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勇者救出・3

おはようございます。第67話投稿させて頂きます。

評価ポイント・ブックマークありがとうございます。とても励みになります。

また、誤字脱字報告もありがとうございます。

最初は和登視点で☆以降はコハクの視点になります

今回2話投稿を予定してます。

楽しんで頂けたら幸いです。

「数はこっちが有利だ‼回り込め‼」

「囲め‼逃げ道を与えるな‼」

「クソ‼ちょこまかと動きやがって‼」

「増援を呼べ‼」

「ひ、ひぃ、こ、こっちに来るなぁ‼」


 そんな怒声の飛ぶ中をザシュっという音と共に空中に彼岸花の様な赤い花が咲く。

 その中心には黒コートの小柄な影が多数の男達に囲まれながら一滴の返り血を浴びることなく舞うように剣を振るっている。周りには既に息の無い者達が多数倒れており、時間と共にその数は増え続けている。

 俺の元パーティであったグリュック達は最初に彼に飛び掛かり最早物言わぬ死者に為っていた。

 テキラも知らない内に動かなくなった。寧ろ一撃で死ねなかった分だけ苦しんだであろう。

 そんな屍累々の場所であの時に俺達はどれだけ手加減されていたのかを思いながら未だ舞うように戦う彼の姿を俺は見続けた。


 ☆


「殺せぇ‼」


 その声を最後に私に向け剣を振り上げた男の首が宙を舞う。

 本当に自分の甘さにイライラする。

 時間を掛け聖女さんを説得し彼を助けるために潜り抜けた回廊の先で目にしたのはボロボロに痛みつけられ今にも殺されそうになっている彼の姿だった。

 なぜ、私はこの国の人間の特性を知っていたのに処刑の時間までは大丈夫と思っていたのだろうか?彼等の特性を考えれば処刑前に痛みつける事なんて想像に難くないのに・・・

 実際、彼が粘って時間を稼がなければ私は間に合って居なかっただろう。何が彼をサポートするだ。出来なかった故に彼に負わなくても良い傷を負わせてしまった。

 この予想の甘さを直さなければ厄災共との戦いを()()()の犠牲で切り抜ける事なんて夢のまた夢だ。

 今回の彼の傷は決してクラシア王国の所為ではないこれらを予測できなかった私の所為だ。

 だからこれは八つ当たりだ。対象はクラシア王国の兵と彼の元パーティメンバー、向かってくる人間は問答無用で切り捨てる。

 中途半端に生かすなんて事はしない。半端に攻撃し相手が生き残れば今度はこちらの身が危なくなる。

 相手だってこちらを殺しに来ているのだ殺されても文句は言えない。


「死ねぇ‼」


 目の前の兵士を左手に握るカグツチで逆袈裟切りにしその勢いに乗せ後ろから切りかかろうとする兵を右手に持つオカミノカミで切り伏せる。


「ち、ちくしょ・・・・」

(フ、フミ・・・)

「エルガーーー‼‼‼‼」

(こんなところで死ぬな‼フミちゃんを置いていくつもりか‼)


 後ろにいた兵士を切った瞬間、嬉しそうに笑う少女の顔が浮かび上がり周囲を見回すふりをして頭を振りその残像を消す。

 切った相手の思念やその友人と思われる人間の思いが見えるが今は気にするな‼

 自分で決めた勝利条件を揺るがすな‼

 見えて来る相手の最後の思いに一瞬怯みそうになるが自分を叱責し体を動かす。


「魔法部隊準備が完了しました‼」

「よし‼取り囲んで魔法の一斉射で嬲り殺せ‼」


 その言葉を合図に囲んでいる兵達が私から一斉に離れる。それと同時に様々な色の攻撃魔法が私に向かって放たれた。

 相手を囲んで魔術師を守り、準備が整った瞬間に一斉射。

 へぇ、こういう連携はうまいね。よく訓練されているよ。

 普通の魔族だったら全部食らって致命傷かもしれないね。


「《オクタ・グラビティオペレイト》」

『なっ⁉』


 私に向かって放たれた魔法はすべて急激に変化した重力により全て下に落下する。その様子を見た兵達や魔術師達は驚愕の声を上げる。


「ひ、怯むなぁ‼混合魔法で一気に殺せぇ‼」


 折角、私を囲んでいたのに騎士達は完全に先程の魔法が全て落された事に未だに動けないでいる。そんな事は気にせずに魔術師達は呪文を詠唱し始める。まぁ、私も彼等が動かないのであればその方がありがたい。迎え撃つのに周りに群がられると些か邪魔だ。


『混合魔法‼《デカ・メテオストライク》‼』

「ハハハハハハ、我らが最強の魔法で吹き飛べーーーーー‼‼‼」


 広場全体に巨大な隕石の様な岩の塊が炎を纏っていくつも降って来る。恐らく火と土の混合魔法だろう。

 この数と質量・・・このおじさん達、実はクラシア滅ぼそうと考えてない?普通に国一つ消し飛ぶぞ?

