたのは黒色の髪だったんだけど魔王は銀髪だよな?なんで色が違うんだ?」
「あぁ、身バレに繋がると判断してメイド長が黒く染めたんだろうね。流石に私も年がら年中襲撃されたくないしね」
勇者君は何となく納得の表情をして私の腰に下げているカグツチを指差す。
「身バレが嫌なら剣をそのまま使っていていいのか?」
「あぁ、そう言えば忘れてた・・・」
私はそう言いながら腰からカグツチを外し、パチンと指を叩きカグツチに掛けていた幻影魔法を解く。カグツチが本来の姿に戻るのを確認し、腰の剣帯に戻す。
コユキとして活動している時に素のままのカグツチを使っていたせいで魔王として使っている時には常に幻影魔法を使う羽目になってしまった・・・
「べ、便利だな・・・魔法・・・」
「君もすぐこれぐらい出来るようになるよ」
勇者君は驚いた様な顔でポツリと漏らすので光属性を使う彼ならこれぐらいの事は出来る様になると断言する。
「そっか、頑張るよ。じゃあ、次の質問。最弱の魔王って言っていたけどどういう事?」
「言葉の通りだよ。私は魔王の中では最弱と言っても過言じゃない実力しかないんだよ。現に暁や白夜の魔王、お・・・憤怒の魔王にも模擬戦で勝った事は無いからね」
成程と言い彼は少し躊躇しながら私の全体を見て最後の質問をして来た。
「じゃあ、最後の質問良い?」
「どうぞ」
「黒いコートの時より身長と・・・」
「その質問をそれ以上続けるなら殺す」
「ご、ごめん」
彼の質問に笑顔で答えながら脅す。こやつ、触れてはならない事に触れよった。理不尽?知らんがな‼
ええ、ええ、確かに私の身長は魔王の時の服装より5㎝は縮んでいますよ‼あのブーツは厚底ですよ‼155㎝しかありませんよ‼小さくて悪かったな‼
笑顔は崩さずに不機嫌になった私に気まずくなったのかその後は特に話すことも無く歩くと転移魔方陣を設置した少し開けた場所に出る。
リル達は場所を移動しなかったみたいだね。
「コ~ハ~ク~ちゃ~ん、ワ~ト~さ~ん」
二人に近づいて行くとリルが私達に気が付き嬉しそうに大きく手を振りながら私達の名前を呼ぶ。
私と勇者君はその光景に思わず顔を見合わせながら笑いリルの許に向かった。
「コハクちゃん、和登さん。無事でよかったです」
「リル達も無事に合流できて良かったよ」
リルがそう言いながら駆けて来て私に抱きつく。
私より6㎝ほど高いリルを私も抱きしめ返すとリルが不思議そうな顔で私を見る。
「・・・?あれ?コハクちゃん・・・背が・・・?」
「リル、それ以上言ったら人の目に晒せないぐらい擽るよ?」
リルが言ってはいけない一言を言う前に釘を刺す。
後方から勇者君が「え⁉俺の時より刑が軽くない⁉」っと言っているけどポッと出の勇者と大切な友達とでは制裁が変わるのは当然だろう。
例え私のコンプレックスに触れようと同じにしてはいけない。
え?差別だって?違う違う、区別です。
寝てなければ身長は伸びませんよね~(笑)
コハクは魔王業務で徹夜しまくりなので身長は高くありません。地味にコンプレックスです。
次回もごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。