 まぁ、私には関係ないけどね。

 それにしてもたかが混合魔法如きが最強とか舐めているのかな?そんなの二人以上でやったって時間も掛かれば燃費も悪いだけじゃない?そんなのイリアでは実戦で使用できるレベルじゃないって言われている魔法だよ。混合魔法を使うなら二属性以上の人間が使った方が遥かに制度も威力も上っていう研究結果が八年前の時点で出ていたよ?

 まぁ、結局私には関係ないけど

 さて、とりあえずこの邪魔な魔法を消すか・・・あれ、怖いから私的には使いたくないんだよなぁ・・・でも、被害最小限で消せるのはあれしかないんだよなぁ・・・使うか・・・


「《デカ・アビスホール》」


 私が一言その魔法の名を唱えると辺りに一瞬、静寂が訪れる。


『譁?』


 不意に静寂の中に響き渡る異音・・・その正体を知っている私は内心でげんなりしていると広場の中央に巨大な漆黒の暗闇が出現する。

 暗闇はどんどん広がっていき異音はそこから響いてくる。

 女性の声の様なその音はまるで世界を呪うかのような音を響かせるその音に呼応する様に暗闇から無数の巨大な骨の手が飛び出し《メテオストライク》や無数に転がる死体を掴み喰らっていく。


『譁?ュ励さ繝シ繝峨?逶ク驕慕ュ峨↓繧医j諢丞峙縺励↑縺?。ィ遉コ縺ィ縺ェ繧九%縺ィ縲√≠繧九>縺ッ縺昴?繧医≧縺ォ隕九∴繧狗憾諷九r謖?☆縲 概』


 女性の悲鳴のような異音は《メテオストライク》や死体を喰らっている間も止むことなく鳴り響く。

 怖いって‼だから使いたくないんだよ。この魔法‼本当に師匠はセンスが悪い‼大体この魔法って私にとって嫌な思いでしかないんだよね‼

 自分で出した魔法に自分で文句を言いながら私は魔術師達の方に向かう。皆、《アビスホール》に視線が釘付けに為っている。

 まぁ、気持ちは分かる。


『縺ッ縺昴?繧医≧縺ォ隕九∴繧狗憾諷九r謖?☆縲 概繝峨?逶ク驕慕ュ峨↓繧医j諢丞峙縺励↑縺?。ィ遉コ縺阿亜唖唖吾嗚呼唖嗚呼アァ唖ア嗚唖亞ア‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼』


 降って来る全ての《メテオストライク》と死体を喰らい尽くし《アビスホール》は一際大きな異音を発しながら小さく、小さく縮小して行き唐突に大量の血を空中に吹き出し消滅した。

 うん‼この魔法、絶対に二度と使わない。


「嘘だ・・・我々の最高の魔法が・・・・」


 呆然といているさっきまで色々叫んでいたおじさんの前に立つ。


「なっ⁉貴様いつの間に⁉」


 恐らく魔術師隊の隊長であろうおじさんは私の姿に我に返ると攻撃魔法を放とうとする。


「遅い」


 その一言と共にカグツチを振るい首を刎ねる。

 隊長を殺された事と《アビスホール》が決め手に為ったのか周囲の人間が戦意を喪失していく。

 やれやれ、やっと脱出できそうかな?いい加減、左手の傷が痛みだしてきつい。

 そう思いながらゆっくりと広場の方を向くと私と勇者君の間に人影が立ち塞がる。

 まぁ、妥当な判断だよね。相手が疲れて来た時に最大戦力を投入するのは・・・

 そんな事を思いながら左手の傷の痛みを無視して私は目の前に立ち塞がる4人の勇者と話をする準備をする。


「やぁ、こんにちは」


 剣を下げとりあえず彼等に声を掛ける。

 私の言葉に四人は警戒の色を濃くする。まぁ、当然だよね。沢山殺したし・・・この中に彼等が懇意にしていた人間もいただろう。

 今の自分の状態が彼等に与える嫌悪感を想像し内心苦笑しながら彼等のステータスを確認する。


 ☆



 種族:人間 名前:立川たちかわ けん 性別:男性 年齢:17 Lv.62 剣術Lv.60 魔法Lv.58 状態:健康 特記:闇の勇者 所属:クラシア王国


 種族:人間 名前:月濱つきはま 純也じゅんや 性別:男性 年齢:20 Lv.63 剣術Lv.66 魔法Lv.57 状態:健康 特記:火の勇者 所属:クラシア王国 


 種族:人間 名前:坂月さかづき みこと 性別:女性 年齢:18 Lv.63 剣術Lv.64 魔法Lv.60 状態:健康 特記:雷の勇者 所属:クラシア王国


 種族:人間 名前:神薙かんなぎ 賢治けんじ 性別:男性 年齢:22 Lv.68? 剣術Lv.67? 魔法Lv.69? 状態: 健康 特記:土の勇者 所属:クラシア王国



 ☆


 ふ~ん。やっぱり光の勇者君よりはレベルが高いか・・・要するに彼等がメインの戦力でやっぱり光の勇者君、暁の勇者君、白夜の勇者君、水の勇者さん、風の勇者さんは捨て駒だったか・・・

 それにしても、一人だけステータスに『?』が着いている・・・?何これ?ひょっとしてステータス偽造でも使っている?

 神薙という名の土の勇者のステータスをもっと詳しく覗こうとして見るが八年前のアライさんの様に詳しい内容は見えてこなかった。・・・おかしい


「なっ!何がこんにちわだ‼この人殺しが‼ファルガさん達が一体何をしたって言うんだ‼」


 私の挨拶がよっぽど気に障ったのか四人の中では小柄(それでも165㎝ぐらいある)で色白の闇の勇者の少年が私を指差し喚きたてる。

 彼等が何をしたって言うんだ?馬鹿なの?君の同郷の人間を冤罪で殺そうとしていたよね?何を吹き込まれたか知らないけど偽善も大概にしてほしいよ。


「はぁ、彼等が何をしたかなんて今、議論する事ではないよ。彼等は己の命を懸けて僕に挑んできた。だから僕は命を懸けそれに答えた。ただそれだけだよ。まぁ、此処に立っていた連中のほとんどがそんな覚悟一切なかったみたいだけどね」


 闇の勇者の言葉に私は唯々淡々と答える。


「お前‼」

「ところで‼」


 闇の勇者がまだ何か言って来ようとするのを遮り今度は私から彼等に問いをぶつける。


「いい加減、僕達はこの胸糞悪い国から出たいのだけれど道を開けてくれるかな?」


 私は多少の挑発を籠めて彼等に問いかける。要するに今なら見逃してやると


「わりぃけどそうはいかないぜ、俺達もこの国の姫様に助けてくれって頼まれてるんでね。何者か知らねぇけどあんたとあそこに倒れている同郷の恥さらしを逃がすわけにはいかねぇんだよ」


 口を開こうとする闇の勇者を押し退け四人の中で一際軟派そうな火の勇者が答えながら大剣を構える。

 心なしか某黒歴史の連中を彷彿とさせる。


「・・・」


 雷の勇者の女性は顔を顰め迷いながらその言葉に呼応する様に武器である薙刀を構える。

 へぇ・・・聖武器の一つって薙刀なんだ・・・


「すみませんが戦う前に一つだけ聞いておきたいことが有ります」


 今にも戦いを始めようとする私達に土の勇者が一人静かに私に問いかけて来る。首を傾げ動作だけで相手に先を促す。


「貴方は何者ですか?それだけでも答えてください」


 彼の問いかけにそう言えば何者かを言い忘れていたなと間抜けな思考が頭をよぎる。

 だから私は仮面の下で苦笑しながら彼の質問に答える事にした。

 まぁ、名前は言えないからいつもの口上だけどね。


「あぁ、すまないね。すっかり忘れていた。一度しか言わないからしっかり憶えておいてくれるかい?」


 それだけ言うと一つ深呼吸をする。


「初めまして、僕は今代の黄昏の魔王を継承した者です。名前は言うだけ無駄なので言いません」


 私のその失礼極まりない挨拶を聞くと土の勇者の彼は本当に誰にも分らない程度に密かに動揺していた。


戦闘シーンは難しいですね。

2話目投稿できるように頑張りますのでごゆるりとお待ちいただけたら幸いです。

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